ハッピークローバー

「案外騙し討ちもね」
「しないの」
「それで寛容で優しい人だったみたいよ」
「すぐかっとして手討ちってイメージあるけれど」
「余程じゃないとね」
「そうしたことしなかったの」
「鳴かぬなら殺してしまえじゃなくて」
　よく言われている様な考えの持ち主ではなかったというのだ。
「どっちかっていうと鳴かせてやろう」
「そんな人だったのね」
「みたいよ」
「イメージと全然違うわね」
「こうしたことって人ではよくあるでしょ」
　織田信長に限らずというのだ。
「新選組だって恰好いいイメージあるけれど」
「私沖田総司さん好きなのよね」　
　一華は新選組と聞いて彼の名を出した。
「美形だったっていうし」
「実は沖田さんも美形かどうかわからないみたいよ」
「そうなの」
「それで裏切り裏切られでね」
　新選組の実態はというのだ。
「騙し討ちはしょっちゅうで」
「伊東さんのあれとか？」
「ヤクザ映画みたいな風だったみたいよ」
「ヤクザねえ」
「どうもね」
「あっ、近いかも」
　留奈はもなかを食べつつ頷いた。
「言われてみたら」
「新選組はヤクザ屋さんなの」
「しょっちゅう中で殺し合いやってるでしょ」
「そういえばそうね」
　一華は羊羹を食べつつ頷いた。
「かな恵も言うけれど」
「でしょ？内部抗争盛んで何かあったら出入りに暗殺って」
「ヤクザ映画みたいなのね」
「お酒に女の人も絡むし」
「それじゃあね」
「武士になりたくてなった人達だったけれど」
　それでもというのだ。
「結構ね」
「ヤクザ屋さんみたいね」
「切った張ったで」
　そうした世界でというのだ。
「そうなのね」
「そうよ、仁義なきって言うけれど」
「裏切り裏切られだと」
「本当にね」
　それこそとだ、かな恵は答えた。
「ヤクザ屋さんみたいにね」
「仁義もなかったのね」
「だからね」
　それでというのだ。
「新選組は武士であっても」
「それで今で言うと武装警察よね」
「けれどね」
「ヤクザ屋さんでもあったのね」
「その一面があったのよ」
　実際にというのだ。
「これがね」
「そうなのね」
「そう、だからね」
　それでというのだ。
「ドラマとか小説とかのね」
「恰好いいイメージは」
「もうね」　
　それこそというのだ。
「実際とはね」
「また違うのね」
「織田信長さんもそうでね」
　それでというのだ。