恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS
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第百二十二話 闇、近付くのことその一
第百二十二話 闇、近付くのこと
昼に寝て夜に起きてその日は終わりだ。そして朝に寝るのだった。
朝に天幕に入ってだ。曹操は左右に控える夏侯姉妹にこんなことを言った。
「どうも朝にいるとね」
「朝だと?」
「何かありますか?」
「貴女達が伽にいてもね」
それで控えている二人だった。
「何かこうやる気が出ないわね」
「睦ごとは夜にするものだからですか」
「それでなんですか」
「ええ。どうしてもね」
苦笑いと共にだ。曹操は言うのだった。
「朝は起きて御飯を食べるものだから」
「はい、どうしてもですね」
「それは」
「そしてお昼には麗羽をからかうものだから」
というよりかは一緒に遊ぶか彼女の暴走を止めているのだが自分ではこう言うのだった。しかしそれでもだった。あえてこう言うのだった。
その曹操はだ。二人にさらに言うのだった。
「仕方ないわね。今はね」
「寝ますか」
「今夜に備えて」
「そうしましょう。それで今夜ね」
まさにだ。その夜にだった。
「昨日は来なかったからね。絶対にそうなるわね」
「いよいよですか」
「その時にこそですね」
「そうよ。決戦よ」
褥の中でだ。曹操の目が鋭いものになる。
「あの連中ともこれで終わらせるわ。それとね」
「それと?」
「それと、といいますと」
「いい加減麗羽の暴走も何とかしないとね」
「麗羽様はあれでいいのでは?」
夏侯惇はこう考えられる立場だった。実際にこう言ったのである。
「ああした方だからこそ我々も楽しいのです」
「いや姉者、それは違うぞ」
すぐにだ。妹が姉に突っ込みを入れてきた。
「姉者はそれでいいが私はどうなるのだ」
「秋蘭、何か不満なのか?」
「麗羽様や姉者を止めるのは私だぞ」
困った顔でだ。妹は姉に話す。
「幼い頃から。本当に」
「そんなに嫌か」
「嫌ではない」
夏侯淵はそれは否定するのだった。
そしてだ。こうも言う彼女だった。
「それが姉者のよいところだし麗羽様もな」
「でしゃばらず前に出ない麗羽なんて想像できないけれどね」
曹操もそれは言う。
「けれどね。あの娘はもう国家の柱の一つでもあるから」
「はい、華琳様と並んで」
「この国の宰相ですから」
「それでああして。いつも前に出たがるのはね」
いい加減どうにかして欲しいというのだ。袁紹のそうした性格はだ。
「董卓と揉めた時も何かっていうと前線に出たがったし」
「全く。盟主だったというのに」
夏侯淵も困った顔で述べる。
「ああして何かというと前線に出られて戦われるのは」
「困ったものだったわ」
「だからそれがいいのではないか」
夏侯惇は今だに全くわかっていなかった。それでこう言うのだった。
「人の上に立つ者は常に率先垂範してだな。矢面に立ってだ」
「じゃあ私が死んだらそれでいいの?」
「いい筈がありません」
曹操が言うと間髪入れずにだった。夏侯惇は言った。
「その様なこと私が許しません」
「そうでしょ。つまりはね」
「姉者、つまり麗羽様もお一人ではないということだ」
「一人ではないか」
「そうだ。あの方も慕う多くの者がいるのだ」
こう話すのである。二人も天幕の褥の中にいる。そうして曹操の横にはべっているのだ。
そのうえでだ。妹は姉に話すのだった。
「迂闊なことはしてはならないのだ」
「ううむ、私は前線に出るのが常だが」
「姉者はそれでいいのだ」
夏侯惇はだというのだ。
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