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恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS

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第百二十一話 張勲、昼に寝るのことその九

「そう考えると多いよな」
「台湾人って独特の感じがあるって言われるんだよね」
 王は鍋の麺を食べながら話す。鍋には麺の他に野菜もある。そうしたものも食べている。
「おおらかっていうか穏やかっていうか」
「チンのおっさんはそれ以上にがめついって印象があるけれどな」
 ホアは彼についてはこう言う。
「っていうかどれだけ金に汚いんだよ」
「しかも服とか趣味悪いしな」
 ビッグベアはチンの趣味についてだった。
「きんきらきんでな」
「あれで人間として性格まで悪かったら最悪だったな」
「人間的には悪くないからな」
「そうですよね。それは」
 少なくとも悪人ではないのがチンなのだ。
「食いまくるし居眠りばかりでもな」
「露骨な悪事はしませんからね」
「だからまだ救いがあるんだよ」
 それをビッグベアも言う。
「まあ確かに碌でもない御仁だけれどな」
「随分言ってくれるでしゅね」
 噂をすれば何とやらだった。本人が来た。
 そうしてだ。こう三人に言うのだった。
「私はただお金儲けが趣味なだけでしゅよ」
「それで黒社会ともつながるのかよ」
 ホアはこのことを問うた。
「それはまずいだろ」
「黒社会は黒社会でもとんでもない奴等とは一緒でないでしゅよ」
 台湾の黒社会も程度があるというのだ。
「外道とは付き合わないでしゅよ」
「前の山崎みたいなのとはか」
「付き合ってないんですね」
「当然でしゅ。私は外道は嫌いでしょ」
 そのことはホアと王にも断るのだった。
「人の道は踏み外したら駄目でしゅよ」
「俺もなあ。一回そうなりかけたからな」
「俺もだよ」
 ホアとビッグベアはここで自分を振り返った。
 そうしてだ。いささか悔やむ顔で言うのだった。
「丈の奴に負けてな。一時期ぐれてたからな」
「ヒールになっちまってたな。完全に」
「そういえばビッグベアさんは昔はライデンでしゅたね」
「今でも時々覆面は被るぜ」
 そうした意味でライデンになるというのだ。しかしだった。
「けれどそれでもな」
「人の道はでしゅね」
「ああ、正統派で生きることを心掛けてるさ」
「それはいいことでしゅ。清く正しく真面目に生きることが一番でしゅよ」
 チンがこう言うとだった。ホアとビッグベアはだ。
 むっとした顔になりだ。こう言うのだった。
「いや、あんたは清くも正しくもないからな」
「真面目でもないだろ」
「やくざ屋さんと仲良くするのは止めろよ」
「あと訳のわからねえ刑事とは」
「ああ、ホンフゥのことでしゅね」
 誰なのか即座にわかることだった。
「ホンフゥは確かに癖が強いですが真面目ないい刑事でしゅよ」
「真面目でも何か違うだろ」
「破天荒に過ぎるだろ」
 こう言う二人だった。そんな話をしながらだった。
 彼等は夜に酒なしで明るくやっていた。飲まなくてもそれでもだった。彼等は楽しくやっていた。そのうえで決戦の時を待っていたのだ。


第百二十一話   完


                       2011・11・6 
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