八条学園騒動記
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第六百六十話 自由な社会の条件その十二
「戴冠式は行うことは絶対でも」
「ボサカ一世の様な贅沢はですね」
「してはなりません」
絶対にというのだ。
「何があろうとも」
「そしてその戴冠式でもですね」
ベッキーが言ってきた。
「日本では即位の礼と言われますが」
「質素なものですね」
「予算も少ないそうですね」
「非常に」
「兎角質素なのですね」
「あの伝統による質素さは」
日本の皇室のそれはというのだ。
「私としてはです」
「信じられないですね」
「あの質素さは」
「はい」
まさにというのだ。
「想像を絶します」
「我がシヴァ家なぞ及びもつかない資産を持たれ」
「しかもその歴史は恐ろしいまでに長いです」
「伝統も素晴らしいです」
「代も非常に重ねていますし」
「皇室に名字はありません」
セーラはこのことも指摘した。
「左様ですね」
「はい、日本人にも名字があります」
「他の国の人達と同じく」
連合では名前はほぼ確実に姓名の二つからなる、ただ姓が前に来るアジア式と名が前に来る欧州式の二つの形がある。
「そうですが」
「日本の皇室にはないですね」
「あのお家だけには」
「それは何故かといいますと」
「日本人にはかつて姓はありませんでした」
「名だけでした」
「その頃からあるという証拠です」
皇室に姓がないことはというのだ。
「あのお家が」
「日本で姓が生まれたのは遥か昔でしたね」
ベッキーが言ってきた。
「確か」
「はい、もう飛鳥時代には存在していました」
「そのことが確認出来ますね」
「物部氏や蘇我氏というお家がありました」
「そうでしたね」
「それはもうです」
セーラはウイスキーを飲みながら話した。
「遥か昔です」
「今から見ますと」
「二千数百年も」
それだけというのだ。
「中国では隋も生まれていない」
「その頃からですね」
「少なくともその頃から日本の皇室が存在している」
「何よりの証ですね」
「はい」
まさにというのだ。
ページ上へ戻る