リュカ伝の外伝
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リュカ'sキッチン レシピその3「キョウカツ・トンカツ」
前書き
リュカ伝の世界では
1ゴールド=100円 です。
なので、20万ゴールドは2000万円です。
(グランバニア城・宰相執務室)
ユニSIDE
「ウルフ・アレフガルド宰相閣下。お忙しいところ大変申し訳ございませんが、リュケイロム国王陛下がメインキッチンにて閣下の事をお呼びでございます。至急、メインキッチンへとご足労をお願い申し上げます!」
あと一時間もしないでお昼休憩というタイミングで、突然宰相閣下がキッチンへと呼び出しがかかった。
城内の、それもキッチンとなれば私の管轄であり、何か問題があればまず先に私が呼び出され、状況に応じて上司である宰相閣下にお声がかかる……のだが、いきなり閣下へと私を飛び越えての呼び出し。
しかもリュカ様直々の呼び出しという事で、かなり大きなトラブルと思える。
呼び出しに来た兵士(しかも5人連れ)も、かなり真剣な面持ちで入室してきた。
凄く不安を感じるが、閣下と顔を合わせ無言で立ち上がり、私も同行する事に……
5人の兵士の内、一人が、
「え、ユニ殿も行かれるのですか!?」
と呟いた。
私は呼ばれてない……
と言う事は、リュカ様や宰相閣下……大臣レベルが解決するトラブルの様子。
私が赴いても何も解決に寄与できない……が、事態を知っておく必要はあるだろう。
兵士等の困った顔を無視して私は閣下の後に続いた。
諦めたのか私の事は無視して、キッチンまでの途次に居る方々から閣下を守る様に兵士等は先導する。
この根性悪をここまで丁重に扱う……
不安で吐き気をもよおしてきた。
だがこの程度で吐いてたら、この国で……この地位で仕事なんか出来ない。
下っ腹に力を入れ、覚悟を決めてキッチンへと入る。
そこには何故かメイドの姿も……
上級メイドのジョディーの姿もある。
そして……点呼をとって無いがコック全員。
更にはビアンカ様までいらっしゃり、何やら神妙な面持ちを……
そして勿論、リュカ様のお姿も……
「あれ、ユニも来ちゃったの?」
ユニSIDE END
(グランバニア城・メインキッチン)
ジョディーSIDE
凄く面白くなってきた……と思ったのだが、何を勘違いしたのか顔面蒼白のユニさんまでキッチンにやって来た。
迎えに行かせた兵士等が名演技だったのか、凄い勘違いをしているのだろう。
今すぐに状況を知らせてあげたいが、勿論そんな訳にもいかず、追々感づいてくれる事を願うのみ。
「ユニも居んのかぁ……まぁいいや」
そう言って陛下はキッチン内に特設したテーブル席へポンを座らせると、例の肉じゃがを器によそい提供する。白米と味噌汁・漬物も添えて。
「何すか、これ?」
「今日、新しい料理を作ったんだ。試食したい?」
目の前に置かれ試食の有無を問う。意味があるのかしら?
「そりゃ食べたいですけど、ユニさんの分は?」
「お前しか呼ぶつもり無かったから、ユニの分は今は無い」
いや、嘘である。陛下の後ろにある鍋には、まだ大量の肉じゃががある。
「まぁいいや。悪いねユニさん、俺だけ食べさせてもらうよ」
そう言ってユニさんに断ると、勢いよく肉じゃがを食べるポン。
添えられた白米・味噌汁・漬物も併せて食す。ユニさんは羨ましそうに眺めている。
「ど、どうかなぁ?」
「美味いっすねぇ!」
何故か自信なさげな陛下……確実に裏があるな(笑)
「おかわりもあるから、どうぞ」
「じゃ遠慮無く……? 『おかわり』? ユニさんの分は?」
ユニさんには一口も与えず、ポンにはどんどん食べさせる。警戒するよね。
「まぁそんな事より……実はお前の実力を提供してもらいたい件があるんだ」
「な、何すか……これってその為の接待だったんですか?」
肉じゃが等のおかわりを出し、程よい渋さの緑茶を提供した事で、今の状況を“接待”と考えるポン。ウケるぅ(笑)
「食べながらで良いから聞いてくれ」
「はぁ……」
「その料理……肉じゃがっていうんだが」
「その? この甘塩っぱい料理ですか?」
「うん。牛肉とジャガイモがメインの料理……だから肉じゃがって言うんだけど、偶然にもシェフの中にニック・ジャガーってのが居たんだ」
「リュカさん、過去形になってますよ(笑) そこに居るのがニック・ジャガーでしょ」
「あぁそうだね、すまんすまん。 んで話を戻すが、この肉じゃがをニック・ジャガーが売り出したら、面白くね? “ニック・ジャガーの肉じゃが”ダゼ! 面白いよね!?」
「ん? ま、まぁ~如何でしょう。笑いの感覚は人それぞれですし」
「で、ニックに肉じゃがを提供する店を出させたいのよ! “ニック・ジャガーの肉じゃが”ってね! なるべく費用は抑えたいんで、なんか良い物件知らない?」
「漠然と『良い物件』と言われましても、地方へ行けば無料みたいな価格で土地も建物も借りれますし……」
「ダメダメ。地方発じゃ肉じゃがの噂が広まるのに時間がかかる。それに賃貸はダメ……食材はその年の気候によって値が大きく変動するから、安定して家賃を払えない。王都内で、メインの通りに近く、それでいてお手頃価格な物件がいい!」
「なるほど、我が儘だな。う~ん……そうなると……一つ心当たりがあります」
「流石は天才宰相閣下!」
陛下が無邪気な笑みでポンを称える。ポンもそこはかとなく嬉しそうだ。
「え~とですね、その物件は中央地区にあるんですが、ほぼ城前地区との境界沿いにありまして、グランバニア城の北広場から港地区のグランバニア港までの大メイン通りから、1本裏に入った場所にありまして、以前は一階店舗の二階居住空間として道具屋を営んでいた物件です」
「ほうほう……それでおいくらかな?」
「そうですねぇ……不動産の現持ち主は良心的ですので、少しでも安くと言って交渉すれば、土地と建物で……16万~17万Gで譲ってもらえると思います」
「なるほど……城下で中央地区なのに、その価格はお手頃だねぇ」
確かに! 中央地区はグランバニア城下での商業の中心区。場所によっては一坪100万Gとも言われている。
「ですが、この価格はあくまでも不動産に対してのみの価格。飲食店を開店させるのであれば、一階店舗を改装しなくてはオープンできません。更に言えば、人一人・包丁一本で飲食店を切り盛りできるとは思えません。人件費・調理器具・食材などの初期費用を考えても、独り立ちするのには20万Gは必要でしょう。その若造に支払い能力はあるんですか?」
キサマと同い年を指して『若造』とは(笑)
「いや無いよ、そんな能力」
「じゃぁ無理じゃん…………………あっ!」
やっと気付いたか!
「ウルフく~ん♡ 僕の手料理食べたよねぇ~? もう咀嚼して飲み込んじゃったよねぇ~? 今更吐き出して『はい、元通り』なんていかないの解ってるよねぇ~?」
陛下は上半身を横に倒して、下から抉る様にポンを見つめ詰め寄る。
「肉じゃが代、一杯10万G……おかわりしたから合計20万G払って(ニコ)」
陛下は無邪気な笑みで両手のひらを上にしてポンへと突き出し金をせびる。
無邪気で可愛い笑顔なのに、悪魔が居る様な感覚に陥ってるのは私だけではないだろう……ゾクゾクして濡れそうだ!
「ふざけんなぁ……何所の世界に一杯10万Gの料理があるんだ!」
「この世界にはあるんだよ」
きっと陛下の生きてる世界だろう……私の世界とは違う。
「そんなん認めるとでも思ってるのか!?」
「おいおい……現グランバニア国王である僕が自ら作った料理だぞ。付加価値が付いて当たり前だろう。王様の手料理だぞ」
「ざけんな、オッサンの手料理にそんな価値ねーわ!」
「はん! なんも解ってねーな青二才が。イケメンとは言え男の手料理にそこまで高価な付加価値が付くとは、僕だって思ってないさ!」
「じゃ、じゃぁ何だこの馬鹿高い付加価値は!?」
「ふふん。聞いて驚け……この肉じゃがには“ビアンカの唾液”が隠し味として入っている!」
え、マジ!? もっと味わって食べれば良かった!
「舐めんなぁ馬鹿野郎……逆に金払えボケぇ!」
「まぁ落ち着きなさい。隠し味は他にもある……なんと“ビアンカのおしっこ”だ!」
ぐはぁ! 100万G出しても食べたいわぁ……まぁそんな金無いけど。
「アンタ食品衛生法って知ってる?」
「あれれ? まだこの料理の価値が解らない!? じゃぁ特別に最後の隠し味も教えちゃおう(笑) なんと“ビアンカの陰毛”も入ってるんだゼ! 更におかわりしたくなっちゃった?」
本当だとすれば一杯10万Gは安いわねぇ。
「……し……」
「……『し』?」
特設されたテーブルに突っ伏しながらポンは何かを言おうとしてる。
「死ねクソ親父!」
そう言って叫ぶと、テーブルを陛下に向けて引っ繰り返す。
勿論、ビアンカ様の隠し味の入ってた食器類ごと。
しかし陛下は、華麗な動きで食器類をキャッチすると、飛んできたテーブルを蹴りでポンへ跳ね返す……と同時に「スカラ」と呪文も唱えた。
攻撃直後の無防備なところに、行きの勢いよりも強力な返しを受け後方へ倒れる。
ポンは勢いよく倒れはしたが、テーブルがぶつかる直前に陛下が唱えたスカラで防御が上がってた為、外傷は無い様子。
反撃しつつも相手を気遣う余裕のある陛下……レズビアンでも惚れるわぁ!
「こ、この野郎……」
余裕の笑みを浮かべる陛下とは正反対に、鬼の形相で睨み付けるポン……
恪が違うわね。
「も~……嘘だよ嘘。唾液やおしっこなんて入れるわけ無いじゃん(ゲラゲラ)」
「んな事は解ってるわ……ん? い、陰毛は?」
え!? ポンに指摘されると、そっぽを向いて目を合わせない陛下。
「お、おいこらオッサン! 陰毛は入れたの? 何で陰毛だけは否定しないの?」
「プークスクス! 僕が大切な妻の陰毛なんて、誰かに提供する訳無いじゃん!」
右手の指を揃え、それを自らの口に当てて笑い慌ててるポンを嘲笑う。
「くっそー相変わらずムカつくオッサンだな! ……『大切な妻の陰毛なんて』って言った? 『陰毛なんて』じゃ無く『大切な妻の陰毛なんて』って言ったよね? え、じゃぁ陰毛自体は入れたのか? 誰のを入れたんだ!?」
え……だ、誰の!?
「えー、知らないよ誰のかなんてぇ……先刻トイレで拾ったんだモン」
「『モン』じゃねーよ馬鹿野郎! 本当に食品衛生法で訴えるぞクソ親父!」
左手で口を押さえて必死に抗議するポン……私達が食べたのにも入っていたのか?
「あはっはっはっはっ……必死なのチョーウケるんですけどぉ」
「お前……トイレで拾ったもん入れるなんて、冗談じゃ済まねーんだぞ!」
確かに……ビアンカ様のだって判っているのなら問題ないけれども……
「も~……常識的に考えてみ! 陰毛なんて入れるわけ無いじゃん(ゲラゲラ)」
「お前が『常識的』って言うな! 非常識の権化が!」
陛下に対するポンの言動に、ビアンカ様がメチャクチャ可愛い笑顔で笑ってらっしゃる。もはや天使としか評しようが無い!
「さぁて……異物混入が無いと判ったところで、いい加減20万G払えよ小僧(ニッコリ)」
「“異物混入”? んなの関係ねーよ。付加価値が無い事が判明したんだから、そんなバカ高い金額、払うわけねーだろオッサン(ムスッ)」
「無銭飲食してんじゃねーよ、馬鹿ガキが!」
「無銭飲食じゃねーよ、適正価格なら支払うって言ってんだよ、アホ中年!」
「だからこの20万Gが適正価格だって理解しろや、ヘタレスケこまし!」
「そんな非常識が理解出来る訳ねーだろ、無節操種馬野郎!」
どちらも引かない。
ポンは当然だと思うが、陛下が引かないのが笑える。
贔屓目に見ても、悪質極まりない恐喝なのに(笑)
ジョディーSIDE END
後書き
今回のエピソードには全く関係無いけども、
今考え中の、とあるお姫様を歌った替え歌を制作中。
♪可愛い顔してあの子 かなり変態だねっと♫
♪言われ続けたあの頃 わりとどうでもよかった♫
♪言ったりしたりエロい事 私の貴方への行為♫
♪いつか何処かで成就するって ことは永久(とわ)の妄想(ゆめ)♫
いつか完成形を披露したいです。
因みに、どの姫様かは秘密。
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