リュカ伝の外伝
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リュカ'sキッチン レシピその4「言い分はカレーに無視する」
前書き
イージー・ライダーって
面白かったっけ?
主題歌は好き。
(グランバニア城・メインキッチン)
ユニSIDE
ほぼ恐喝のリュカ様に対し、至極真っ当な意見で飲食代を支払わない閣下。
世間一般の常識から考えて、閣下の言い分は尤もであり、2億人のグランバニア王国民に聞いてもリュカ様の言い分は非常識であるのは明白。
でも、リュカ様が好きだからか、閣下の事が大嫌いだからか、またはその両方なのか……私を含めこの場に居る全員が“お前が20万G支払えば、万事解決なんだよ!”的な雰囲気を醸し出している。(人徳のなせる業)
「……………じゃぁ、如何あっても肉じゃが代20万Gは払わないんだな?」
「当たり前だ馬鹿野郎!」
“支払え”“断る”の押し問答に疲れたのか、リュカ様が溜息交じりで折れかけてる。リュカ様らしくない!
「解ったよ……もういいよ。肉じゃが代なんか貰わないよ……」
「当たり前だと言ってるだろうが馬鹿野郎!」
もうリュカ様が折れたのだから、口を慎みなさいよ、クソガキが!
「じゃぁ俺は仕事があるんで……」
そう言って立ち上がろうとした時、
「まぁ待ちたまえウルフ・アレフガルド宰相閣下(笑顔)」
笑顔で閣下に敬意を払うリュカ様……閣下の顔から血の気が引いてる。
「流石に頑固者のお前から20万Gを融通して貰う事は諦めた……」
「じゃぁ俺は帰っても良いだろ!」
そんな簡単に帰れると思うなよ(ワクワク)
「金を融通して貰う事は諦めたが、ニック・ジャガーの肉じゃが店を諦めたわけじゃぁない!」
「も、もう俺には関係無いのでは?」
非常識大王リュカ様の前に、そんな事が通じる訳が無い!
「ウルフ……正式に依頼する。20万Gを貸して♡」
「……………貸す?」
……? 先刻までの遣り取りと何が違うのだろう?
「うん。貸して」
「え……あれ……? 何だこれは? も、もしかして……先刻までは俺から20万Gを巻き上げるつもりだったの?」
……は?
「うん。だって飲食代じゃん!」
「え? えっ!? 20万Gも巻き上げて、1Sも返す気が無かったて事?」
う、嘘でしょ!?
「返すも何も、先に20万G分飲食したのはそっちじゃん(笑) その分の支払いをお願いしてたのであって、返済義務は無い!」
「言ってる事は解るけど、到底納得は出来ない言い分だ!」
「だから僕の方が譲歩してやったんじゃん! 20万G貸してって」
「…………………………っ」
閣下は右手でこめかみを押さえ、何を言っても無駄という事を理解した。非常識大王の勝利である……なんか誇らしい。
「分かりました! そのニック・ジャガーに20万Gを貸し付ければ良いんですね!?」
「うん!(笑顔)」
リュカ様の眩しい笑顔で、この部屋の空気も明るくなった。
「じゃぁ年利1.0%で良いですか? かなり破格ですg」
「お馬鹿!」(バシッ!)
「痛ぁ! な、何すんだよ!?」
「ウルポンのお馬鹿!」
突如リュカ様の平手打ちが閣下に炸裂。
先程スカラで防御力が上がっているのに、かなり痛そうだ。
いったい何が不満なのだろうか?
「お前の役職は何だ、言ってみろ!」
「はぁ? 俺はこの国の宰相兼国務大臣だ!」
そうだった、忘れがちだが兼務してるんだったわ。
「って事はお前は公務員だろ!」
「それが何だ!?」
うん。それが如何したのだろうか?
「金銭を商品として、それで利益を上げる……これは立派な商売だ! 公務員の副業は禁止されている!」
「お……お前、俺に『金貸せ』って言ったじゃねーか!」
確かに言ったわね。
「『金貸せ』とは言ったが、副業しろとは言って無い」
「え……何? それは利子を摂っちゃいけないってこと!?」
嘘でしょ? 20万G借りておきながら、全額無利子なの!?
「当然だ! 利子が付くならお前なんぞからは借りん」
「じゃぁ貸さねーよ!」
そうなるわね。
「じゃぁ飲食代を支払え! 今すぐ20万Gを支払え」
「な、何でそうなるんだよ!」
「20万Gが必要だからだ!」
「そっちの都合じゃねーか!」
「お前の都合になんか合わせてられるか!」
「一方的……そして理不尽すぎ!」
解っていた事だろうに……今更だなぁ。
「まぁ待て。お前にも特典はある」
「20万Gも出すんだから、それなりだろうな!?」
何だろうか? “肉じゃが生涯無料券”か? ……いやパンチが弱い。20万Gと釣り合わないわ。
「ふっふっふっ……聞いて驚け! 何と『リュリュにセクハラし放題』だ! どうだ、魅力的だろう」
「いらんわ馬鹿! もう既にセクハラなんぞしまくっている」
「な、何だとぅ……僕の大事な娘に、セクハラしてるだとぅ!? 許せん、慰謝料を請求する!」
「こ、こいつ……今更……」
分かっていた事だろうに。
「あ~……因みにリュカ、幾らほど慰謝料請求するのかしら(笑)」
「え~……僕の大事な娘にセクハラだよぉ~……そりゃぁ……ねぇ」
その大事な娘へセクハラする権利を与えようとした件は如何なった?
「はいはい、分かってる。分かってますよ! 慰謝料も20万Gなんでしょ、どうせ!」
「お馬鹿!」(バシッ!)
「何で、また!?」
「僕の愛娘が、そんなに安い訳ないだろ! 20兆Gだ!」
「お、お前先刻20万Gでセクハラする権利を売ろうとしただろが!」
「馬鹿者ぉ! 許しを得てするのと、無許可でするのじゃ了見が違う!」
凄い事を言い出すわね……流石ですわ。
「言ってる事が無茶苦茶だ!」
「だが一本筋が通ってるだろ」
「極細だ。しかも強引にな!」
「そんな些末な事は知らん!」
「じゃぁ20万G貸せば、俺はリュリュさんを押し倒してぶち込んでも良いんだな!?」
「それはセクハラの領域を超えている。だいたい、お前嫌われてるんだから、毎朝笑顔で挨拶するだけで、向こうからしたら大いなるセクハラだ。その程度」
「に、20万Gも出して、挨拶するだけ!?」
「だって“ハラスメント”……即ち嫌がらせじゃん。アイツお前の顔を見ただけで嫌がるよ」
確かに嫌がりますわね。
「あーもういい。あ~もういい! 絶対に今度あの女のパンツを剥ぎ取ってやるからな!」
「それはセクハラの領域か?」
もう存在自体が彼女にとってセクハラだからなぁ……
「それこそ、そんな些末な事しるか! 俺は帰る!」
「あ……ちょっと待って」
流石に怒り心頭な閣下は席を立ち出口へ向かう。
「待てウルフ……ストップだウルフ! ステッペン・ウルフ!」
「変な渾名を付けるなぁ!」
また新しい渾名を付けられたと感じた閣下は、傍にあった包丁を力任せに投げた。危ないなぁ……
「おっと……」
だがしかし少し軌道を外れビアンカ様の方へと進む包丁。しかしリュカ様は、その包丁を何気なく左手の人差し指と中指で受け取ると、左手首のスナップだけで投げ返し閣下の頬スレスレを掠めて出口の扉に突き刺さる。扉には“ビーン”という音と共に大きめの包丁が深々と刺さってる。恐っ!
「まぁ落ち着け。お前も言ったが、細かい事は気にするな。ワイルドで行こう!」
そこまで言うと突如歌い出すリュカ様。
リュカ様にしては珍しく渋めの声で歌う……ちょっと怒ってる?
歌いながらだが、ジェスチャーで閣下を先刻まで座ってた椅子に誘うと、渋めの緑茶を出して落ち着かせる。
果たして落ち着くだろうか?
「分かった……分かったから!」
如何やら閣下は落ち着いた(というよりも諦め? 恐怖?)様で、20万G無利子貸し出しの話を進める様だ。
歌うのを途中で遮られたリュカ様は、ちょっと残念そうな顔。なんか可愛い。
「はぁ~……良いだろう。細かい事は気にしない。だが無利子とは言え20万Gも貸すんだ……ワイルドでも月々の返済計画は提示してもらう」
「お馬鹿!」(バシッ!)
「三度目っ!?」
コントかと思うリュカ様の平手打ちで左頬を殴られた閣下の台詞が、面白くて笑ってしまう。
「飲食店を舐めんなよ!」
「お前の人生観ほど舐めてねーよ!」
だとしたら舐めきってるのでは?
「いいか、飲食店ってのはなぁ……固定客である“常連さん”が出来るまで時間がかかるんだ! 新規開店して直ぐに繁盛するわけねーだろ! 常識ねーなぁウルフ閣下は(笑)」
「お、お前に常識を語られたくないわ!」
「うるさい、黙れ。そして聞け! 常連客が出来るのに数ヶ月……そこから常連客を含め客足が増えるのに数ヶ月。経営に余裕が出来るのなんて1年~2年先だ! 返済なんてそこからだ」
何でこんな無茶苦茶を押し通せるんだろう?
「無利子、無担保、無期限が原則だ!」
私を奴隷商人から買い取ったときのような強引さ……
だから好きなんです!
ユニSIDE END
後書き
今回言わせたかった台詞……
「お馬鹿!」です。
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