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東方絆日録 ~ Bonds of Permanent.

作者:福岡市民
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共存編
  敏久:〇〇との出会い

萃香「……はっ!」


朝食を食べ終わって皆でまったりしていたとき、萃香が突然立ち上がった。


霊夢「どうしたの?」

萃香「誰かに呼ばれたからちょっとそこまで行ってくる!」

敏久「“そこまで”ってどこだよ⁉︎」

霊夢「待ちなさい!……あ、行っちゃった」


霊夢の制止も聞かず、萃香は拡散してどこかに行ってしまった。


敏久「まあ萃香のことだけえ、きっと大丈夫だろうな」

霊夢「そうよね、あの()は強いもの」


意外と薄情な二人。もしくは敏久が霊夢に似てきたのか。


霊夢「ところで、ちょっと頼みたいことがあるんだけど……」



ーー
ーーー


現在、敏久は霊夢のお使いに出ていた。
「お使い」といっても魔法の森の入口にある荒物屋・香霖堂(こうりんどう)で溜まったツケを払って領収書をもらってくるだけで、その後は自由にしていいということだった。


敏久「どうもー」

?「いらっしゃい…おや、君は?」


香霖堂の扉を開けると銀髪の青年が店番をしていた。店主の森近霖之助(もりちか‐りんのすけ)である。


敏久「俺は松上敏久、博麗神社に居候中の外界人だ。霖之助含めた幻想郷のほとんどの人物は知っとるけえ自己紹介はせんでええよ。よろしく」

霖之助「そうかい、まあよろしく。それで何の用だい?」

敏久「霊夢に頼まれてツケの支払いに来たんよ」

霖之助「はいはいお勘定ねーーーうええ⁉︎」


霖之助は驚きを隠せないでいるようだ。


霖之助「あの霊夢が!夢じゃないよね⁉︎」


霖之助は自分の頬をバチンと叩きーーー


霖之助「痛い…。つまり夢ではないのか」


そう呟いた。
端から見れば変人なのだが、あえて敏久は黙っておいた。


霖之助「まさか自分から支払いに来てくれるとは思っていなかったから特別に千円まけてあげよう。計算が面倒だから端数も切り捨てて…と。全部で13800円だね」


敏久は霊夢から預かった2万円を渡して6200円のお釣りと領収書を受け取った。


敏久「霊夢がツケでどんどん物を持っていくから大変だろ?」

霖之助「確かにそうだね…。幸い彼女の他にもお得意様は何人かいるから辛うじて生計は立っているけど」


苦笑いで答える霖之助。
その一言で霖之助の苦労が分かったような気がした。
その後は特に用はなかったので敏久は霖之助に別れを告げ、人里へと向かった。



ーー
ーーー


-人里-


昼前の人里は相変わらず賑やかで大勢の人が(せわ)しげに道を行き交っている。
敏久がどの店に寄ろうかと思案していると、思いもかけない人物を見つけた。それは会えるようで滅多に会えない人だった。

その男性は痩せた体躯をしていて黒縁のメガネをかけている。
茶色い着物を着て下駄を履いているのだが、被っている花柄のハンチング帽だけが目立って帽子だけ妙に浮いたような格好になっていた。
手には瓢箪を持っており、時々それを傾けて中の液体(恐らくは酒)を飲んでいる。

敏久から見ると彼は神のような存在だった。その人物の元に歩み寄って恐る恐る声をかける。


敏久「すみません。あの、ひょっとしてZUN(ずん)さん・・・ですか?」


“ZUNさん”と言われたその人はしばらく敏久を見つめ、やがて答えた。


ZUN「いかにも。私が“ZUN”こと太田(おおた)順也(じゅんや)ですが貴方は……?」

敏久「私は松上敏久といって、博麗神社に居候している外界人です」

ZUN「ああ、君が新聞に出ていた松上君か」

敏久「幻想入りする前からファンなんですよ!よろしくお願いします‼︎」

ZUN「そうなんだ、嬉しいよ。こちらこそよろしく」


とりあえず握手した。


敏久「いやはや、まさか神主に会えるとは夢にも思わんかったわあ!」

ZUN「“神主”ねえ…。悪いんだけど幻想郷(ここ)ではその呼び名を使うのはやめてくれるかな?」

敏久「あれ、どうしてですか?」

ZUN「この小説の世界観を壊したくないからだよ。この小説における幻想郷は“原作とは別次元の幻想郷”という設定だからね。それに僕も一人のモブキャラとしてこの世界を楽しみたいし」

敏久「なるほど」


メタ発言でも発言がスキマ送りにならないZUN。
さすがは原作者である。


ZUN「“幻想郷では常識に囚われてはいけないのですね!”…か。まさかその幻想郷で東方Projectを知っている人と知り合うとはねえ……ンフフ」


ZUNはそう呟いて酒を呑む。やはり無類の酒好きらしい。


ZUN「松上君、どうだい?君さえよければ僕がこの幻想郷を案内してあげるけど」

敏久「本当ですか⁉︎ ぜひお願いします!」




ーーー千載一遇ともいえるこのチャンスを逃すまいとばかりに敏久は深々と頭を下げたのだった。 
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