ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね(お試し版)
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六話「再会、なるか?」
「「追い付けないな、やっぱり時間を無駄にした間に距離を離されたのかぁ」」
追いかける途中でまた枝とぶつかりそうになって分裂した俺は二重音声でぼやいた。
「「方向はあってる筈」」
本当にこっちで良いのか不安になったときにふとアバンの言葉を思い出した俺は、自分から出る明かりを頼りに地面を照らしで見つけたのだ。二人分の足跡を。
「「ポップの方はまだ未熟だからだとしても、勇者の方がこう簡単に足取りを追えるようなことをするってのはちょっと不自然な気が」」
弟子に教訓を与えるためわざとそうしているのか、俺の存在に気が付いているが故に敢えて誘っているのか。
「「どっちもありそう、だから――ここは俺が先に行こう、え?」」
両者が俺で、Bのような不幸な事故もなく、消耗もしていないからだろうもう一人の俺を残して先に行こうとする意志は見事に被った。
「何言ってるの、A」
「いや、それはこっちのセリフなんだけどA1」
とりあえずツッコミは入れるも、どっちも俺なら思考回路は同じなのだ。
「「言い争っても時間の無駄にしかならないよね」」
即座に見解の一致を得た俺達は、とりあえずこのまま追跡を続けようと問題を先送りしようとし。
「「え」」
先に進もうとしたところで、茂みが揺れた。
「「アバン、ではないよね」」
茂みの位置は足跡の向かう先とは別方向だ。
「「とな」」
「ブモォォアアアッ」
最後まで言い終えるより早く、それは茂みを突き破って姿を現した。嘴と角、退化した翼を持ち二足で飛び出してきた魔物を俺は知っている。
「「あばれうしどりッ!」」
鳥と牛を組み合わせたようなフォルムのそれは俺達の炎の身体を見て興奮しているらしく鼻息が荒い。
「「どうする?」」
問いかけたのも自分であるが故にそれが同時に俺達で勝てるのかと言う意味であることも知っている。
「「可能性は五分五分」」
俺達がメラの呪文を唱えて放つ火の玉が両方命中すれば仕留められるとは思う。
「「けど、先手をとられてこっちのどっちかが倒されたら勝ちはなくなる」」
その上で、こちらは一発しか撃てない攻撃呪文を放ったことで次に遭遇した脅威へ対処するすべがほぼなくなるのだ。
「「選択肢は二つ、別れて逃げて片方が確実に生き延びる手段をとるか、ここで戦うか」」
勇者のところにコイツを連れたまま逃げていっては、同行を願うどころではないし、そも追い付くまでコイツから逃げ延びられる保証も自信もない。
「「やるしかないか」」
結論はもう一人の俺も同じだったらしい。ここで片方が逃げ伸びても、再び敵対的な他のモンスターと遭遇すれば今以上に拙い状況に置かれるのは変わらず、今なら一つ試せることがある。
「果たしてこの身体は敵と戦い、勝つことでレベルアップして成長できるのか」
その疑問の検証をするには持ってこいなのだ。成長出来れば精神力も増強するであろうから、もう呪文を唱えられなくなるという問題も解決する。勝ててレベルが上がればと言う前提条件付きではあるが。
「ブモアアアッ」
「しまっ」
だが、俺達は一つミスを犯していた。視界内に居た鳥と牛の合いの子はメラゴーストより素早いのだ。遠距離から撃てる分、呪文の方がリーチがあるとは言え、俺達は逡巡と作戦会議であばれうしどりが距離を詰めるまでの時間を使ってしまっていた。
「うおおおおっ」
だから、もう一匹の俺がぴょいんと跳ねて突進を躱せたのはまさに奇蹟だった。
「「今だ! メラ!」」
「ブグモオオオオオッ」
数を増やした俺達の呪文を受けて火だるまになったあばれうしどりは悲鳴を上げてのた打ち回り。
「か、勝った……」
結局何もできないでいた俺は思わずへたり込んだのだった。
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