ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね(お試し版)
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七話「思い知らされた弱さ」
「結局、何も出来なかった」
脳内に響くファンファーレの幻聴、そしてたぎってくる力。だが、成長できた喜びよりも罪悪感と情けなさの方が今は大きい。
「「気にすることはないよ、俺」」
二重音声で他の俺が慰めてはくれるが、命をかけて戦った他の俺に申し訳なく。
「「それに、気にするぐらいならすぐにでもアバンを追ってくれ」」
「っ、そうだよな」
何も言えない俺に他の俺達が続けた言葉は、しごくもっともなもので。
「幸いにも精神力は残ってる。首尾よく同行を認められたら、メラで合図を」
「「その必要はない」」
すると続けるよりも早く、残りの俺が否定を返した。
「え?」
「「忘れてるかもしれないが、俺達の言葉は普通の人間には理解されないぞ?」」
「あ」
指摘された俺は間抜け顔をさらしていたんじゃないかと思う。
「「お前も俺だからな。同じことは考えた。気づいたのが先になったのは、お前が落ち込んでたからだな。そう言う訳で、仮に交渉がうまく行っても、合図のメラを放つ理由をうまく説明できないんじゃ呪文を唱えようとしてるところで『騙して攻撃するつもりだったんだ』とか誤解を招きかねないしな」」
「なるほど、けど」
指摘されて気が付いた。言葉が通じないなら、同行交渉は更にハードモードなのではないかと。
「「正直、お前が引き受けてくれて助かったよ」」
「ちょ、おま」
良い笑顔で頷き合う他の俺になんて奴らだと思いかけたが、さっきの戦いで何もできなかった俺にそれを言う資格はきっとない。と言うか、俺が変に罪悪感を抱かないためにこんな言いまわしをしてるんじゃないだろうか。
「戦いでは役に立てなくて、ごめん。なら、せめてこの交渉は成立させてみせるよ」
今言葉が通じなくても、一応あてはある。この後アバンが出会う原作の主人公は魔物に育てられていて、魔物と意思疎通ができた筈なのだ。
「ダイと出会ったあとってことになると、もう魔王の意思の影響を受けてるころだけど」
幸いここは人気もない自然豊かな森の中の様だし、人と接触するようなことが無いなら、後で迎えに来ることだってできるかもしれない。
「「いや、気持ちだけで十分だ。俺も死にたくはないし人は襲いたくないが、原作の流れを考えた場合ここに立ち寄れるかは未知数だし、そもそもここがどこなのかわかっちゃいないしなぁ」」
「あー」
日本列島をベースにしたような大陸が散らばる原作の世界地図の記憶を引っ張り出してみると、確か何か所か森はあった気がするが、原作に出てきて覚えてるのは魔の森と呼ばれたところだけ。
「ただ、その森の近くには重要登場人物が一人いるけれど、主人公達と出会った時がポップとの初対面だった気がするから、魔の森ってことはない」
「「ポップを連れてるってことはあの日本の本州モチーフの大陸のどこかなんじゃ?」」
「うーん、その可能性が高い、かな?」
知りえた情報では推理するに不足。やはりどうあっても勇者アバンに追いつき仲間に加えてもらうしかなさそうだ。
「正直、危ないことなんてせずに危険とは無縁な場所でのんびり暮らしていたんだけどなぁ」
今のまま何もしなければ、魔王の意思とやらで強制的に凶暴化して人を襲い、ほぼ最弱の魔物として返り討ちに逢う未来しか見えないのだから、仕方ない。
「「何か情報を掴んだら教えて欲しいと言いたいところだが」」
「書置きを残しても、不審がられる原因になりそうだし」
今の俺には安全に情報をやり取りする方法が思いつかず。
「いや、待てよ? こっそり分裂して分裂したのを伝令役に置いていけばいいんじゃ?」
「「なるほど! けど、あの二人の目を盗んで分裂なんてできるの?」」
「あ゛……いや、相手は勇者でも人間だし、不眠不休での行動は難しい筈。二人いるわけだし、野宿中、交代で見張りにつくのであれば、ポップが見張りの時なら、目を盗んで、こう、何とか出来たら、いいな、的な?」
即座に粗を突っ込まれたが、弟子の少年が見張りの時ならまだ可能性はあると思うんだ。
「もっとも、それも仲間にしてもらえたらの話だしなぁ」
「「違いないな」」
言ってくると俺は見送る二匹の俺達を残し走り出したのだった。
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