仮面ライダーAP
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第10話 並び立つ猛者達
前書き
◆今話の登場ライダー
◆ジャック・ハルパニア/仮面ライダーUSA
在日米軍から出向してきた豪快なタフガイであり、アメリカ軍で開発中のスーツのテストを任されている。仮面ライダーUSAのスーツを装着した後は、最大出力で放つ鉄拳「ライダースマッシュ」を切り札とするインファイトで戦う。マシンGドロンに搭乗する。年齢は38歳。
※原案はリオンテイル先生。
◆上福沢幸路/仮面ライダーGNドライブ
大富豪の御曹司でありながら、警視庁の刑事でもある優雅な好青年。仮面ライダーGNドライブに変身した後は、ダイヤモンドの輝きを纏い高速回転しながらドロップキックを放つ「ブリリアントドロップ」を必殺技としつつ、エネルギー銃を使った遠距離戦で戦う。マシンGドロンに搭乗する。年齢は26歳。
※原案は黒崎 好太郎先生。
◆本田正信/仮面ライダーターボ
元白バイ隊員であり、亡き先輩の仇を討つために「2代目」としてスーツを受け継いだ熱血巡査。足裏のエンジンの出力を最大にして放つ回し蹴り「ストライクターボ」を切り札としつつ、接近戦を主体に戦う。マシンGチェイサーに搭乗する。年齢は31歳。
※原案はヒロアキ141先生。
上杉蛮児の「変身」を皮切りに始まった「第2ラウンド」は、一方的という言葉では足りないほどの惨状であった。
仮面ライダーニコラシカこと、武田禍継のような技巧など全くない、シンプルな暴力。ただ力任せに拳を振るい、蹴りを放つだけの粗雑な攻撃。にも拘らず、仮面ライダーギムレットの猛攻はイグザードとオルタを圧倒していたのである。
2人がすでに必殺技を出し尽くし、消耗しきっているのをいいことに。彼は技とも言えない大振りな鉄拳で、疲れ果てた戦士達を痛め付けていた。
「ぐぉあぁあッ!」
「うぐぅッ……!」
「んン〜……圧倒的な力で何もかも踏み躙るこの感覚、たまんねぇなァ。散々俺達を差別して、世界の端へと追いやってきた人間共が今やこのザマ! 感動的だねぇ……」
戦いそのものを冒涜するかのようなギムレットの攻撃に倒れる、イグザードとオルタ。その様子を冷酷に見下す白銀の戦士は、ベルトのボトル部分を捻り、エネルギーを右腕に凝縮させていく。
「……じゃあそろそろ、そんな人間共に相応しい最期ってヤツをくれてやるぜ。脳味噌ぶちまけてくたばりなァッ!」
「くッ……! 都、椿と桜を頼むッ……!」
やがて力強く握り締められたその拳は、辛うじて立ち上がろうとしているイグザードとオルタに向けられていた。2人にはもう、それを回避出来るだけの余力などない。
イグザードこと竜胆はただ、最愛の妻に娘達の今後を託すことしか出来なかった。
「スワリングッ……ライダァアッ! パァァンチッ!」
「……!?」
そして、ギムレットの右腕から放たれる最大火力の鉄拳が、2人を外骨格ごと吹き飛ばそうとしていた――その時。
「うぐッ……ぁぁぁああッ!」
「ひ……東方ァッ!」
「東方さんッ!」
2人を庇うように飛び込んで来た仮面ライダーアルビオンが、己のギガントアームズを盾にしたのである。巨大な機械腕すらも一撃で粉砕する鉄拳を真っ向から喰らった彼女は、激しく宙を舞い地面に叩き付けられてしまうのだった。
あまりの威力に気を失ってしまったアルビオンに駆け寄り、イグザードとオルタは即座に応急処置を始める。その様子を眺めているギムレットは、感心したように口笛を吹いていた。
「ヒュウ……完全にぶち殺したと思ってたんだがな。あの女、まぁだ生きてやがるのか。良いねぇ、ちょっとやそっとで壊れねぇ女は嫌いじゃねぇぜ。俺のものにしてや――?」
身を挺して仲間達を守り抜いた、アルビオンこと百合香に興味を示したギムレットは、彼女を手に入れようと静かに歩み出していく。すると、そんな彼の行手を遮るかのように、1台のGドロンが停車して来た。
そこから降りて来た「新手」の戦士は、メタリックレッドと金色の装甲で全身を固めている。そのシルエットは「仮面ライダーG3」に近しく、アメコミヒーローさながらのマッシブかつヒロイックなラインを描いていた。
「……やめときな。お前みたいな乱暴者がタイプな女なんざ、どこを探したって見つかりはしねぇよ」
「あァ? ……なんだァ、てめェ」
在日米軍から出向してきた、ジャック・ハルパニア大尉こと「仮面ライダーUSA」。アメリカ陸軍での制式採用が検討されている最新式強化外骨格のテストを任されていた彼は、稼働時間の試験も兼ねて、この場に参戦して来たのである。
そんな彼に「楽しみ」を邪魔されたギムレットは、苛立ちを露わに拳を振るう。だが、その攻撃は彼の掌で容易く受け止められてしまうのだった。
「なにィ……?」
「このスーツは高出力と引き換えに、とにかく燃費が悪くてな。……悪いが、お前に女性の扱いを説く時間も惜しいんだ」
彼のスーツは、仮面ライダーΛ−ⅴの「オーバーロード」にも匹敵する高出力を常時発動している。その力はもはや、正真正銘の改造人間にも全く見劣りしていない。USAが反撃の拳を放った瞬間、咄嗟に防御に転じたギムレットは、衝撃のあまり大きく後退してしまう。
「……なので。お前には品のないお前のままで、お縄についてもらう」
「ハッ、笑わせんな。……殺るか殺られるかって世界に、品のイイ奴なんざいるものかよ」
その威力に、仮面の下で冷や汗をかきながらも。ギムレットは不敵に鼻を鳴らし、USAと真っ向から睨み合う。こいつだけは、真っ先に潰さねばならないのだと認識を改めて。
「それは違うな、上杉蛮児! いつ如何なる状況であろうとも、品位というものを忘れてはならない! それが『人間』というものだよ!」
「あ、あァ……!?」
そこへ、さらにもう1台のGドロンが駆け付けて来る。そこから颯爽と飛び出してきた1人の青年は、爽やかな笑顔でギムレットの言葉を否定していた。
大富豪の御曹司でありながら、刑事でもある上福沢幸路。数多のライダー開発計画に出資して来た彼自身も、1人の戦士としてこの場に駆け付けて来たのだ。
「……遅いぞ、幸路。市民を守る警察官たるもの、巧遅より拙速だろう?」
「いやぁ済まないね、ジャック大尉! スーツの調整がようやく終わったのだよ。この遅れは、これからの働きで取り戻させて貰おうか」
アメリカで開発されたUSAのスーツを含む、警視庁以外での開発計画にも莫大な資金を投じている幸路。そんな親友に軽口を叩いているUSAも、仮面の下では頼もしい援軍の到来に頬を緩めていた。
そんな彼に朗らかな笑みを向ける幸路の後方から、1台のGチェイサーが接近して来る。そこから飛び降りて来た、幸路の部下らしき警察官は、慌ててヘルメットを脱ぎながら上司の側に駆け付けて来た。
「幸路さん、調整が終わったからって何の連絡もなしに飛び出さないでくださいよ! 出資元のあなたに何かあったら、俺の首が飛ぶんですから!」
「はっはっは、心配は要らんぞ正信! その時は我が上福沢家の財力を以て、再就職先を斡旋してあげようじゃないか! 君には日頃から世話になっているからね!」
「あなたが死んでからじゃ意味ないでしょうが!」
ライダー開発計画に協力しているテスト装着者にして、元白バイ隊員でもある本田正信巡査。「前任者」である白バイ隊員時代の先輩が殉職した後、そのスーツを引き継いだ「2代目」であるからこそ、彼は幸路を死なせまいと声を荒げているのだ。
もう2度と、大切な者達を失うことがないように。
「……よし、その意気だよ正信。では行こうか、共に正義を為すために!」
「言われるまでも……ありませんッ!」
そんな彼の真っ直ぐさを見込み、この戦線に加わる「助っ人」として選んでいた幸路は、USAと頷き合うと。警視庁製の変身ベルト「量産型マッハドライバー」を勢いよく装着する。正信もそれに合わせ、亡き先輩から受け継いだ「ターボドライバー」を腰に巻いていた。
「……変身」
ドライバーにシルバーを基調とする「HSデッドヒートシフトカー」を装填した幸路が、声を上げた瞬間。瞬く間に構築された外骨格が、その全身を覆い尽くしていく。
「変身ッ!」
正信も愛用のドライバーにライダーイグニッションキーを差し込み、エンジンを掛けるように回すことで、「変身」を開始していた。それから間もなく、ギムレットの眼前に新たなる2人の「仮面ライダー」が参上する。
「このスーツの正式名称は『GENERATION NOBLESSE DRIVE』……即ち、高貴なる運転を重んじる戦士、ということさ。君の運命も、僕の手で華麗に乗りこなして見せよう」
「仮面ライダードライブ」のタイプデッドヒートを想起させる外観を持ち、アーマーとタイヤパーツが銀色と赤に彩られた外骨格。さながら、タイプハイスピードのような高級感溢れるデッドヒート、といった印象を与えているこの戦士こそが――上福沢幸路が変身する「仮面ライダーGNドライブ」なのである。
「……先輩の分まで、皆を守り抜いて見せる。それが仮面ライダーとしての、警察官としての俺の任務だッ!」
白を基調としている「仮面ライダーマッハ」を彷彿とさせる外観でありながら、赤を基調とする真逆のカラーリングに彩られている「仮面ライダーターボ」。それが、本田正信が亡き先輩から受け継いだ「力」であった。
「さぁて……役者も揃ったことだし、こっちも『第2ラウンド』と行かせてもらおうか。今さら、逃げられるとは思わないよな?」
仮面ライダーUSA。仮面ライダーGNドライブ。そして、仮面ライダーターボ。
共に並び立つ3人の仮面ライダーは、臨戦態勢でギムレットと睨み合う。そんな「援軍」達の出現に、銀色の戦士は「玩具が増えた」と歪な笑みを溢すのだった。
「人間風情の雑魚共が雁首揃えてゾロゾロと……。面白え、試してみろよ! 全員纏めて、鎧ごとミンチにしてやらァアッ!」
それが如何に甘い考えなのかを、知る由もなく。
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