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DQ3 そして現実へ…  (リュカ伝その2)

作者:あちゃ
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人を愛する事とは…

<海上>

「精神的に我が儘な子供………マリーは見た目子供だから…リュカの話を聞くまでは、特別問題とは思わなかったわ…」
時折、上の階で人の足音が聞こえるだけの船倉…
リュカとビアンカは、静かに悩み続ける。

「このまま放置すると、マリーもウルフも不幸な事になる…」
「?……何故ウルフも?…彼はマリーの我が儘に、自ら付き合ってる様に見えるけど…」
「マリーはショタコンなんだ…」

「ショタコン?」
「あぁ、つまり…大人の男が、年端もいかない少女に、性欲を感じる事…ロリコン!それの女性版!丁度ウルフの年齢が、マリーの性的嗜好にピッタリだったんだ!」
「ふ~ん…でも、それは良いんじゃないの?マリーの身体は子供なのだから、あと7.8年もすれば、お似合いなカップルに………あぁ、そう言う事か…」
ビアンカも途中まで言って気が付いた。

「そうなんだ…あと2.3年すれば、ウルフはマリーの嗜好から外れる…憶えてる?幼い頃のマリーは、ティミーにベッタリだったのを!」
「憶えてるわよ…私が抱くと愚図るのに、ぎこちなく抱くティミーには笑顔だったわ…つまり、あの頃のティミーはマリーにとって、お好み期間中だったわけね!」
「そ!…そして成長し、マリーの興味からも外れたわけだよ…15歳ぐらいのころだったもん…急にティミーに近付かなくなったのは!抱き上げられてもヤな顔しかしなくなったし…」
二人とも目を瞑り、マリーの過去に思いを馳せる…


「ウルフはロリコンじゃ無い!からかいはしたが、彼の嗜好は分かっている…でもマリーに恋をした!身を呈して守るほどに…つまりはマリーの外見ではなく、中身に惚れてしまったんだ!もしかしたら、マリーが何やら策を巡らせたのかもしれないが…でもウルフの恋は本物だ!でなければ、7歳児に手を出さないだろう…」
「でもマリーの方は…」
ビアンカが困った顔でリュカを見つめる。

「そうなんだ…この間の一件で、心境の変化があったみたいだが、果たして何処まで本気なのか…」
「精神年齢が実は高い少女の、性格を改善させて行かなければならないのね…私達は」
「まぁ簡単に言うとね……改善とまで行かなくても、ウルフと末永く幸せになってほしいから」

リュカとビアンカは互いを見つめ頷き合う。
二人の瞳には、責任感という闘志の炎が灯っている。
若い…若すぎる娘カップルの未来の為に!


「うふふ…でも、リュカがウルフの事をそんなに気に掛けるとは思わなかったわ…」
「だってアイツ良いヤツなんだもん!………それに僕の子供達って女の子ばかりじゃん…ティミーをからかうのも面白いけど、違うタイプも楽しみたいじゃん!」
「まぁ……じゃぁ自力で男の子を造りましょうよ…何だったら私はまだまだ頑張れちゃうわよ♡」
ビアンカは身体を擦り寄せキスをする。
気付けば船倉に響く甘い声…
つい先刻、服を着直したばかりだと言うのに…



リュカとビアンカが甲板へと戻ると、今はティミーとウルフが口論をしているではないか!
「あれ?どうなってんの?何であの二人が喧嘩してんの?」
「あぁ…リュカさん、どこ行ってたんですか!?…2時間も?」
「え?何処って…船倉でエッチしてたんだけど…何か?」
困惑しているハツキの問いにサラリと答え、更に困惑させるリュカ。

「なんでそうストレートに言うんですか!」
「あはは…で、何でティミーとウルフが喧嘩してんの?」
「喧嘩って言うのか…お互いの彼女自慢…かな?」
「はぁ?…まったく…彼女とか奥さんとか愛人とかってのは、他人に自慢する物じゃないのに…個人的に楽しむ物なのに…」
右手で顔半分を押さえ、溜息と共に呟くリュカ…

そしてティミーとウルフに近付くと、勢い良く二人の頭を叩き喧嘩を止めさせる。
「止めろ馬鹿ガキ共が!」
「「いってぇ~!」」
ティミーとウルフは頭を抱えて蹲る。

二人が蹲ったのを見たリュカは、ビアンカに目で合図を出し、マリーを船室へと連れて行かせる。
そしてティミーとウルフの首根っこを掴むと、猫の子を摘むように持ち上げ、船首まで連行する。


「二人とも…其処に正座!」
「あれ…父さん怒ってる?何で?」
「リュカさんには関係ないですよ!これは俺とティミーさんの問題なんですから!!」
「うるさい黙れ!…彼女が出来て、自慢したい気持ちはよく分かる!でも彼女をダシに喧嘩をするんじゃない!」
ティミーとウルフは、リュカがビアンカ自慢をする物と思っていたのだが、喧嘩をしていた事自体に怒っていると知り、黙って説教を受けざるを得なくなってしまう。


そしてリュカの説教は長時間に及ぶ…
船室からビアンカが、しょんぼりしたマリーを連れて出てくるまで続く…
その間、約2時間…
リュカの説教こそ終わった物の、正座という拷問に立ち上がる事が出来ず、甲板の上を這いずる二人の少年の姿が…

先に立ち上がったのはティミーだった…
アルルに恥ずかしい所を見られたくない一心で、強引に立ち上がり取り繕う。
取り繕う事の出来ないウルフは、せめて水夫等の邪魔にならない様、甲板の縁まで這いずり、そこで足の痺れが引くのを待つ。
すると其処へマリーが近付き、ウルフの頭の下に自身の膝を入れ、膝枕で労ってくれる。

「あ、ありがとうマリー……何か恥ずかしい所を見せちゃったね…」
膝枕に嬉しくも恥ずかしいウルフ…
しかし彼は気付いた。
「マリー…どうしたの?元気ないけど…俺、何かしちゃった?」
今にも泣きそうな表情で自分を見つめるマリーに気付き、慌てて起きあがり彼女の前に座り直す。
足の痺れなど感じなくなっている…

「私ね………お母様に怒られちゃった………」
「え!?さっきのアルルとの事で!?」
「ううん…違うの…ウルフ…貴方の事でなの…」
「お、俺の事………!?」
全く意味の分からないウルフ…何故、自分の事でマリーが怒られるのか…

「私ね…最初はウルフの事、好きじゃなかったの…」
「それは俺だって…嫌いじゃなかったってだけで、好きになったのはジパングでだし…」
「違うの!私のは違うの…そう言うのじゃなくて…もっと酷いの…」
とうとうマリーの瞳から、大粒の雫が滴り落ちる。

「私にとって出会った頃のウルフは、性的欲求を満たす為だけの男の子だったの…」
「せ、性的…?」
とても7歳の少女が口にする言葉ではなく、ウルフの動揺は大きくなる…

「可愛らしい男の子…他の女に手を出される前に、私が童貞奪っちゃお!そんな邪な気持ちでウルフに近付き、誘惑し続けてたの!興味が無くなれば、違う男の子に乗り換えよう…そんな不埒な考えで…」
言葉が出ない…

最初から愛されてる…そう思っていたウルフには、マリーの言葉に絶句する。
「お父様には、それが最初から分かっていたの…それでお母様に怒られましたの…………ごめんなさいウルフ…こんな女、嫌いですよね…」
ただただ泣くマリー…

叱られた事では無く、ウルフへの気持ちが愚かしかった事に。
『双方が同意の上で、互いに身体だけの関係を続ける事に反対はしない…でもウルフは間違いなくマリーを心から愛してる!マリーの事を身を犠牲にしてまで守った、ウルフの気持ちを裏切るようなことは絶対に許さない!』
これがリュカの気持ちであり、それを理解するビアンカからの叱りであった。
自分の愚かさに泣く事しか出来ないマリー…


「マリー…今でも俺の事は性的に好きなだけ?」
「違うの!!今は違うの!私、ウルフが大好き…ウルフの事を愛してるの!本当に…本当なの…信じて…」
静かなウルフの問い掛けに、涙の止まらない瞳を大きく見開き答えるマリー。

「じゃぁ、途中経過なんて関係ないよ。今、相思相愛なら俺は満足だ!これから二人の愛は何よりも強固な物だと証明して行こう…リュカさんとビアンカさんよりもラブラブな事を見せつけようよ!」
ウルフはハンカチを取り出しマリーの涙を拭う…
その行為がマリーの心に愛しさとして広がる。
「マリー…愛してるよ…」
生まれて初めて…いや、2度の人生で初めて、人を愛する事を知ったマリー…

そんな二人を遠目に眺め、末永い幸せを確信し祝杯をあげる夫婦…
マリーは気付いてないが、ウルフは気付く…
そしてマリーが深く愛されている事を、強く感じるのだった。



 
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