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DQ3 そして現実へ…  (リュカ伝その2)

作者:あちゃ
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父と娘

<海上>

既に深夜も過ぎ、あと1時間もすれば水平線の彼方から、漆黒を塗り替える白光が滲み出る頃、甲板上にリュカは佇んでいた。
周囲に人影はなく、大分離れた位置にある舵を操る水夫の姿のみ…

其処に船室から現れた一つの陰が、リュカの元へと近付いて行く。
「コラコラ…子供が起きている様な時間じゃないぞ!」
「知ってるんでしょ…私は子供じゃありません」
保温用のポットに甘いココアを入れ用意しておいたリュカは、一緒に用意したカップに注ぐと、愛娘のマリーに手渡す。
「ありがとうお父さん………うん、暖かい…」

「ふふふ…心はともかく、身体は子供なのだから睡眠は必要だよ……………つーかやりすぎだよ!身体は子供なんだからね!7歳児だよ!エッチは控えなさい…」
「な、何よ急に…何を根拠に!?」
「臭うよ…さっきまで頑張ってたんだろ…分かるよ、臭いで!」
「ちょ、セクハラよ!」
「違うよ…娘に対してだからセクハラじゃないよ」
「もう…ズルイ…」


暫くはお互い沈黙していた…
マリーのココアを飲む音だけが聞こえる…

「ねぇお父さん…何時頃気が付いたの?」
先に口を開いたのはマリー…
この質問の為に、愛しい(ウルフ)のベットから抜け出してきたのだから。
「初めて出会ったその時からだよ」

「…それは嘘よ!あり得ないもの!だって…」
リュカとマリーの出会いは、ビアンカがマリーを出産した時だ。
つまりはマリーは生まれたての赤ん坊…
ボロを出す余裕すらなかったはず…

「嘘じゃないよ…だってあの時『今すぐ私の処女を奪って!』って、いきなり僕に向けて叫んだでしょ!?」
「え゛!?お父さん…赤ん坊の言葉が分かるの!?」
「いや…普通は分からない。リューラやリューノの時は、何言ってるのか分からなかった…でもマリーの言葉は分かったんだ!その後ティミーに向けて『きゃー超私好みの男の子!今すぐ喰べちゃいたい!』って言ってたし…」

「う、迂闊だったわ…お父さんにそんなチート能力があったなんて…ズルイ…」
「チート?」
「い、いえ…こっちの話です………では何で今まで気付かないフリをしていたの?」
「え?気付かないフリ!?…いやむしろ『気付いてるよ』ってアピールしてたじゃん!気付かなかった?」

「………それって、子守歌に『ギザギザハートの子守歌』を歌ったり『ヤホーで検索する』って言ったりの事?」
「そうだよ!お前以外には通じないだろ?」
「た、単なる電波かと思ってたわ…」
「酷っ!」
夜中の海に父娘の笑い声が響き渡る。


「そっか…私が勝手にバレない様努力しちゃったんだ…」
「転生者であろうと無かろうと、お前は僕の掛け替えのない娘なのだから、気にする事なかったのに…」
リュカがマリーを優しく抱き締める…
マリーもしがみつく様に抱き付き、父の温もりを感じる。

「でも教えて欲しい事が1つある…この世界はドラクエなのか?…てっきりエンディングを迎えたと思っていたのだが…まだ続くのかな?」
「え?お父さん、ドラクエ3知らないの!?」
「3!?…あれ、おかしいな…僕はドラクエ5に転生したと思ってたんだが…?」

「うそ!?お父さんはアノ国民的超大作ゲーム『ドラゴンクエスト』をプレイした事ないの!?」
「無い!兄貴や友達のプレイを横で見た事は数度あるけど……ゲーム画面見つめるより、女の子の瞳を見つめてた方が楽しいし!」
「お父さんは転生前から、そんな性格だったのね…」
「当然!生まれ変わったって性格までは変わらないよぉ!」

「うふふ…お父さんらしい………じゃぁ、簡単に説明するわね。今居る世界は『ドラクエ3』の世界なの。で、お父さんが生まれた世界…つまりグランバニアがある世界は『ドラクエ5』ね!そしてドラクエ5は、私が生まれる前…ミルドラースを倒した所でエンディングしたのよ!」
「へー…何で『5』の後に『3』になったんだ?普通、逆じゃね?っか『4』は?」
「そんなの分からないわよ、私にだって!…本来、『3』にはお父さんも私も登場しないんだからね!イレギュラーなのよ…」
「ふ~ん…」
興味なさげに聞き流すリュカ…

「…興味ないみたいね、お父さん…」
「どっちかつーとね!…今、僕が興味を持ってるのは、我が子の色恋事だからねぇ…見てて面白い!」
「我が子の…って事は、私のも含まれるんでしょ?…面と向かって言わないでほしいわね…」
リュカは嬉しそうに微笑み、マリーに視線を合わせる。

「ウルフの事好き?」
「うん…私初めて人を好きになった!」
「幸せ?」
「すごく幸せ…人を好きになるって、凄いね!こんなに幸せな気持ちになれるんだ!」

暫くの間二人は見つめ合い、そして微笑んだ。
「良い男に巡り会えたな!心はお前の方がお姉さんなんだから…苛めるなよ」
「その台詞、そっくり返しますぅ!お父さんこそ、お兄ちゃんみたいにからかわないでよ…」

「…約束は出来ない…だってティミーとウルフって、似てる所があるんだもん!」
「否定はしないけど、お兄ちゃんより女の扱いに慣れてるわよ」
「逆に困るなぁ…君達まだ若すぎるんだからね!お前7歳なんだよ、まだ!」
「うふふ…気を付けま~す!」


気付くと水平線の彼方から、白けた光が差し込んでくる…
「じゃぁ…私そろそろ戻ります。起きて隣に私が居ないと、ダーリンが寂しがるから」
「ウルフに『昨晩はベットを抜け出して何処に行ってたの!?』って問いつめられたら『お兄ちゃんとエッチしてました♥』って言うんだぞ!」
「あはははは、バ~カ!『お父さんに押し倒されたの!』って、泣きながら言うわよ」
父娘と言うより、仲の良い友人の様に笑い合う二人…

一頻り笑い船室へ戻るマリー…
しかし途中で止まり、リュカに向き直り心から告げる。
「お父さん!私のお父さんになってくれて、本当にありがとう!私、お父さんの事が大好きです!」
それだけ言うと足早に船室へ戻って行く。

残されたリュカは、朝日を眺めながらココアを飲む…
「今日も良い天気になりそうだ…朝日が強烈に目に染みるよ」
そしてリュカも自室へと帰って行く。
右腕で目を擦り、妻の待つベットへと…



 
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