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ツバサ -DECADE CHRoNiCLE《ディケイドクロニクル》-

作者:地水
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第15話:協力者とコクハク

 
前書き
 苦戦するネオライダー達の戦い
疑似なる不死の生物を倒すべく、共に戦うことにした二つの力。
願うは、正しき正義のために。 

 
 四人の仮面ライダーによって改造実験体・トライアルシリーズを打倒した同じ頃。
ケタロス相手にクウガは対等に戦っていた。
ドラゴンロッドによるリーチの差によってケタロスを翻弄している。

「おりゃああ!!」

「ぐっ!?」

クウガの披露している棒術を食らっていくケタロス。
彼の持っているゼクトクナイガン・クナイモードでは太刀打ちしづらいだろう。

「お前、一体何者だ!」

「仮面ライダー……クウガ!」

「クウガだと……!?」

クウガのドラゴンロッドを受けながら、驚愕の表情を浮かべるケタロス。
何故そんなに驚いているのか、理由は分からないクウガだが、攻撃の手を緩めるわけにはいかない。

「くらえっ!!」

「クロックアップ!」

【CLOCK UP】

ケタロスはクロックアップを発動し、クウガの振り下ろしたドラゴンロッドを避ける。
その超スピードを乗せた斬撃をクウガに叩き込む。

「どっせぇい!!」

「ぐっ……クロックアップか!」

「そうだ、クロックアップに対応できるライダーなど、同じクロックアップを有するライダーしか対抗できない!」

尋常ならざる超スピードで周囲を駆け巡りながらクウガへ攻撃を仕掛けていくケタロス。
クウガは傷つきながら吹っ飛ばされていくが、その中で"とある打開策"を見つける。

「だったら、これならどうだ……超変身!」

クウガは超感覚を宿したペガサスフォームに変身、ドラゴンロッドをペガサスボーガンへと変えるとその場に立ち止まり、感覚を研ぎ澄ます。
クロックアップによる超速度を以て何処をどうやって動き回っているか、常人より強化された視力と聴覚によって周囲を探る。
右……左……前方……後方……。
周囲を攪乱しながら、動き回るケタロスの行動を銃尻のトリガーレバーを引きながら見定める……。

―――先に動いたのは、ケタロスだった。

ゼクトクナイガンを逆手に持ち、クロックアップの速度で勢いよく飛びあがり、クウガの背後目掛けて目掛けて飛び掛かる。
"このクロックアップは見抜けない"、そう決めつけていたケタロスは大きく勝負に出た。
高く振り上げたゼクトクナイガンをクウガ目掛けて振り下ろそうとする……。

「―――そこだ!」

「なに!?」

その瞬間、クウガは背後を振り向き、ペガサスボウガンをケタロスに狙っていた。
引き金を引き、銃口から圧縮された空気弾が放たれ、ケタロスを捉える。
不可視の鋭い一撃を食らったケタロスは火花を散らしながら、地面に倒れ伏す。
クウガはケタロスを倒したのを見て、ほっと一息をつく。

「士から聞いていた話でクロックアップに対抗する手段聞いていてよかった……まさか緑のクウガがそんなことできるとは」

この世界に来る前、【カブトの世界】にてクロックアップを使ってくるワームに遭遇した時の万が一の対処法として士から聞かされたことがあった。
その話がまさかここで実践するとはクウガは思ってもみなかった。
そこへ、トライアルシリーズを倒した他のライダー4人が合流を果たし、心配したナイトが声をかける。

「ユウスケさん!大丈夫ですか!」

「ああ、大丈夫だ。なんとか倒したぜ」

「……仮面ライダークウガ、初めて出会ったがすごい実力の持ち主だ」

ギャレンは自分達が対応できなかったケタロスを相手にしてなおかつ倒したことに感服していた。
クウガはギャレンの放った言葉に疑問を持つが、それを訊ねる前に"ある人物"が現れる。

紫の髪と紫色の瞳を持った黒服の男……紫電斬刃だ。

「手ひどくやられたようだな。武田」

「お前は……紫電!」

「撤退するぞ」

そう言いながら、"武田"と呼んだケタロスを担ぎ、この場から去ろうとする。
身構えるナイト達だが、そんな彼らに気づいた斬刃は視線だけ向けてこう告げる。

「ほう、あの時出会った子供がいっちょ面してライダーになるとはな」

「……!お前は……」

「ああ、この姿じゃ初めてか?覚えているか」

警戒するナイトへ、斬刃は顔の一部分だけスコルピオワームとしての顔を浮かび上がらせる。
あの時あった蠍の怪人だと気づいたナイトは、息を呑む。
そんな彼の反応を見て笑う斬刃は、ナイト達へ向けて言い放った。

「安心しろ。今回はコイツを回収しに来ただけだ。白井虎太郎はお前達にくれてやる」

「仲間を助けに来たのか……?」

「んー、まあそんなところだ。ああ、追撃は推奨しないぜ……俺も一応、ライダーなんだからな」

レンゲルの質問にあっさりと答えながら、斬刃は空いた手に握っていたサソードヤイバーを見せる。
もし五人が襲ってきた場合、簡単に対処できる顕れなんだろう。
誰もが動かない今、手を出さない事を判断した斬刃はケタロスを連れたまま立ち去っていく。

その後、変身を解いたナイト達五人、素顔を露わにした橘が呟く。

「あれがネオライダー……侮れないな」

「俺達の以外にライダーへ変身できる奴らがいるなんて……」

クロックアップという驚異的な能力を秘めたライダーシステムの使い手に不安そうな表情を睦月は浮かべる。
そこへ、無事になって物陰から出てきた虎太郎が一同に歩み寄ってくる。

「いやー助かったよー!一時はどうなるかと思ったよ!」

「あんたが虎太郎さんなのか」

「うん、僕は白井虎太郎。サイエンスライターで仮面ライダーと共に戦った男さ」

伺ってきたユウスケに対して虎太郎は自己紹介を告げる。
目的の人物に出会えてようやく一安心するユウスケとファイだが、小狼が申し訳なさそうに虎太郎へ頭を下げる。

「虎太郎さん。あなたの家をネオライダーから守れなくてすいません……」

「ああ、それに関しては残念だと思うけど、大丈夫。必要なものはすでに別の場所へ移してあるし、あそこに置いてあったものはいずれ処分するつもりだったから。それにほら、ここにちゃんとデータあるよ」

手に持っていたカバンを一同に見せつける。
虎太郎自身が気にしてないのではればそれでいい……。
すると、睦月が小狼達が何者なのか訊ねてくる。

「俺達が来る前に虎太郎さんを守ってくれてありがとう。だが、そもそも君達は一体何者なんだ?」

「おれは小狼です」

「ファイ・D・フローライト」

「小野寺ユウスケ、クウガです」

小狼達は橘達にこれまでの経緯を話した。
自分達が別の世界からやってきたこと、自分達の目的である羽根の回収の事、それらの事情に知っていそうな人たちの事について……。
ひとまず聞き終えた橘達は驚愕の表情を浮かべていた。

「驚いたよ、まさか他の世界もあって、そこにも仮面ライダーが存在するなんて!!」

「なるほど……つまり、お前達の目的はその羽根を探して手に入れる事ということか」

「はい、その羽根は大切な人のものなんです」

橘の質問に小狼は答える。
その答えを聞いて目を細める橘……睦月が代わりに入れ替わるように答える。

「すまない、俺達はそんな羽根の事については耳に入れてない」

「うーん、睦月君達も知らないってことか」

「力になれなくてすみません」

睦月は申し訳なさそうに頭を下げる。
そこへ橘が三人に向けてブレイドの動向の事を告げた。

「だが、剣崎一真……仮面ライダーブレイドについてなら俺達は知っている」

「仮面ライダーブレイドが今何をしているか知っているんですか?」

「ああ、アイツは今、俺達とは別行動を取っている。ネオライダーについて調べているからだ」

「ネオライダーの事を?」

「詳しいことは未確定のため話せないが……どうにもネオライダーに俺達BOARDの技術が転用されているのは確かだ」

ユウスケの質問を答えるように橘が語るには、小狼達が戦ったトライアルシリーズはかつて人類基盤研究所・BOARDに所属していたとある科学者がアンデットの細胞を駆使して作り上げた改造実験体の怪人という。
そのトライアルシリーズの技術が何らかの方法で手に入れ、戦力として利用されている。
"これ以上アンデットの力を悪用されるわけにはいかない"、"これが自分達がネオライダーと戦っている理由だ"、と橘は語った。

「そうだったんですか……」

「あなたたちもネオライダーと戦うってことは、俺達の仲間のようなものですね」

「もし羽根について何らかの情報を手に入れたら、お前達に教えよう」

「僕も力になるよ!仮面ライダーの事については任せてよ!」

小狼に橘、睦月、虎太郎の順で話しかけていく。
一行はこの世界における"初めての協力者"を見つけたのだった。


―――――


小狼達がネオライダーとの闘いを終えた頃。
サクラはハルと共に光写真館への帰路についていた。

「あっと言う間に時間過ぎていったね」

「そうですね。いっぱい喋っちゃいました」

「モコナもいっぱい喋ったー!喋ったー!」

モコナは嬉しそうにぴょんぴょんと飛び回る。
その光景で笑みを浮かべながら、ハルはサクラに対してとあることを言う。

「それにしてもサクラちゃんにも大切な人っていたんだ?」

「え?」

「ほら、話に出てきた小狼君だっけ?その時語っていたサクラちゃんの顔素敵だったなーと」

「ええっと……!」

小狼の名前を出されてサクラは戸惑う。
確かに、小狼の事は大切な人だと思っている。
これまでの旅の中で一緒に過ごしてきて、いつの間にか大切な存在になっていた。

「た、確かに小狼君の事は大切です……大切ですけど!」

「ねえねえ、その彼に告白とかしたの?あなたの大好きだって!」

「こ、こくはっ……」

ハルの言葉に顏が真っ赤になり、口をパクパクさせながら硬直するサクラ。

―――正直な事を言えば、(小狼)の事は好きだ。大好きだ。
過去の記憶が幾分か揃っている不確かな状態だが、それを差し引いても大好きだ。
この気持ちに偽りなどない……今まではなるべく気づかないようにはしていたが、それでも自覚してしまったのだ。
小狼の事が、好きなのだ……と。

だが、サクラは恐れている。
もし記憶の失う前の(サクラ)誰かの事を好きだったら(・・・・・・・・・・・)……。
その事が怖くて怖くて仕方がなかった……。
もし、記憶を失う前の自分が別の人を好きになっていたら。
もし、小狼が好きな人が自分ではなかったとしたら。
その事がたまらず怖かった……。
だから今は言えない、この気持ちを彼に伝えてはいけない。

きっと伝えると、今の関係が壊れてしまうから…。

落ち着きを取り戻したサクラは唇をかみしめ、答えを楽しみに待っているハルに告げる。

「―――言えませんよ、怖くて……」

「サクラちゃん……?」

「怖いんです……もし、この気持ちを伝えたら、きっと何かが壊れてしまうんじゃないかって。きっと、元に戻れなくなるんじゃないかって」

「………」

「それだったら、私は言わずにずっとその関係でいたほうがいいです……」

サクラは俯いて、か細い声でハルに言った。
モコナはサクラの様子を見て悲しそうな表情を浮かべ、声をかけようとする……。
―――だがその前に、そんなサクラを、ハルは優しく抱きしめた。

「……ごめんね、そんなにサクラちゃんが思い悩んでいたなんて」

「ハルさん?」

「だけど、ずっと言わないってのはやめてね。今じゃなくてもいい、けどいつかは勇気を振り絞ってその言葉を伝えてね」

「勇気を振り絞って……」

「うん、そう。その気持ちを言わないと、死ぬほど一生後悔すると思うから……」

ハルの呟いた言葉がサクラを抱きしめている力を強くする。
その気持ちをモコナは読み取った。

「ハルもサクラも、大切な人を思うのは一緒なんだよね…」

大切な人を思う彼女たちの気持ち。
その心は、彼女達の内に秘めることにした。


―――――


その後、サクラを送り届けたハルは一人暗くなった帰り道を歩いていた。
そんな彼女に声をかける者がいた。

『ハルちゃ~ん……いいのぉ?弱み晒しちゃって?』

「別にいいわよ。あの子は悪い子じゃないから」

何処にも人影がないのにもかかわらず、ハルは当然のごとくその声の主に対していつものように答えた。

『別にハルちゃんがいいなら別にいいけどさ……彼女、ディケイドの仲間ってこと忘れていないかしら?』

「……ディケイド、か」

ハルはそう言ってあの日の事を思い出す。
―――それはディケイドこと士達と、小狼達が初めて邂逅したあの時。
謎の声の主と共に、その光景を見ていたのだった。

「少なくとも、サクラちゃんは悪い子じゃないのは確かかな」

『んもう、私情なんかいれちゃって!そんなんじゃ見極められるのも見極められないわよ!』

「大丈夫、いざというときには倒すから……世界の破壊者、なんて触れ込みだけど、どっちが怖いか教えてやろうかしら」

謎の声の主と共にハルは去っていく。
その後ろ姿は、別の異形の姿を覗かせながら……。 
 

 
後書き
 どうも地水です、なんだこの乙女回路!!←

前回に引き続き、ネオライダーケタロス戦。
参考にしたのはディケイド本編のDクウガVSワーム戦、クロックアップに対抗する戦闘としてはとてもいいですね。のちのジオウカブト編でも未来予知や高速移動でいろいろやってますし。

そんでもって再登場、紫電斬刃。
実は尚樹に続いて2話から登場しているネオライダーの一人で、今回小狼達にとっては再会した敵の一人です。

いつぞやの渡と同じく、行方が分かってない剣崎。一体彼はどこで何をしているのやら……。

レジェンドライダーを余韻を吹っ飛ばすかのような女子組の甘いトーク!本当にこんなのよくかけたな!?
実際のところ、サクラの小狼に対する感情についてはアニメや原作漫画だと割と少なかったりします。なのでこのディケクロ本編ではここら辺で明確に入れておきました(原作だとためにためてあの言葉が出てくるのでそれはそれで好きですが)
ドラマCDだと「好き」って単語を心の中とはいえ言ってたりしてますね、サクラちゃん。

お前は誰だ!?(アマゾ〇ズ風)
ハルが一般人らしからぬただものではない人物だと判明。
解説しておくと「……あれが、ディケイド」って言っている人がハルです。
謎の声、いったい誰なんだ…。


次回、新ライダー登場! 
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