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イベリス

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第三十六話 恐ろしい強さその九

「野球は阪神だよ」
「部長さん阪神ファンですか」
「そうだよ」
 笑顔での返事だった。
「身体に黒と黄色の血が流れているよ」
「赤い血じゃなくて」
「うん、赤い血も流れているけれど」
 それと共にというのだ。
「その血も流れているんだ」
「そうなんですね」
「だから野球漫画でもね」
 こちらでもというのだ。
「阪神が主人公であって欲しいね」
「そうなんですね」
「昔の野球漫画って巨人ばかりだったけれどね」
「今じゃないですね」
「大抵架空のチームだからね」 
 プロ野球を舞台にしてもだ。
「けれど昭和の頃は」
「巨人ばかりですか」
「それだけで嫌になるよね」
「巨人って嫌なチームですよね」
「癌細胞だからね」 
 部長は言い切った。
「日本の」
「まさにそうですよね」
「あんなチームが存在すること自体がね」
「日本のおかしなところですね」
「悪いことばかりしてるのに」
「それでずっと人気があったんですよね」
「昔の子供はね」
 巨人が主人公の漫画ばかり読んでいてだ。
「テレビでも巨人の試合ばかりだったし」
「巨人ファンばかりだったんですね」
「言うならあれだよ」
「あれっていいますと」
「北朝鮮と一緒だよ」
「あの独裁国家ですね」
「巨人って北朝鮮そっくりだね」 
 その究極の独裁国家と、というのだ。
「そうだよね」
「確かにそうですね」 
 咲もその通りだと頷いた。
「巨人って」
「オーナーが将軍様でね」
「悪事ばかりして」
「もうあのチームはね」
「日本の北朝鮮ですね」
「お金持ってるけれど」
 北朝鮮にはないが、というのだ。
「けれどね」
「やってることは同じですね」
「それでその北朝鮮とね」
 まさにというのだ。
「そっくりで」
「巨人を好きなのは」
「北朝鮮を好きなのと同じだよ」 
 そのことと、というのだ。
「本当にね」
「洗脳されてたんですね、つまりは」
「昔の子供はね」
「それは大変なことですね」
「子供は何も知らないから」 
 まだ何もだ、それこそ子供は白紙の状態である。それを完全なニュートラルか最初から善であるかはそれぞれの見解の違いであろうか。
「だから巨人をいいチームだと言われると」
「鵜呑みにするんですね」
「漫画でそうで」
 子供が皆読むそれがだ。
「それでテレビでもね」
「その漫画がアニメにもなっていて」
「しかも実際の試合もね」
「巨人ばかりだから」
「皆巨人ファンになったんだよ」
「そうだったんですね」
「巨人軍、大鵬、卵焼き」
 部長は昭和三十年代の言葉を出した、後の二つは兎も角最初は何と邪悪でおぞましい単語であろうか。 
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