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第三章

「行きます」
「そうか、じゃあちょっと一緒に行っていいかい?」
「私でよかったら」
「おいらは行くあてがないからな」 
 女に軽い調子で述べた。
「だからな」
「それで、ですか」
「今から行こうな」
 そのすぐそこまでとだ、女に言って。
 福助を連れたまま並んで歩いた、すると暫くしてだった。
 女は何処ともなく姿を消した、すると福助はやはりという顔になって驚いた。だが源内は明るく笑って言った。
「言われてる通りだな」
「あの、驚かないですか」
「面白いじゃねえか」 
 こう福助に返した。
「成程、実際にそうなんだな」
「あれ多分生きている人間じゃないですよ」
「絶対にそうだな」
 返事は明るい、それもかなり。
「あれは」
「そうですよね」
「幽霊だろうな」
 源内はこう考えた。
「あれは」
「そうですか」
「何で幽霊になったかはわからねえが」
 それでもというのだ。
「まあここに出るってことでな」
「それがわかったので」
「よかったぜ、じゃあ帰って寝るか」
「旦那様は幽霊が怖くないですか」
「ああ、全くな」
 これが源内の返事だった、もう二人は法恩寺の前から去って家への帰り道についている。共に夜道を歩きながら話している。
「身体があるかないかだろ」
「身体がですか」
「そうだ、幽霊は身体から魂が出たもんだ」
「それが幽霊ですか」
「身体に魂があると人でな」
「出ると幽霊ですか」
「つまり幽霊は人なんだよ」
 こう福助に話した。
「身体があるかないかでな」
「その違いで」
「実はな」
「あまり変わらないんですね」
「というか全くな」
「身体の違いですか」
「身体があったら怖い奴は怖くてな」
 それでというのだ。
「怖くない奴はな」
「怖くないですか」
「そうさ、それで実際にすうって消えてな」
 今度はこのことを話した。
「成程その通りだって思った次第だ」
「それで終わりですか」
「ああ、面白いことだな」
「そうですか」
「おいらはそう思うぜ、じゃあ戻ろうな」
 こう言ってだった。 
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