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イベリス

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第三十五話 テストの結果を受けてその五

「それしかないでしょ」
「そういうことか」
「まあ愚痴は一人で飲みながら言ってね」
「聞くことはしないか」
「聞いても仕方ないでしょ」
 ここでもあっさりと返した。
「そうでしょ」
「そう言われるとな」
「だからよ」
 それでというのだ。
「そうするから」
「そうか、じゃあ言うな」
 その愚痴をというのだ。
「今から」
「それじゃあね」
「全く。どういうことなんだ」
「どういうこともこういうこともなくてね」
「転勤は仕方ないか」
「ええ、じゃあ頑張ってね」
 その仕事をというのだ。
「そうしてね」
「そうするしかないか」
「埼玉が嫌でもね」
 現実としてはそうだというのだ。
「やっぱりね」
「行く」
「それしかないでしょ」
「ああ、しかし往復するだけだ」
 父は憮然として述べた。
「家とな」
「埼玉には寄り道しないのね」
「寄り道するところなんかないだろ」
 これが父の返答だった。
「所沢は球場あるけれどな」
「あそこは西武だからね」
「パリーグだからな」
 だからだというのだ。
「ヤクルトファンにとっては意味がない」
「そうよね」
「日本シリーズか交流戦でぶつからない限りはな」
「行くことないわね」
「埼玉アリーナあるわよ」
 咲は平然とした言った。
「それがね」
「何だ、そこは」
「だからイベントやる場所よ」 
 自分に問うた父にすぐに答えた。
「アニメとかの」
「そんな場所があるんだな」
「横浜アリーナと一緒よ、特撮のロケ地でもあるのよ」
「そんな場所もあるんだな」
「アニメグッズ売ってるお店もあるし」
 埼玉にはというのだ。
「だからね」
「咲は別に埼玉でもいいんだな」
「何処でもアニメ観られるわよ」
 こうも言うのだった。
「テレビそれにパソコンがあれば」
「それかスマートフォンか」
「そういうのがあったらね」
 それでというのだ。
「何処でも観られるし」
「別にいいんだな」
「埼玉でもね」
「咲はそうか」
「というか埼玉県民が駄目とか」
「そういうのもないか」
「別に鬼でもないでしょ」
 こう父に言うのだった。
「酒呑童子とか」
「酒呑童子は京都でしょ」
 母が言ってきた。 
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