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遊戯王GX-音速の機械戦士-

作者:蓮夜
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―遊撃、巨大戦艦―

 万丈目に負けた結果、明日香は光の結社に入るようになんらかの洗脳のようなことをされた。
万丈目と明日香とのデュエルの結果、そして今オベリスク・ブルー寮を襲っている異常自体を説明するには、わけがわからないが、この説明が一番わかりやすく、さらにはしっくりときてしまう。

 オベリスク・ブルー寮から命からがら逃げだした俺と三沢は、ラー・イエロー寮へと逃げ延びることに成功した。
ラー・イエロー寮長である樺山先生には、事実をありのままに……伝えたかったが、ありのままに伝えすぎると明らかに俺と三沢が変な人、もしくは樺山先生をからかっているようになるために、かいつまんで事情を説明した。

 幸いなことに、樺山先生は「空いている部屋が二つあるから、それぞれ好きなように使いなさい」と、快く俺たちを迎え入れてくれ、宿無しになることだけは助かった。

 おっつけ、オベリスク・ブルー寮からの生き残りは、だいたいはこの寮に行き着くだろうが……そもそも、他に生き残りがいるかどうかはわからないが。

 ああいや、少なくとも吹雪さんは無事であり、俺たちとほぼ時を同じくして脱出を果たした……が、吹雪さんはラー・イエロー寮には来ず、明日香のことを探るためにもオベリスク・ブルー女子寮に身を寄せた。
……そんなことが出来るのは、おそらくこのデュエル・アカデミアであの人だけだろう。

 俺は三沢と吹雪さん、俺以外のオベリスク・ブルー寮からの生き残りが来ることを待っていたが……ついぞ、来ることは無かった。
もしかしたらオシリス・レッド寮に行ったかもしれない、と考えるが、オベリスク・ブルー寮からオシリス・レッド寮に行く者は、生き残った俺たち三人を除いて他にはいないだろうということは、俺にもすぐに考えがついた。

 今日、この学園に来るはずだった転校生とやらも、顔も知らないために、もはやどうすることも出来やしない。

 よって、オベリスク・ブルーの生徒は現在確認出来る限りは……俺と三沢、吹雪さん以外、あの光の結社を相手に全滅したことになった。
それも仕方のないことではあり、相手はこの学園で五指に入る万丈目と明日香、さらには五階堂まで揃え、負けた人間は次々と光の結社に入っていく……そんなバイオハザードのような状況から、逃げ延びることが出来ただけでも運が良かったということか。

 結局、万丈目と五階堂はいきなりどうしたのか、光の結社とはなんなのか……色々なことはわからないまま、学園は夜を迎えた。

 ――だけどこのまま、泣き寝入りするのは性分じゃない。

 ラー・イエロー寮を三沢に見つからないように抜けだし……これが一番の難題だったが……今、俺がいるのはオベリスク・ブルー寮へと向かう道だった。

 光の結社の構成員となった人物に負けてしまうと、理屈はともかくデュエルで負けた者も光の結社に入ってしまうということは分かった。
ならば逆を言えば、光の結社の構成員以外の人物である俺が、光の結社の構成員をデュエルで倒せば、その人物は元に戻るのではないか、と俺は考えた。

 当てずっぽうな仮説にも程があるが……俺に考えられるのはそれだけであり、俺が明日香たちを救うためには、もうその考えにすがるしかなかった……そういうことで、俺はオベリスク・ブルー寮へと向かっていた。

「……誰だ!?」

 もう既に夜も深いために視界も悪く、俺の少し前に人が立っていることは分かったのだが、あいにく誰だか顔は見えない。
だが、その白い制服ははっきりと見える……!

「流石は斎王様ズラ。黒崎遊矢は本当にここに来る運命だったズラ」

 白い人影が向こうから歩いて来て、暗闇からその姿を全て現した……が、姿を現すまでもなく、オベリスク・ブルーの生徒である俺には誰だかわかる。
いや、他のどの生徒でもこの声を聞けば分かったかもしれない……彼は一応、それほどの有名人であった。

「銀流星……!」

 シューティングゲーム界の若き最年少チャンプ、銀流星。
俺たちより一つ上の現在三年生であり、デュエル・アカデミアに入る前に既にシューティングゲーム界の世界大会で優勝した男である。
この学園には「次はカードゲーム界を制覇するズラ」として入学したらしいが、オベリスク・ブルー寮に入っている時点でその実力は折り紙付きだと分かる。

「その通りズラ。そして、遊矢。お前は俺とデュエルしてもらうズラ!」

「なっ……お前とデュエルしてる暇はない! どけ!」

 確かに、俺の目的は明日香とのデュエルであった為に、調整済みのデッキとデュエルディスクは持ってきてはいるが、今銀とデュエルしている暇も気もない。

「お前を倒して光の結社に入れれば、斎王様がプロデュエリストにしてくれるズラ! 俺とデュエルするズラ!」

「……ああもう、だったら俺が勝ったらそこを通してもらう!」

 こうなればさっさと銀をデュエルで倒した方が速く、倒した後に銀がどうなるかで俺の仮説が実証されるのだから、あながち銀とのこのデュエルは無駄ではないのかも知れない、と考えておく。

『デュエル!』

遊矢LP4000
銀LP4000

「俺の先攻! ドロー!」

 俺のデュエルディスクには珍しく『先攻』と表示されたため、デッキからカードをドローするが、あまり攻めに向いた手札ではない……まあ矛盾はしているが、どちらにせよ先攻なので攻撃は出来ないが。

「俺は《ターボ・シンクロン》を守備表示で召喚!」

ターボ・シンクロン
ATK100
DEF500

 緑色のF1カーのようなシンクロンを守備表示で召喚するが、俺の手札に特殊召喚出来るモンスターはおらず、チューニングは不可能だ。

「カードを一枚伏せ、ターンエンドだ」

「俺のターンズラ。ドロー!」

 いつもならば、ここで相手のデッキの分析から入るところだが……銀のデッキは知っている。
銀が優勝したシューティングゲームを模したデッキ、【巨大戦艦】……【グラディウス】とも呼ばれることのあるデッキである。

「俺のフィールドにモンスターがいない時、このカードは特殊召喚出来るズラ! 《巨大戦艦 アサルト・コア》を特殊召喚!」

巨大戦艦 アサルト・コア
ATK1300
DEF2000

 《巨大戦艦》たちの枠組みには囚われない、唯一の効果を持つ巨大戦艦。
ステータス上の攻撃力は低いが、ターボ・シンクロンを戦闘破壊するには充分だ。

「更に巨大戦艦 アサルト・コアをリリースし、《巨大戦艦 ビッグ・コア》をアドバンス召喚するズラ!」

巨大戦艦 ビッグ・コア
ATK2300
DEF1100

 弾を防ぐ遮蔽版と、大きな青いコアが特徴の巨大戦艦……ターボ・シンクロンをどれだけオーバキルする気だ。

「効果によりビッグ・コアには三つのカウンターが乗るズラ。そしてバトル! ビッグ・コアでターボ・シンクロンを攻撃! ソーラーアサルト!」

 ビッグ・コアから放たれたビーム相手に、質量の違いもあって抵抗出来ずに消し飛ぶターボ・シンクロン……すまないが、防御カードは用意していなかった。

「カードを一枚伏せ、ターンエンドズラ!」

「俺のターン、ドロー!
……《リミット・リバース》を発動! 墓地から攻撃力1000以下のモンスターを特殊召喚する! 蘇れ、《ターボ・シンクロン》!」

 防御カードは用意していなかったが、蘇生カードならば用意はしてあったため、緑色のF1カーが再びフィールドに舞い戻る。

「更に《ハウリング・ウォリアー》を召喚!」

 新たに現れた、音を響かせる機械戦士のレベルは3のため、このままシンクロ召喚を行っても《アームズ・エイド》しか出来ず、シンクロ召喚したところで何の意味もない。
だが、召喚したことでハウリング・ウォリアーの効果が発動する!

「ハウリング・ウォリアーが召喚・特殊召喚に成功した時、俺のフィールドのモンスターをレベル3に出来る! 響け、ハウリング・ウォリアー!」

 ハウリング・ウォリアーからキィィィィンという、大多数の人間が嫌いであろう高周波が発せられ、ターボ・シンクロンのレベルが3となる。

「行くぞ! レベル3の《ハウリング・ウォリアー》と、レベル3となった《ターボ・シンクロン》をチューニング!」

 ハウリング・ウォリアーの高周波のおかげで、シンクロ召喚の調律が狂ってしまったため、合計レベルは6。

「集いし絆が更なる力を紡ぎだす。光さす道となれ! シンクロ召喚! 轟け、《ターボ・ウォリアー》!」

ターボ・ウォリアー
ATK2500
DEF1500

 ターボ・シンクロンを緑色から赤色にし、それを更に巨大化したようなモンスターである、ターボ・ウォリアーがシンクロ召喚される。

「バトル! ターボ・ウォリアーでビッグ・コアに攻撃! アクセル・スラッシュ!」

 自身よりもかなり大きいビッグ・コアに対し、ターボ・ウォリアーは果敢にも中心部のコアへと攻撃を仕掛けた。
だが、三つの遮蔽板のうちの一つがターボ・ウォリアーの攻撃を防ぎ、ビッグ・コアは無傷で終わった。

「ビッグ・コアはカウンターを一つ取り除くことで、戦闘による破壊を無効にするズラ!」

銀LP4000→3800

 擬似的な戦闘破壊耐性であろうとも、流石に戦闘ダメージまでは防げず、その戦闘破壊耐性もカウンターという制限付きだ。

「ターンエンドだ」

「俺のターン、ドローズラ!」

 ……剣山の時も思ったが、ドローの後に口癖の語尾をつけるとなんだか固有名詞みたいに聞こえるな。

「俺は《ボスラッシュ》を発動するズラ! 更にバトル! ビッグ・コアでターボ・ウォリアーに攻撃! ソーラーアサルト!」

「……迎撃しろ、アクセル・スラッシュ!」

 ビッグ・コアを自爆特攻させて、無理やり今しがた発動させたボスラッシュの効果を発動するつもりか……いや、まだビッグ・コアにはカウンターが残っているし、わざわざそんなことをしても意味はないだろう。
自爆特攻に自壊……そして巨大戦艦の種族を照らし合わせて考えた結果、俺の頭に一枚のカードが思いつき、それと同時に銀がそのカードをかざしていた。

「ダメージステップに速攻魔法《リミッター解除》! ビッグ・コアの攻撃力を二倍にするズラ!」

 ビッグ・コアの出力がまさにリミッター解除、といった様子で上がっていき、迎撃しようとしたターボ・ウォリアーをそのビームで焼ききった。

「ぐっ……!」

遊矢LP4000→1900

 ライフの半分と少しという、デュエルの前半では致命的となり得るダメージを負ってしまい、更にターボ・ウォリアーも戦闘破壊されてしまった。

 速攻魔法《リミッター解除》のデメリット効果により、ビッグ・コアも戦闘破壊されるために相討ち……と行きたいところだが、そんなことは無い。

「ビッグ・コアはリミッター解除のデメリット効果によって破壊されるズラ。そしてエンドフェイズ、《ボスラッシュ》が起動するズラ!」

 銀のデッキの元となったシューティングゲームは比較的有名なために、俺もあまり上手くはないがやったことはある。
《ボスラッシュ》とは、そのシューティングゲームのモードの一つであり、ボスである巨大戦艦が次々と現れてくるという、一番難しいモード……!

「伏せてあった《サイバー・サモン・ブラスター》を発動し、続いて《ボスラッシュ》の効果ズラ! 巨大戦艦が破壊されたターンのエンドフェイズ時、デッキから巨大戦艦を特殊召喚するズラ! 発進せよ、《巨大戦艦 カバード・コア》!」

巨大戦艦 カバード・コア
ATK2500
DEF800

 円形のボディーとその本体を覆うようにカバーが装備されており、中心部のコアを守っている巨大戦艦 カバード・コアが特殊召喚される……コレこそが、《ボスラッシュ》の効果である。
更に、銀のすぐ近くに置かれた砲台……サイバー・サモン・ブラスターのレーザーが煌めき、俺の肩に命中した。

遊矢LP1900→1600

「サイバー・サモン・ブラスターは、機械族モンスターが特殊召喚に成功した時、相手ライフに300ポイントのダメージを与えるズラ! ターンエンドズラ!」

「俺のターン、ドロー!」

 たかが300ポイントなどと侮るなかれ、やられている方はたまったものではない……しかも、俺のデッキの機械族モンスターは特殊召喚メインなのがやるせない。

「俺は《ミスティック・バイパー》を召喚! そしてリリースし、一枚ドロー!」

 ターボ・ウォリアーが破壊された後にはすぐ展開出来ず、笛を吹く機械戦士で耐性の立て直しを計る。

「カードを一枚伏せ、ターンエンドだ」

「俺のターン、ドロー!」

 しかし《ミスティック・バイパー》では態勢を整えることは出来ずに銀のターンへと移る。
だがボスラッシュの短所は、その特殊召喚の引き換えに自身の通常召喚を封じることであり、そのせいで銀は巨大戦艦の大量展開は不可能の筈。

「よし……二枚目の《ボスラッシュ》を発動するズラ!」

「なっ!?」

 二枚目の《ボスラッシュが発動させられたことにより、俺の巨大戦艦の大量展開は出来ないだろうという俺の目論見は外れることとなった。

「バトルするズラ! カバード・コアでダイレクトアタックズラ! カバードミサイル!」

「リバースカード、オープン! 《トゥルース・リインフォース》を発動し、デッキからレベル2以下の戦士族モンスター、《マッシブ・ウォリアー》を特殊召喚する!」

マッシブ・ウォリアー
ATK600
DEF1200

 強固な壁を持つ要塞の機械戦士が特殊召喚され、カバード・コアの前に立つ。

「攻撃表示で出すとは、とんだプレイングミスズラ! カバード・コアでマッシブ・ウォリアーに攻撃! カバードミサイル!」

「残念だが、マッシブ・ウォリアーは一度の戦闘では破壊されず、戦闘ダメージは受けない!」

 カバード・コアから放たれたミサイルを、マッシブ・ウォリアーはその手に持っている盾のような岩で防ぎきった。

「防いだズラか……だが、バトルフェイズ終了後にカバード・コアは自壊し、エンドフェイズに二枚のボスラッシュの効果が発動するズラ! 出撃せよ、《巨大戦艦 ビッグ・コアMK-Ⅱ》!」

巨大戦艦 ビッグ・コアMK-Ⅱ
ATK2400
DEF1100

 コアが2つに増え、さらに上下にスライドするカバーを搭載したビッグ・コアの進化系たるビッグ・コアMK-Ⅱ。
そんな巨大戦艦がなんと……二体。

「ビッグ・コアMK-Ⅱは、特殊召喚時にカウンターがのるズラ! 更に、《サイバー・サモン・ブラスター》により合計600ポイントのダメージズラ!」

「ぐあっ!」

遊矢LP1600→1000

 マッシブ・ウォリアーのおかげでダメージは通らなくても、サイバー・サモン・ブラスターのせいでじわじわとライフが削られていく。

 銀のフィールドに展開されたビッグ・コアMK-Ⅱを放っておくわけにはいかないが、破壊すればまた《ボスラッシュ》の効果によりデッキから巨大戦艦が現れ、サイバー・サモン・ブラスターによりライフが削られる。

「ターンエンドズラ!」

「俺のターン、ドロー!」

 まさに四面楚歌な状況……いや、詰んだ状況ではあるが、打開策が無いわけではないが、このターンに出来ることはただ布石をしておくだけか。

「チューナーモンスター、《ロード・シンクロン》を守備表示で召喚!」

ロード・シンクロン
ATK1600
DEF800

 金色のロードローラーを模したチューナーモンスターを守備表示で出すが、ロード・シンクロンの効果によって、自身をレベル2としてしまうために、今ではまたも《アームズ・エイド》しかシンクロ召喚出来ないこととなるため、シンクロ召喚をしても意味がない。

「ロード・シンクロンに、装備魔法《ミスト・ボディ》を発動し、《マッシブ・ウォリアー》を守備表示にして、カードを一枚伏せターンエンド!」

「逃げの一手ズラか!? 俺のターン、ドローズラ!」

 銀のフィールドにはカウンターが三つ乗った《巨大戦艦 ビッグ・コアMK-Ⅱ》が二体に《ボスラッシュ》が二枚、そして《サイバー・サモン・ブラスター》までもが控えている。

 それに対して俺のフィールドはというと、装備魔法《ミスト・ボディ》によって戦闘破壊耐性を得た《ロード・シンクロン》と、《マッシブ・ウォリアー》とリバースカードのみであり、しかもどちらも守備表示……確かにこれでは、逃げの一手と言われても仕方ないか。

「俺は《強欲な壺》を発動し、二枚ドローするズラ!」

 現れた強欲な壺が破壊されたと共に、引いたカードを見て銀はニヤリとした表情を見せた。

「俺は魔法カード《死者蘇生》を発動するズラ! 墓地から《巨大戦艦 ビッグ・コア》を特殊召喚し、《サイバー・サモン・ブラスター》により300ポイントのダメージズラ!」

遊矢LP1000→700

 言わずとしれた万能蘇生カードによって再び巨大戦艦が浮上すると共に、俺の肩をレーザーが撃ち抜く。

「バトルズラ! 《巨大戦艦 ビッグ・コア》で、マッシブ・ウォリアーに攻撃! ソーラーアサルト!」

「だが、マッシブ・ウォリアーは一度の戦闘では破壊されない!」

 ビッグ・コアが放ったレーザーも、マッシブ・ウォリアーは先程のターンと同じように自らが持った盾で防ぎきる。
そしてレーザーを放ってエネルギー切れとなったビッグ・コアは、浮上したばかりだが沈むこととなり、破壊された。

「続いての攻撃ズラ! ビッグ・コアMK-Ⅱで、マッシブ・ウォリアーに攻撃! スピンレーザー!」

 ビッグ・コアMK-Ⅱがその巨体に似合わず回転し、そのまま発射された数多ものレーザーがマッシブ・ウォリアーを襲った。
マッシブ・ウォリアーの戦闘破壊耐性は一度きりであり、持っていた盾を貫通してそれらのレーザーは直撃し、マッシブ・ウォリアーは破壊されてしまう。

「《ミスト・ボディ》のせいで《ロード・シンクロン》は破壊出来ないズラが……エンドフェイズに二枚の《ボスラッシュ》の効果が発動するズラ! 起動せよ、《巨大戦艦 ビッグ・コアMK-Ⅱ》! 《巨大戦艦 ビッグ・コア》!」

 三体目となるビッグ・コアMK-Ⅱに、二体目となるビッグ・コアが銀のデッキから特殊召喚され、これで銀のフィールドには四体の《巨大戦艦 ビッグ・コア》タイプが揃っていて、対戦相手である俺から見ても圧巻だった。

「更に《サイバー・サモン・ブラスター》! 合計600ポイントのダメージを受けてもらうズラ!」

「ぐああっ!」

遊矢LP700→100

 二体の巨大戦艦の特殊召喚に呼応し、銀の近くにあるサイバー・サモン・ブラスターのレーザーが俺を射抜く。
それによって俺の残りライフは100となり、まさに首の皮一枚繋がった状態、といえよう。

「《ミスト・ボディ》があろうとも、次のターンにビッグ・コアを自壊させれば俺の勝ちズラ! ターンエンドズラ!」

「……それはどうかな?」

 次のターンで俺の勝ちとかいう奴は、だいたい逆転されるっていうことを知らないのか?
先程のターンで布石は張り終わった……このターンで終わらせる!

「お前はこれから、自分のカードのせいで負ける! 俺のターン、ドロー!」

 ドローしたカードを手札に加え、逆転の第一歩たるモンスターカードをデュエルディスクに置く。
そのカードはもちろん、決まっている!

「俺は《スピード・ウォリアー》を召喚! 来い、マイフェイバリット!」

『トアアアッ!』

スピード・ウォリアー
ATK900
DEF400

 雄叫びをあげながら、スピード・ウォリアーは守備の態勢をとるロード・シンクロンの横へと並び立つ……あたかも、次なる俺の手を、スピード・ウォリアーもわかっているかのように。

「レベル2の《スピード・ウォリアー》に、自身の効果によりレベル2となる《ロード・シンクロン》をチューニング!」

 合計レベルは4……デュエル序盤からシンクロ召喚が可能だったものの、機を逃して来たシンクロモンスターを、今こそシンクロ召喚する!

「集いし願いが、勝利を掴む腕となる。光差す道となれ! シンクロ召喚! 《アームズ・エイド》!」

アームズ・エイド
ATK1800
DEF1200

 ついにシンクロ召喚される、機械戦士たちの補助兵装たるシンクロモンスター。
シンクロモンスターであるにも関わらず、自身を装備モンスターとすることが出来るという、珍しいシンクロモンスターであり、そして『機械族』である。

「ただの自滅ズラか!? 《サイバー・サモン・ブラスター》で300ポイントのダメージを与えるズラ!」 

「俺は手札から《シンクロン・キーパー》の効果を発動! このカードを墓地に送ることで、相手からの効果ダメージを一度だけ0にする!」

 俺の《機械戦士》デッキの中で、唯一のアンデッド族であり、『シンクロン』と名前がついているにもかかわらずチューナーではない、と、色々特殊な存在と言える《シンクロン・キーパー》だが、その効果により俺へと《サイバー・サモン・ブラスター》のレーザーによる効果ダメージは届かない。

「くっ……だけど、結局その腕じゃ俺の巨大戦艦は倒せないズラ!」

「確かにそうだな。墓地の《シンクロン・キーパー》、第二の効果を発動! このカードとチューナーを除外することで、シンクロ召喚を行うことが出来る!」

 いましがた墓地に送ったシンクロン・キーパーと、墓地から《ターボ・シンクロン》が俺のフィールドに一時的なるも現れ、ターボ・シンクロンが自らのエンジンを吹き鳴らし、光の輪となるという、シンクロ召喚時の構えをとった。

「なっ!?」

「集いし拳が、道を阻む壁を打ち破る! 光指す道となれ! シンクロ召喚! 現れろ、《マイティ・ウォリアー》!」

マイティ・ウォリアー
ATK2200
DEF2000

 巨大な片腕を持った機械戦士、文字通りに腕自慢の戦士であるシンクロモンスターが大地を叩きつけながら現れる。

「そして《マイティ・ウォリアー》に、《アームズ・エイド》を装備する!」

 マイティ・ウォリアーの巨大な腕に、更にアームズ・エイドというアタッチメントがつき、もはやその腕に握られただけで破壊されそうな錯覚を覚えさせる。

「更にリバースカード《ブレイクスルー・スキル》を発動し、巨大戦艦 ビッグ・コアの効果を無効にし、バトル! マイティ・ウォリアーで巨大戦艦 ビッグ・コアに攻撃! パワーギア・ナックル!」

 ここで俺がマイティ・ウォリアーに標的として命じる前に発動したのは、《ブレイクスルー・スキル》という相手モンスターの効果を無効にするトラップカードであり、今、ビッグ・コアの効果は無効となった……つまり、戦闘破壊が可能である相手モンスター!

「ぐっ……! まだまだズラ!」

銀LP3800→2900

「いいや、まだまだじゃない……ビッグ・コアを戦闘破壊に成功したため、《アームズ・エイド》の効果により巨大戦艦 ビッグ・コアの攻撃力分のダメージを与え、《マイティ・ウォリアー》の効果によりビッグ・コアの攻撃力の半分のダメージを与える!」

 《サイバー・サモン・ブラスター》で散々バーンしてきた借りを、マイティ・ウォリアーとアームズ・エイドの二体分のバーン、併せて3600ポイントのダメージで返させてもらう……!

「決着を次のターンに回したのが仇になったな! ロケット・ナックル!」

「うわあああッ!」

銀LP2900→0


 二体のシンクロモンスターの効果ダメージ分のロケット・ナックルにより、銀はライフを0にしながら少し吹き飛んでいった。

「終わりだ銀!」

「ぐぐぅ……」

 このまま約束通りに銀を無視してオベリスク・ブルー寮へと行っても良いが、そもそも俺がオベリスク・ブルー寮へと行く目的は『光の結社の生徒を倒せば元に戻る』という仮説を元にしてのものであるため、ここで銀の反応を見るのは悪くない。

「お、俺は……あああッ!」

 マイティ・ウォリアーに吹っ飛ばされた後、銀はいきなり俺の前で頭を抱えて呻き始めた。

「……どうした銀!?」

「……俺は選ばれたんだ! 斎王様に、光の意志に!」

 ……は?
銀の突然の行動に俺の理解は追いつかず、俺の見ている前で止める暇もなく銀は走って行ってしまった……選ばれただの光の意志だのと、叫びながら。

「……ああ、なんなんだよ」

 俺の仮説は、今の銀の発狂によって間違っていたと証明され……もうそろそろ、巡回の仕事があるガードマンが働きだす時間だろう。

 だが、収穫がなかったわけじゃない。
さっきも言ったが、自分の仮説が間違っていたということと、五階堂も万丈目も銀も同様に口にした、『斎王様』という存在。
おそらくはその『斎王様』が、あの光の結社のトップなのだろう。

 もう一度オベリスク・ブルー寮の方角を見た後、俺はこれからの寝床であるラー・イエロー寮へと帰って行った。 
 

 
後書き
アニメの一回きりのゲストキャラ、銀流星とのデュエルでした。
さて、次回はまたゲストキャラとのデュエルにするか、修学旅行へ行ってしまうか悩んでおります。

では、感想・アドバイス待っています。 
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