異生神妖魔学園
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体育館と音楽室にて
紺子が救出され、舌寺が報復を受けて少し時間が経った頃。
一海「……………」キュー
気絶した一海を除き、女子全員が絶叫していた。
二度とズボンを破らないと決めた宇佐間がまた体操前に筋肉を増大させ、ズボンを破っていた。
大狼「は、はわわわわぁ!!宇佐間先生、もうズボン破らないって言ってたのにぃぃぃ!!」
宇佐間「いや~、家で何回かこの癖抑える練習したんだけどね~。やっぱり体操前に筋肉膨れ上がらせないと俺が俺じゃなくなる気がして……」
大狼「そんなことしてたらまたいつ蹴られるかわかりませんよ!?」
宇佐間「大丈夫だって。龍哉君みたいに阻止しようと思う子がいなければ―――――」
だが男子の中では殺意のオーラを漂わせる者が1人いた。
旧神の無亞だった。顔は笑っているが、目が笑っていない。宇佐間はそんな彼を見て驚きのあまり声が裏返り、恐怖で顔が青ざめた。
無亞「そういえば宇佐間先生、前に赤川先輩に股間蹴られてたよなぁ?」
大狼「な、無亞さん!?宇佐間先生の股間はどうかやめてあげてくださいぃぃ!!」
無亞「安心しろ。俺は股間を蹴ったり殴ったりしねぇ……」
霜「なんだか嫌な予感が………」
宇佐間と大狼はひと安心していたものの、無亞と一海以外全員は嫌な予感を抱いていた。
無亞は殺意の笑顔を保ったまま宇佐間に問いかける。
無亞「ところで宇佐間先生、少し質問だ。右の拳で殴るか、左の拳で殴るか、当ててみな」
宇佐間「ヒェ!?」
大狼(どっち選んでも殴られるだけじゃないですかぁ!?)
宇佐間「ひ、ひと思いに…み、右で……お願いします……」
宇佐間は恐怖で引きつった顔で答えた。しかし無亞は。
無亞「NO!NO!NO!NO!NO!」
宇佐間「ひ、左!?」
無亞「NO!NO!NO!NO!NO!」
宇佐間「り、両方ですか!?」
無亞「YES!YES!YES!YES......YES!!」
宇佐間「も、もしかして『ヨグ=ソトースの拳』での『オラオラ』ですかぁ!?」
無亞「YES!YES!YES!Oh My God......」
ちなみにヨグ=ソートスとはクトゥルフ神話に登場する神の一種。外なる神の副王の座につく存在………いや、空虚。あらゆる大地、宇宙、物質を超えた空虚。時空との隣接及び超越、内包している最強の神とも呼ばれる。
旧神の無亞はその力を持っているため、背中と無数の空間からは触手が生えている。つまりこれは無亞にとっての戦闘形態だ。
無亞「『ヨグ=ソートス』の力をその身で体感してみな」
宇佐間「ゴバッ!?」
空間から生えた触手が宇佐間へと向かって伸び、殴り飛ばす。他の触手も一斉に宇佐間に襲いかかり、目に見えないほどの速さで次々と殴っていく。
無亞自身も足がふらつく宇佐間の前に立ち、背中の触手でアッパーカットを決めた。天井に殴り飛ばされた宇佐間の頭が刺さった。
大狼「……………」ポカーン
大狼は天井に刺さった宇佐間に呆然とし、無亞は気絶した一海に声をかけながら揺り起こす。
無亞「カズミン、起きろ。俺が片づけておいたぞ」
一海「う、う~ん………」
麻由美「………龍華先輩もあんな感じみたいにできるのかな………?」
その後授業が終わるまでの間、宇佐間はずっと天井に刺さったままだった。
仕方なく大狼が代わりに進めたが、途中転んでしまい犬のような声を出しながら涙目になることもあった。
大狼「きゃんっ!くぅ~ん……」
藤一「この人たちが先生でホンマに大丈夫なんかなぁ…」
小声で呟く藤一であった。
一方音楽室にいる3年の生徒たち。舌寺にジャーマンスープレックスを決めて戻ってきた南原は開いた口が塞がらなかった。
牙狼たちのクラスメイトである3本の尻尾を持つ猫の妖怪がバイオリンで美しい音色を奏でていたのだ。その猫は演奏を終えると、音楽室に牙狼たちと南原による大きな拍手喝采が巻き起こった。
南原「そこの猫のあなた、とても感動したですよ!私がいない間こんな美しい音色を奏でてたなんて素晴らしいですよ!」
遠呂智「ホントにすごかったよな。バイオリンの才能あるんじゃねぇのか?」
猫の妖怪「そ、そんなことないよ………美弥妃ちゃんがバイオリンのきれいな弾き方を教えてくれただけで……」
南原「え?」
美弥妃「それでもすごいよ!教えただけでここまで上手になるなんて、才能あるよ!才能あるよ!」
先ほどまで感動していた南原だったが、美弥妃のおかげと聞いた途端ポカンとした。猫が上手く弾けたのは美弥妃が教えてくれたこと。
美弥妃さんが教えてくれた?南原は意味がわからず、そう思いながら混乱する。ジャックが言っていた『留年111年目の残年生』の通り、テストはいつも全教科0点。卒業できないでずっと異生神妖魔学園にいることはすでに知っていた。そんな彼女が猫にバイオリンの弾き方を教えてくれるとは聞いたこともなかった。もちろん他の教師も知らない。
そんな彼女のおかげでバイオリンを弾けるなんて考えられなかったが、あることを思い出していた。
南原(そういえば美弥妃さんほどじゃなかったけど、前に点数が低かった生徒がいた………でも次のテストで急に点数が上がって90点以上も取った。カンニングした様子も不自然な動きもなかったのにあの点数………一体どんな勉強であの点数取れたのか全くわかんないですよ)
もしや美弥妃と関係があるのでは?もしそうなら0点が不自然に思えてくる。
疑問に残る南原だったが、あまり深く考えていると今の時間に差し支えが起こるかもしれないと思い、頭の片隅に置いておくことにした。そしてバイオリンを上手に弾いた猫を褒めた。
南原「大変よくできましたですよ♪また聞かせてくださいですよ♪」
美弥妃「教えた甲斐があってよかった、よかった!」
チャイムが鳴り、それぞれ教室に戻る全生徒。石化したディーゴを自分の尻尾に巻きつけた紺子は一海と2人の先輩と会話していた。
王臥「おや、ディーゴ君が石化してますね」
紺子「石蛇先生に禁句言っちゃったからね。あの時間始まる前にまた舌寺先輩に舐められたもんだし散々だよ」
牙狼「あいつまた紺子のお腹舐めたのか…どうりでなかなか来ないと思ってたよ」
紺子「でもこうやっておへそ出してねぇと全然しっくり来ねぇし、体操服も裾結ばねぇと私じゃねぇ気がするし」
腹をなでるついでにへそに指を入れる。
一海「どんだけこだわってんの?パンツ丸出しのパジャマ姿もそれと同じでしょ。それより出雲姐ちゃん舐めてた舌寺先輩ですけど、どうなったんですか?」
王臥「自業自得というものですよ。グラウンドで氷舐めてたところを南原先生にジャーマンスープレックスかけられたと聞きました」
一海「………あっ」
全てを察したような顔をする一海。それもそのはず、先ほど起きた出来事なのだ。
牙狼「何か知ってるの?」
一海「知ってるも何もあの先輩の名前大狼先生から聞いたんだけどね。始まる前、出雲姐ちゃんのお腹とおへそ舐めてるのを見たんだ。霜が凍らせて、僕が体育館の外まで蹴り飛ばしたんだけど、そこから出雲姐ちゃんもう大泣きだったよ。出雲姐ちゃんのお腹もうよだれまみれだったし、おへそも出べそになってたし」
紺子「リボン結んで出ようとしたらいたんだよ。気持ち悪いったらありゃしねぇよ」
王臥「そういう性格なんです、仕方ありません」
牙狼「あっ、こっちも南原先生がいない間に美弥妃がバイオリンの弾き方教えてくれてね」
しばらく話しているうちに石化したディーゴが元に戻った。
ディーゴ「お前いつまで縛ってんの?きつくてしょうがないんだけど」
紺子「今日の授業美術っぽくなったの誰のせいだと思ってやがる。お前石蛇先生の悪口言ってたじゃねぇか。自覚ないの?」
ディーゴ「グボッ!?(あの時意識はあったけど目の前真っ暗だったから…!)」
ディーゴは紺子の尻尾に縛られたまま吐血しながら気絶した。
一海「あ、死んだ」
紺子「たぶん死んでねぇだろ。それより美弥妃先輩だっけ?留年111年目なのは知ってるけど、バイオリンの弾き方教える時急に天才的になるって……」
王臥「他の教科もそうですよ。小テストも0点ですが、人に教える時だけはびっくりするほど頭がよくなります。それで逆に人気がありましてねぇ」
紺子「私もたまに美弥妃先輩が教えてくれることあるけど、スラスラしゃべってたっけ。意味わかんなくて混乱するよ」
王臥「あまり深く考えてはいけません。卒業したくなくてわざと留年してるのかもしれないと考えた方がいいですよ」
紺子「うん…」
さて、体育館の天井に刺さった宇佐間だが、一海たちと大狼が出ていった後ユウジ11に助けられていた。
宇佐間「いや~、助かったよユウジ君。無亞君にやられて困ってたけど安心したよ」
ユウジ11「手間かけさせやがって。これから授業だってのに。まあ校長に頼まれたからしょうがねぇが」
宇佐間「恩は必ず返すからさ。今日筋トレにつき合ってくれないかい?」
ユウジ11「テメェの頭はそれしかねぇのか………むしろ仇で返してるだろ」
筋肉をアピールする宇佐間にユウジ11はもはや呆れるしかなかった。
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