異生神妖魔学園
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お前ペルセウスに殺されただろとか言ってはいけない(戒め)
技術室には2年のクラスがすでに集まっており、チャイムが鳴り終わるとその担当の教師が入ってきた。
名は『石蛇ヒトミ』、種族はメドゥサ。髪の毛が蛇で、目を合わせた者を石にしてしまう女の怪物だ。そのため生徒を石化させないよう、常に両目を黒い包帯で覆っている。
しかし、技術室に入るなりうつむきながら、
石蛇「アテナは殺す………いつか殺す………」ブツブツ
と、小声で謎の恨み言を呟いていた。
だが教卓の前に立つなり、すぐに生徒たちの前を向く。
石蛇「あ、さっき言ってたことは忘れてね」
龍哉(忘れられる気がしないわーっ!!)
石蛇「では改めまして、私はメドゥサの石蛇ヒトミ。技術を担当させていただきます」
自己紹介と号令が終わると、石蛇は誰かいないことに気づく。
石蛇「なんか1人足りないわね。出雲紺子だったっけ」
龍華「紺子!?いや、ちょっと待て!あいつまだ更衣室にいんのか!?」
辰美「何か探してた様子ですし、遅くなるのは当たり前なんじゃないですかね?ですが時間かかりすぎじゃないかと私も………」
盾子「ひょっとしてトイレじゃない?たぶん便秘だったりして」
だといいんだがなという目をする龍華だったが、戸が開く。入ってきたのはなぜかぐずり泣く紺子だった。
紺子「ひっぐ……あぐ…ぐすん………」
龍華「って紺子!?入ってくるなり泣いてるとかどうした!?」
紺子の腹の表面が唾液で濡れているばかりでなく、へそも出べそになっている。
紺子「舐められた………」
盾子「え?」
紺子「舌寺先輩だよぉ………あの変態に舐められたぁ………」
高見「嘘でしょ!?あの変態いつの間に更衣室にいたの!?全然気づかなかった!」
紺子「リボン結んで出ようとしたらいてさぁ……舌で私の体縛ってお腹とおへそ舐めてきてさぁ……すっごく怖かったし気持ち悪かったよぉ…………」
辰美「あああああ紺子様、泣かないでください!ハンカチ貸しますからこれで拭いてください!」
辰美からハンカチを借りた紺子はしゃくりあげながら舌寺の唾液でベトベトになった腹を拭く。唾液まみれの出べそも拭いているうちに引っ込み、元の縦長のへそに戻った。
一生(出べそな狸は見たことあるけど出べそな狐は見たことないな…)
石蛇「ほら紺子ちゃん、もう授業始まってるから座って」
紺子「…………」
席に座った紺子だが、ディーゴが手を挙げる。
ディーゴ「先生、ちょっといいですか?」
石蛇「何?」
ディーゴ「年齢も気になりますけど、メドゥサってあのギリシャ神話の怪物じゃないですか。ペルセウスに首はねられて殺されたのに―――――」
石蛇「はい、ギルティ。石になりなさい」
凍えるような声で言い放った石蛇はうつむきながら目の包帯を外すと………。
シャーーーーッ!!!
ディーゴ「へああああああああああああ!!?」
瞳を不気味に光らせながら鬼のような形相になり、頭の蛇と共に威嚇するような声をあげる。
ディーゴは恐怖に顔を歪めながら灰色になって固まり、座ったまま動かなくなった。
許人「でぃ、ディーゴが石になった………」
許人はもちろん、石化したディーゴと先ほどの石蛇の声で全員鳥肌が立っていた。
石蛇「何度も言ってるけど、私に向かって姉さんのこととか年齢のこととか禁句だからね。今日の技術は石像作りよ」
何事もなかったかのような顔で目を閉じ、包帯を巻き直しながら言った。
獄宴「僕たちも絶対言わないようにしないと…!下手したら粉々にされる…!」
炎宴「さすがにそれはないでしょ」
死宴「でも授業終わる時間には元に戻れるじゃない。あの目で睨まれたらたまったもんじゃないわね」
石蛇「無駄口禁止」
獄・炎・死「「「あっ、はい」」」
しばらくして、石蛇の言う通り石像作りが始まった。
全員は班にわかれ、石蛇に石にされたディーゴをモデルに自然石で彫っていく。
班はこの通り。
1班:紺子、龍哉、辰美、乱
2班:ライエル、仁美、司、セー
3班:獄宴、冷火、龍華、盾子
4班:許人、高見、一生
紺子「いくら手先が器用でも私石像なんて作ったことないんだけど!?」
龍哉「椅子とかそういうのかなって思ってたけど、ディーゴが悪口言うなんてびっくりしたぜ」
セー「恨むよ、ディーゴ……」
ライエル「決まったものはしょうがないよ」
冷火(もうこれ技術じゃねぇよ!美術だよ!コーティア先生だったら喜んで取り組んでるだろうけど!)
全員ディーゴに対して文句ばかりぶつけ、技術室がざわめく。それもそのはず、ディーゴが石蛇に言ってはいけないことを口に出したのだから仕方ない。
一方2班では司だけ手を動かさず、何か考えている。
ライエル「司、手動かしてよ」
仁美「全然動いてないけど、何か考えてるの~?」
司「いや、考えてるっちゅーか………さっき入ってくる時独り言言ってたろ?誰か殺してやるとかそういう―――――」
石蛇「何か言った?」
司の言葉に反応した石蛇は彼を睨む。まるで自分に対する悪口だったら石にしてやろうかという風に。
司「いや、さっき―――――」
その瞬間、石蛇のただならぬ殺意を感じ取ると、とてつもない寒気を感じた。
以前模擬戦で一海を怖がらせ、股間を何度も蹴られたことを思い出し、すぐに床について頭を何度もぶつけながら土下座する。
司「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいどうか股間を蹴るのだけはやめてください死んでしまいます男として人生が終わりますお願いします何でもしますから―――――」ガンガン
紺子「司!?」
石蛇「そ、そこまでしないわよ……てか、なぜ私があなたの股間を蹴らないといけないのよ………」
司「今回だけはホント勘弁してください!!すいませんでした!!マジでごめんなさい、許してください!!股間潰れたらマジで死にます!!お願いします、この通りです!!」ガンガン
何度も頭を床にぶつけながら土下座する司に石蛇は何も言えず、引いていた。
だが龍華を除く生徒は愕然としていた。あのプライドを持っていそうな司が先生の前で土下座するのを見るなど、剛力のハンカチを盗んだ時以来だった。
そして龍華は察していた。これ絶対トラウマになっているな、と。
龍哉「おい龍華!?何でお前だけ驚いてねぇんだよ!?あの司が土下座してんだぞ!?」
龍華「いや、俺あいつがあそこまで土下座する理由がわかるからな……まさかトラウマになるとは思わなかった……」
紺子「何か知ってんのか?」
龍華「司と一緒にカズミンの模擬戦につき合ってた時にさ、あいつがカズミンの腕つかんだ時………股間蹴りやがったんだ」
紺子「……………あっ」
あの日紺子はトレーニングジムにいたのでわからないものの、龍華の話を聞くと何があったのかすぐに察した。
龍華「俺メッチャ焦ってカズミン止めたんだけど、メッチャ怖かったのかまだ足りなかったのか知らねぇけど、何度も何度もあいつの股間を蹴りまくってたんだよ………俺でも早いって思うほどの蹴りを司の股間に連続で当てたんだぞ?」
冷火(いやいやいやいや、どんだけだよ!?そりゃトラウマになるわ!!)
セー(何だろう…想像したら僕も震えてきた………)
石蛇「ご、ご愁傷様です………」
龍華「もう剛力先生焦ってたし、ラインハルト先生なんてTシャツで会話してたりで、もう大混乱だったぜ……」
石蛇(ラインハルト先生が!?)
この後石像作りが再開されたものの、石蛇はなぜか始終までラインハルトのことを妄想していた。
脱線はしなかったものの、まだ頭をぶつけながら土下座している司を除き、彼らは石蛇ののろけ話を聞きながら石像を彫る羽目になった。
冷火(……………終わったら石蛇先生に聞こう。ネタが浮かび上がるかも)
一方、霜に氷漬けにされた舌寺はグラウンドの真ん中にいた。
上半身の部分が溶けた中、舌寺は氷を美味しそうに舐めていた。なんとかして溶かそうという焦りは全くなかった。
舌寺「ウヒョヒョヒョヒョ!あの雪女に凍らされたのはちょっと悔しいけど、ひんやりして最高ですなぁ!」
振り向くと、さらにひんやりする気分を味わった。
額に青筋を浮かべ、容赦ない殺意を漂わせている南原が仁王立ちしていたのだ。
舌寺「ヒエッ!?」
南原「授業サボってグラウンドで氷舐めてるとかのんびりできて羨ましいですよ……」ゴゴゴゴゴ
凍りつくような冷たい笑みを浮かべる南原。つかまれた舌寺はやめてくれと懇願するが、音楽の授業をサボっている。音楽に全力で取り組む南原にとっては絶対許せない行為だと認識していた。
南原「サボりも断じて許さんですよー!!」
舌寺「■■■■■■■■■■■■■■!!!!」
声にならない悲鳴をあげる舌寺。南原が去った後に残ったのは上半身を埋められ、氷漬けの下半身を地面から出している舌寺だけだった。
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