異生神妖魔学園
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数学が苦手な私は数字を見るだけで目が回る
10分休みが終わり、次に始まる授業は数学だ。
紺子「あーあ、嫌な時間が来たよ……」
紺子にとって数学は1年の頃からずっと苦手としていた。正負の数の計算や方程式といった簡単なものは普通に解けていたのだが、文章題といった応用問題、途中から難しくなってきた単元のせいで頭の中が混乱するようになってしまったのだ。
おかげで数学の補習を受けることがたびたびあったのだ。しかも苦手を放っておいたせいで苦手意識が余計高まっており、春休みになってから大後悔したらしい。補習を受けないために40点以上取らなければならないのは唯一紺子だけなのだ。
それでも紺子には劣らなくても苦手な者はいる。だが苦手でも赤点を取らないためにも努力が不可欠なのだ。
司「お?紺子、お前俺様と同志だな。実は俺様も理系苦手なんだよな」
紺子「マジで?私文章題とか図形とかマジ無理…」
司「それ!ホンットよーくわかるぜ。でもこういう時にいてよかったぜ、トップ合格でこの学園に入ったズバ抜けた天才が。ハハハ!」
紺子「ズバ抜けた天才……そうか、あいつだ!あいつしかいねぇよな!」
司「授業終わったらそいつに問題聞いてみような!」
紺子「おう!」
冷火(おいおいおい!勝手にお前らが決めてんじゃねーよ!2人揃ってバカか!無法地帯か!)
冷火が異生神妖魔学園にトップ合格して入学したことはクラス全員が知っていた。ところが彼女は周りと関わるのが嫌なのかいつも物静かかつ敬語でオドオド、その上あまり話したがらない。
やがて教室に数学の教師らしき女性が入ってきた。その女性はとにかく美人で、見るからにして猫又だろう、猫耳と2本の尻尾が生えている。
猫又「はーい、皆さんおはようございます!私は西田みのり!好きな子は美少女と幼女です!」
全員『おいちょっと待てェェェェェェェェ!!?』
残念な美人とはこのことか、ロリコンだ!ここにロリコンがおる!
高見「うわー、正直ちょっとそれはないわー…私八尺様だけどこんな残念な美人教師初めて見たわー…」
許人「で、でもさ…人は見かけじゃ判断できないっていうでしょ?成績優秀で運動神経も抜群かもしれないし…」
みのり「そこ。何を2人でブツブツ話してるの?」
許・高「「いや、何でもありません!」」
紺子「ガッツリこっちにも聞こえてたわ!」
みのり「はいはいお静かに。えーと改めて…私は数学担当の西田みのりです。よろしくお願いします」
ディーゴ(ちゃんと自己紹介できるなら最初からしろよ!?)
みのり「まずは1年の復習として小テストからね。プリント配るわよー」
周りは「えーまたかよー」「国語でやったからもういいよー」などと文句を言うが、みのりが言い出したことだから仕方ない。
紺子「ヤベェよヤベェよ…私去年から数学苦手だから40点以上取れる気がしない……」
みのり「…あっ!その前に大事なこと忘れてた!日直の挨拶誰?」
紺子「あっ、私だ。起立。礼。着席」
みのり「ではプリントを配ります」
紺子たちは次々とプリントを配られていき、名前欄に自分の名前を書いた。
みのり「みんな行き届いたみたいだね。それでは、よーい始め!」
みのりは合図を出し、紺子たちは一斉に問題に取りかかった。
紺子(正負の計算と方程式は楽々だけど文章題がァァァァァ!!)
見よ、これが苦手を放っておいた者の末路だ。
わかるところだけは解き、わからないところはどんどん飛ばしていくが、もはや完全に空欄だらけ。これが中間試験だったら赤点確定である。
紺子(カズミンだったら小学校で習った内容なんだろうなぁ…私小学校も算数無理だったよ…)
心の中で泣きながら呟く紺子であった。
それから15分後。
みのり「はい終ー了ー!後ろから集めてくださーい!」
小テストが終わり、紺子たちは次々と提出し、すぐに教科書とノートを出した。
みのり「今日から授業始めたいけど、どこだったっけな………ああ、単項式と多項式だったね。みんな教科書開いて」
全員は教科書を開くが、特に紺子は絶望した。文字が混じっているせいでもう何がなにやらである。
紺子「うわー!めんどくさっ!だいたいx2乗とか3乗とか何だよ!?文字入ってるせいでもう混乱するわ!」ヒソヒソ
龍哉「……なあ紺子、後で教えてやろうか?」ヒソヒソ
紺子「悪い、司と約束してるんだ。冷火に教えてもらおうとな…」ヒソヒソ
龍哉「そうか?あいつがトップ合格したこと学園中で有名だからなぁ…」ヒソヒソ
みのり「また誰かヒソヒソ話してる子がいるわねぇ…」
紺・龍「「いやいやいや、違います!!」」
みのり「あら、そーお?」
龍哉「その笑顔やめてくれます!?そんなニコニコしながら言われたらよけい怖いんですけど!」
ライエル(僕も紺子ちゃんの力になりたいなぁ……でも入学してから一度も話したことないし……どうしよう…………)
同じ妖狐でも弱気すぎるライエル。話しかけたいけど思うように声が出ないし、何を話せばいいかもわからない。
司「あ、これ意外と簡単じゃねぇか。紺子には悪りぃがお前が冷火に聞いてくれ」
どうやら司は教科書を一通り見たようだ。できるものとできないものがあるらしい。
みのり「数や乗法だけで成り立った式を単項式と言い、数の部分を『係数』と言います。係数が1で単項式1xの場合、省略できるのでxと表せる。-1の時も同様で、-xと表します」
紺子「あーダメだ、全っ然ついていけねぇ。数字見てると目回ってくるしチカチカしてきやがる」
だが、今まさに紺子と同様の者もいた。
ディーゴ「え、マジで何これ?春休みずーっと遊んでたから2乗とか何もかも忘れちまった………」
それはいわゆるド忘れではないのか?そんなものは苦手とは言えない。
練習問題に取り組んでいるうち、やがてチャイムが鳴り、数学の授業は終わった。
紺子は号令をかけ終えると、早速冷火にわからないところを聞くことに。
紺子「なあ冷火、ちょっといいか?」
冷火「何ですか?(何でこっち来るんだよ!関わりたくねぇってのに!)」
紺子「今日の授業の内容全然わかんなかったんだ。教えてくれないかな?」
冷火「え…初っぱなからわからなかったんですか?(こいつマジで!?つーか全然教える気が起きねぇんだけど!)」
紺子「頼むよマジで。トップ合格したみんなのマスコットならできるだろ?」
冷火「マスコットなんて…そんな………(だぁぁぁぁ!!んなことどーでもいいんだよ!!早く1人にしてくれよな!!)」
仕方なく冷火は紺子にわからなかったところを教えることにした。紺子はノートに写した練習問題に答えをどんどん書いていく。
紺子「いやー、それでよくわかったよ。ありがとな」
冷火「いえいえ。またわからなかったらいつでも聞いてくださいね(もうあっち行きやがれ!!こっちゃもう教えたくねぇんだよ!!)」
心の中でそう叫ぶ冷火だったが、この時、紺子はこう思っていた。
紺子(司テメェ、堂々と裏切りやがってあの野郎……今度冷火に教えてもらうことあったらフルボッコにしてやるから覚悟しとけよ?)
実はあの時司がスラスラ解いているのを見ていたのだった。
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