提督はBarにいる。
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艦娘と提督とスイーツと・64
~ガングート:スメタンニク~
「おお!この独特の甘い生地と酸っぱいクリーム、まさに故郷の味だ」
「そうか、いや俺も初めて作ったんでな。多少味に不安があったんだが……」
「いやいや、大した物だ。初めてでこれ程美味いスメタンニクが焼けるとは!同志提督は何時でもロシアに嫁に来られるな!ハッハッハ!」
「いや、俺が嫁に行くんかい」
妙にテンションの高いガンちゃんことガングートに、思わず溜め息が零れる。リクエストされたのは『スメタンニク』……スメタナ(サワークリーム)のケーキ、という意味の名前らしい。
「今までそれっぽい味のサワークリームもどきは作った事あったが、本格的な奴は初めて作ったわ」
「む、そうなのか?あんなに美味しい物を……」
ロシアには『なんでもスメタナ(サワークリーム)を付ければ美味しい』って格言?諺?があるらしい。なんだそのマヨラーみてぇな理論。
「野菜によし、魚によし、肉によし、スメタンニクの様に甘い物にも合う。正に万能の調味料なのだぞ?」
俺のイメージとしちゃあサワークリームってボルシチに入れたり、後はポテチの味にサワークリーム味があったっけなぁ位のイメージしかないんだが。サワークリームってのは、生クリームを乳酸菌発酵させて作るヨーグルトみたいなモンでな。生乳で作るプレーンヨーグルトよりも味わいが濃厚だが酸味は少な目だ。
「しかし、サワークリーム作りも含めて3日も掛かるとは思わんかったがな……」
《1日目:サワークリーム作り》
さて、サワークリームを作る訳で作り方を調べたんだが……拍子抜けするほど簡単だった。用意するのは生クリームとプレーンヨーグルト。これだけ。生クリームは動物性でも植物性でも構わないが、クリーミーさを大事にしたい場合は動物性の方がいいらしい。後は2つの材料をムラなく混ぜ合わせて、埃が入らないように蓋をして室温で丸一日放置するだけ。ポイントとしては、
・生クリーム5に対してヨーグルト1の割合を基本に、固めのクリームにしたいならヨーグルトの割合を増やす。
・放置する際の蓋はラップ等の密封する蓋はダメ。通気性のあるキッチンペーパーや布巾等で蓋をする。
って所か。出来たサワークリームは冷蔵庫で保存だぞ?当たり前だが腐るからな。
《2日目:スメタンニク作り》
(生地の材料)
・サワークリーム:250g
・砂糖:250g
・バター:50g
・薄力粉:320g(もしくは2カップ)
・ベーキングパウダー:10g
・バニラシュガー:10g(無ければグラニュー糖10gとバニラエッセンス数滴)
・ココアパウダー:大さじ1
(クリームの材料)
・サワークリーム:500g
・砂糖:150g
・バニラシュガー:10g
・ナッツ:お好みで1カップ位※クルミがオススメ
《作り方・生地編》
1.室温に戻して柔らかくしたバターにバニラシュガーを加え、ハンドミキサー等を使ってムラ無く練る。その間に、サワークリームと砂糖を3回位に分けて加えつつ、更に混ぜる。
2.薄力粉とベーキングパウダーをふるい入れ、粉っぽさが無くなるまで更に混ぜる。
3.生地を2等分し、片方にココアパウダーを加えて混ぜる。ケーキ型の底にクッキングシートを敷き、側面にサラダ油(分量外)を塗る。生地を流し込み、濡れた手で表面を均す。
4.200℃に余熱したオーブンで20分程度焼く。型から外し、ココアパウダー入りの生地も3~4の行程を繰り返す。焼き上がったら生地を型から外して冷ましておく。
《作り方・クリーム編~仕上げ編》
1.冷やしたサワークリームに砂糖、バニラシュガーを加え、クリームがふわふわになるまで泡立てる。
※泡立たない場合はクリームの水分が多すぎるぞ!コーンスターチを加えると水分が吸収されて泡立ちが良くなります。
2.焼き上げた生地を半分の厚みになるように切り分け、ココア生地を一番下に敷いてクリームを塗る。刻んだナッツを散らし、プレーン生地を重ねてその上にもクリーム、ナッツを塗るという行程を繰り返す。
3.生地を重ね終えたらケーキ全体にクリームを塗り、ナッツを散らす。
4.冷蔵庫に入れて最低12時間以上休ませる。こうする事で、クリームと生地が馴染んでしっとりとした仕上がりに。
5.完成!生地がかなり甘めなので、コーヒーや紅茶のお供にどうぞ。
…………とまぁ、3日掛かりで準備した訳だがその甲斐あってかなり満足頂けたらしい。
「ふぅ。マミヤやホーショーの店の味も悪くはないが、やはり故郷の味というのは格別だな」
「そりゃどうも。しかし良いのか?」
「ん?何がだ」
「ケーキなんて贅沢品、共産主義的にはアリなのか?なんつーか、贅沢は敵だ~みたいなイメージがあるんだが」
「それは戦時中の日本だろう?共産主義は何も清貧を是としている訳ではないぞ」
「まぁ……そりゃそうなんだが。スタ公の辺りからの話を聞くとどうしてもな」
「あれは一部の特権階級の欲の皮が突っ張り過ぎたのと、共産主義の悪しき部分が重なって出たからだろうに」
共産主義って考え方自体はとてつもなくご立派だ。しかし、それを分配する側が不平等じゃ成り立たん制度だからなアレは。
「それに、軍艦時代の私は在籍期間は赤色海軍と連邦海軍が長かったとはいえ生まれはロシア帝国海軍だぞ?ブルジョワ上等だ」
そう言ってスメタンニクに大きく開けた口でかじりつくガングート。
「さいで」
「私が好きなのは『国』であって『国家』てはないのさ」
「愛国心はあれど党への忠誠は在らず、ってか?」
「そこまで露骨には言わんが……まぁ、近い所はあるな」
と、2人で苦笑いを浮かべる。
「たまには昔を懐かしみもするが、今の暮らしを知ってはとてもソビエト時代に戻りたいとは思わんな」
「規定量の仕事をすれば美味い物は食えるし酒もほぼ飲み放題、その上自由にできる給料まで貰える。確かにソビエト時代に比べりゃあ楽園だろうな」
「それもあるが、重要なのは過去よりも今とこれからだろう?そんな時節にこれだけ有力な者達と真の意味で『同志』になれた事が私にとっては何より喜ばしい事だ」
「ガンちゃん……お前」
「ふふふ、なんだ?余り褒めるなよ?照れ臭いから」
「酔ってんのか?」
瞬間、ガングートが飲んでた紅茶を噴き出した。
「なんだと貴様ぁ!人が折角この艦隊への思いを赤裸々に語ったと言うのに……!」
「いや、だって普段の残念でポンコツなガンちゃんとイメージが違い過ぎて……。アルコール入ってるから調子が良いのかと」
「アルコールは私の燃料ではないぞ!?あとガンちゃん言うな!」
「まぁまぁ、落ち着けよガンちゃん。ウォッカでも飲むか?」
「だからガンちゃん言うなと……だが、詫びの印というなら一杯付き合おうではないか!」
「そういうトコやぞ?」
「? なにがだ」
やっぱりこいつ、見た目は立派でもポンコツだわ。
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