提督はBarにいる。
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提督と艦娘とスイーツと・63
~潮:ミルクプリン~
「ん~っ♪美味しいですぅ」
俺の目の前で潮が身悶えしている。リクエストはプルプルのミルクプリン。潮が身悶えする度に、プリンじゃない物もプルンプルンと揺れている。
「私、プリンとかゼリーみたいなプルプルしたお菓子が大好きなんです。中でも、ミルクプリンは大好物で!」
「ほ~ん」
「……?どうしたんです、提督」
潮がスプーンを咥えたまま首を傾げる。可愛い。
「いや、やっぱり食い物の嗜好ってのは身体の成長に影響すんのかなぁと」
そう言って俺は潮の駆逐艦らしからぬ成長を遂げている部分を凝視する。
「確かに牛乳は好きですけど、だからおっぱいが大きくなった訳ではないと思いますよ?」
「……はぁ。昔はこういう発言すると茹でダコで涙目になって、そのリアクションが可愛かったんだけどなぁ」
「もう、何年の付き合いだと思ってるんですか。いい加減に慣れちゃいましたよ」
そう、俺が着任してから30年近くの年月が経ったウチの鎮守府の中でも、潮は初期の頃からいる古参組だ。確か金剛よりも早いから、付き合いの長さは相当になる。
「ま、それもそうか。お代わりいるか?」
「お願いします!」
と、元気一杯に空になった皿を突き出す潮。着任当初から考えれば、こんなにも明るい姿は到底思い浮かばないだろう。
~二十数年前(回想)~
「新入りを連れてきたわよ、クソ提督」
「ん……あぁ、入ってくれ曙」
目頭を揉み解しながら、上の空で返事をする。漸く提督としての書類仕事に慣れ始めて来た今日この頃、それでもあのクソ爺から送られてくる書類の山は一向に減らない。女子供を戦場に立たせている分、銃後を守り支えるのは俺の領分だと気張ってはみたものの、流石に丸2日徹夜は堪える。目頭をグリグリと揉んでやると、少しは霞んで見える視界もマシになった。眠気が頭をまだボンヤリとさせちゃあいるが、会話する位なら問題ない。
「お邪魔するわよ」
「邪魔するなら帰ってくれ~」
「っ、そう意味じゃないって解ってんでしょうがこのクソ提督!」
「ハイハイ、クソ提督で結構毛だらけ猫灰だらけってな。んで?そっちの娘が新顔か」
「は……はひっ!あ、あの、綾波型10番艦の、う、潮……です」
10番艦、って事は曙の妹か。それにしては随分と……。
「デカイな」
「ふええっ!?」
潮が今にも泣き出しそうな顔になり、両腕で胸を覆い隠そうとする……が、駆逐艦らしからぬその胸は全く覆い隠せていない。
「ナチュラルにセクハラしてんじゃないわよこのクソ提督!」
と曙が殴りかかって来たが、咄嗟に額でその拳を受ける。曙も艦娘として手加減は解ってはいるが、痛いもんは痛い。
「った……何避けてんのよ!」
「いや避けてねぇし。当たったろ?ココ」
「アタシは顔面ど真ん中殴ろうとしたの!額で受けた時点で避けたも同然よ!」
「幾らなんでも理不尽過ぎねぇか、それは」
「そもそも!潮のおっぱいがデカイとかセクハラ発言するから悪いんでしょこのクソーー」
「あ、曙ちゃん……」
「いや、デカイっていうのは身長だぞ?」
いや、おっぱいもデケーなとは思ったが。
「……は?え?」
「いや、身長。潮の方が曙より3cmはデカイじゃねぇか」
勝手にデカイ=おっぱいと勘違いした曙の方に問題があると思うんだが。
「というか、気にしてたんだな?」
俺がニヤリと笑うと、
「ーーーーーーーっ殺す!」
曙がキレて更に殴り掛かってくる。そして潮はそのやり取りを見て、俺の前で初めて笑ったんだ。
「何を笑ってるんです?」
「……いやなに、ただの思い出し笑いだ。着任の挨拶の時に俺の顔見てベソ掻いてた奴が立派になったなぁってよ?」
「あ、あれは提督のセクハラ発言に怯えたんですっ!」
「本当にかぁ?自分で言うのもなんだが、俺の顔って初対面だとかなりおっかないらしいからな」
初対面のチビッ子には必ずと言っていい程にはギャン泣きされるし、普通に道歩いてるだけで職質されたりするしな。どんだけヤベー顔してんだ俺は。
「確かに、提督の顔はちょっと怖いですけど……」
やっぱ怖いんかい。
「で、でもでも!それ以上に私達を思ってくれているって感じてますから」
「潮……ありがとな」
そう言って俺は潮の頭を撫でてやる。
「それより、ミルクプリンのお代わりください」
ぷくっと頬を膨らませ、少し拗ねたように潮がねだってくる。
「忘れとった、すまんすまん」
俺は苦笑いを返しながら、給湯室の冷蔵庫へと向かう。
「やっぱり何個食べても美味しいですぅ~♪」
潮はまたミルクプリンを食べながら身悶え。その手の中のプリンがプルンプルンと揺れている。それ以外の物もプルンプルンだ。
「しっかし、よく食うねぇ……」
「?」
「いや、やっぱりよく食う奴って肉付きもいいんだなぁと」
潮に限らず、ウチの鎮守府の中だけの話だとしても豊満なボディの持ち主は良く食う奴が多い。まぁ、肉付き=カロリーの塊みたいなもんだから当然っちゃ当然なんだが。
「……やっぱり、提督はおっきい娘の方が好き、なんですか?」
「…………そりゃあなぁ。やっぱり痩せ細ってるよりも肉感的な方が抱き心地がいいし」
痩せ細ってると可愛いとか綺麗なんて言葉は浮かんで来ないんだよな。寧ろ、可哀想とか憐れみの感情が先に来ちまうな、ウン。
「まぁ、デブはお断りだが」
デブと豊満なボディはそれこそ月とすっぽんだ。全く違う。
「でもそれ、曙ちゃんの前ではあんまり言わないであげて下さいね?」
「あん?なんでそこで曙の名前が出てくる」
「曙ちゃん、あんまり、その……おっぱいが大きくならないの気にしてて」
「なんだよ、そんなことか」
思わず盛大に溜め息が漏れる。
「あのなぁ、身体の肉付きってのは成長と同じく個人差が出るもんだ」
筋肉はトレーニングの種類の調整等である程度コントロール出来るが、いかんせん脂肪はどうしようもない。胸に付きやすい奴、腹に付きやすい奴、尻や太股に付きやすい奴。様々だ。
俺は自他共に認めるおっぱい星人だが、オンナの魅力はそれだけではないと知っている。
「まぁ、おっぱいがデカイ方が好みなのは否定せんがな!」
「あぅ……」
俺の勢いに潮が若干たじろぐ。
「じゃ、じゃあ……わ、私の事はどう、ですか?」
「素晴らしいおっぱいだ、好きか嫌いかで言えば大好きだぞ」
「ふええっ!?////」
自分で聞いといて赤面すんなチクショウ、可愛いぞ。だが悲しきかな潮の錬度は95。ケッコンまでの道程はここからが険しい所だ。ウチの鉄の掟、『手を出すのは提督も艦娘もケッコンしてから』の下、幾ら俺が好意を寄せようが手出しは出来ない。否、しちゃいけない。他の連中も歯止めが効かなくなるからな。
「まぁ、お前の好意は受け取っておく。精々早くケッコン出来るように頑張ってくれや」
「はいっ、私頑張りますね!」
潮は眩しい笑顔でそう豪語した。
後書き
遅くなりましたが3話目です。実はまだアンケートの人数が足りておりませんので、アンケートは継続中です。希望のある皆様は是非投票をば。
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