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芸術とガラクタ

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第二章

「私しないから」
「それでなのね」
「いつもそうして描いてるのね」
「絵は」
「絵以外もやってるけれど」
 それでもというのだ。
「もう全力で向かって」
「一気に完成させる」
「それが五十八ちゃんよね」
「完成まで日数がかかる場合もあるけれど」
「それでもね」
「基本一気よね」
「そう、私はそうするのよ」
 こう言って完成させた自分の絵を見て会心の笑みを浮かべていた、五十八にとって芸術それが美術でも書道でも一気にかつ全力で向かうものだった。そしてその作品の評価は。
「独特だな」
「もう全力でぶつかってるな」
「ゴッホとかゴーギャンみたいな感じだな」
「伊藤さんの芸術ってな」
「独特だな」
「絵の具をふんだんに使って」
 まさに絵にそれが浮き出るまでに使っている。
「色彩も派手で」
「タッチも独特で」
「凄いものがあるな」
「アバンギャルドっていうか」
「そんな風だな」
 皆こう言った、五十八の芸術は独特でありアバンギャルドと言っていいものだというのだ。それは彼女自身も認めていて。
 それならとだ、自分の作品をどんどん作って完成させていっていた。だがその中で。
 陶芸部に協力を要請されて今度は陶芸をこれまた凄い勢いで行い独特のものを作った次の日にある美術部員が見せた展示会をネットの画像を観て言った。
「何これ」
「表現の混乱展とかいうのらしいわ」
「ふうん、そんなのあったの」
「東海の方でね」
 見ればそこには色々なものがあった。
 政治家の開いた口にハイヒールのピンを入れていたり人の写真や旗を引き裂いたり燃やしたりおかしな銅像が飾られている。
 そういった画像を何点か見て五十八は同級生である部員に言った。
「これガラクタ?」
「五十八ちゃんもそう思う?」
「悪意あるでしょ」
 五十八はあっさりとした口調で言った。
「これって」
「悪意ね」
「何かしらのね」
「そうね、明らかに私達の作品じゃないわね」
「私の作品独特って言われるけれど」
 それでもというのだ。
「表現の混乱とか不自由とかね」
「感じたことないわよね」
「全然」
 それこそというのだ。
「ないわ」
「そうよね」
「あの、これ誰でも作られるとかじゃなくて」
「全く違うわね」
「誰かを貶めたいでしょ、この政治家さんとか」
 ハイヒールのピンが口に入れられているその作品の画像を見て同級生に言った。
「写真の人とか旗の国をね」
「そうしたものよね」
「私は別にね」
 これといってというのだ。
「誰かを貶めたいとか」
「そうした考えないわよね」
「そんなこと考えたことないわよ」
 一度も、そうした返事だった。
「これまでね」
「作品を作る時に何を考えてるの?」
「もう全力で向かって」 
 その作品にというのだ。
「自分が表現したいものを表現し尽くす」
「その作品において」
「それを考えながら、もう絵の具や汚れ塗れになっても」  
 それでもというのだ。 
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