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歪んだ世界の中で

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第十話 思わぬ、嬉しい転校生その八

 あらためてだ。千春に言ったのだった。
「じゃあお昼は友井君と約束があるけれど」
「それまでは一緒だよ」
「席は」
「隣空いてるかな」
 希望にだ。こう尋ねてきた。
「希望の隣。どうかな」
「あっ、ちょっとそれは」
「空いてないの?」
「先生何て言ってたかな」
 クラスの担任のだ。福田先生はどうかというのだ。
「千春ちゃんの席は何処だって」
「まだ特に何も」
「じゃあ多分ね」
「多分?」
「一番後ろの左端になるよ」
「そこになるの」
「いや、違うかな」
 言った傍からだ。希望は自分の言葉を訂正した。
 そうしてだ。千春にこう言ったのである。
「二学期がはじまったから席替えがあるかな」
「席替えが?」
「丁度千春ちゃんも来たし。新しい机と椅子が一個ずつ入れられてね」
 そうしてだというのだ。
「それで席替えかな」
「じゃあ千春の席はまだ決まってないの」
「どちらにしても決まるのはこれからだと思うよ」
「そうなの」
「多分ね。それじゃあね」
 ここまで話してだ。それからだった。
 希望は千春に今度はだ。こう言ったのだった。
「もうすぐまたホームルームだから」
「そこで千春の席が決まるのかな」
「そうなるんじゃないかな」
 あまりはっきりとはだ。希望は今は答えられなかった。全て憶測だった。
「じゃあ。とにかくね」
「うん、ホームルームね」
「それを受けよう」
「それで席替えがあったら」
「隣同士になれればいいね」
「なれるよ」
 それは間違いないとだ。笑顔で言ってきた千春だった。
「その時は絶対にね」
「なれるかな」
「なれるよ」
 言葉は変わらなかった。笑顔も。
「だって。千春希望のことが大好きだから。そうお願いするから」
「僕達が隣同士になれる様に」
「お願いするから大丈夫だよ」
 何も疑っていない、そして屈託のない笑みえの言葉だった。
「だから希望はその時は安心していいんだよ」
「絶対に隣同士になれるから」
「そうだよ。それじゃあ一緒になろうね」
「うん、隣同士にね」
 希望は千春の今の言葉は根拠がないものだと思っていた。そうとしか思えなかった。しかしそれでもだ。彼もまた席替えの時はそうなると思ったのだった。
 そしてだ。その二人を見てだ。クラスメイト達は。
 怪訝な顔になってそうしてだ。こんな話をしていた。
「あの遠井が何でだよ」
「何であんな奇麗な娘と一緒にいるんだよ」
「しかも何か前から知り合いだったみたいよね」
「何でなんだ?何時の間に」
「何時の間にあんな奇麗な娘と付き合ってるんだよ」
「あんな奴が」
 こう話をしながらだ。彼等は怪訝な顔になっていたのだ。
 そしてだ。彼等はこんなことも言った。
「くそっ、羨ましいな」
「あんな馬鹿でデブで根暗がな」
「いや、もうデブじゃないだろ」
 少なくともだ。このことは否定された。 
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