歪んだ世界の中で
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第七話 洋館の中でその十四
「何時かは」
「そうだね。それが変わることならね」
「是非共」
真人は希望に対して答えた。
「そうなりたいですね」
「そうだね。けれど」
「はい、変わる為には」
「努力が必要だよね」
微笑みでだ。希望はその真人に話す。
「それはね」
「そうですね。では僕も」
「努力するんだね」
「そうします。今よりもずっと」
「じゃあさ。退院したらさ」
「退院したら?」
「友井君のお家に行っていいかな」
昔からよく知っているだ。その家にだというのだ。
「それで二人で遊ばない?」
「久し振りに僕の家で、ですね」
「うん。そうしないかな」
「そうですね。じゃあその時は」
「そうしよう。色々持って来るから」
「楽しみにしています。ですが」
笑顔の中でだ。真人は希望にこう言った。
「家族はいないと思います」
「ああ、おばさん忙しいから」
「姉も働いてますし」
「お姉さん看護士だったよね」
「はい、そうです」
それがだ。真人の姉の仕事だというのだ。
「それで忙しいので」
「いないよね」
「妹も部活で忙しいですし」
最後の一人もだった。希望とは違う意味でだ。真人も孤独だった。
「ですから今もお見舞いも」
「家族の人来てくれなかった訳じゃないよね」
「毎日。誰かは来てくれました。ですが」
「それでもなんだ」
「遠井君は毎日欠かさず来てくれました。それを考えますと」
「いやいや。毎日来てくれたじゃない」
真人が寂しい顔になるのを見てだ。すぐにだった。
希望は笑顔になってだ。その彼を励まして言ったのである。
「おばさん達だってね。忙しいけれど」
「はい、それはわかります」
「そうだよ。やっぱり友井君のことが大事なんだよ」
「そうですね。そのことを忘れたりしてはいけませんね」
「そう思うよ。だからね」
それでだというのだ。希望は温かい、彼が今まで誰にも見せたことのない笑顔になってだ。そのうえで真人に対してこう語ったのである。
「僕と比べないでね」
「家族をですね」
「うん。友井君のことが大事なんだよ」
「上城君のところとは違ってですね」
「僕の家族はどうしようもないから」
自分の家族についてはだ。希望はもう諦めていた。
それで寂しい笑顔になってだ。こう真人に言ったのだった。
「あの家と比べて。友井君の家族の人達は凄いよ」
「ですか」
「あのさ。僕も自分の家庭と比べてるって言われそうだけれど」
それでもだというのだ。希望は言うのだった。
「本当にさ。僕の家のことは知ってるよね」
「おじさんもおばさんも顔を見合せばですからね」
「喧嘩ばかりして自己中心的でさ」
両親のことはだ。希望は忌々しげに話した。
そしてだ。こうも言ったのだった。
「家事だって碌にしないし」
「それで言うことはですね」
「勉強しろだの駄目人間だのね」
罵りやそうした類の言葉だけだというのだ。
「そんな家と比べたらね」
「僕の家はですね」
「凄くましだよ」
こう言うのだった。そしてだった。
その話からだった。彼等は。
少し考えてからだ。こう言うのだった。
「ですね。それじゃあ」
「友井君の家でね。退院したら」
「楽しくやりましょうか」
「うん、そうしよう」
こう話してだった。二人は退院してからのことをだ。笑顔で約束したのだった。希望は真人との友情も深めていっていた。それは馴れ合いではなくだ。真のものだった。
第七話 完
2012・2・14
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