歪んだ世界の中で
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第七話 洋館の中でその十三
「家にいるのは母と姉と」
「妹さんだけなんだ」
「寂しいですよ。それに」
「おじさんのことが」
「憎いです」
この感情をだ。希望に話す真人だった。
「お蔭でお母さんや姉さん達が苦労していますから」
「あのおじさんは」
「遠井君も御存知ですよね」
「うん」
その通りだとだ。希望も答える。
「色々とね」
「そうですね。遠井君にも酔ってビール瓶を投げたりしましたね」
「そんなこともあったね」
「お酒ばかり飲んで博打ばかりして」
「それにだったね」
「女遊びもして」
つまりだ。飲む、打つ、買うだったというのだ。真人の父は。
そしてだ。今はだというのだ。
「家を出て行きました。借金を置いて」
「どうなったのかな」
「多分ですが」
「多分?」
「蒸発したと思います」
そうなったとだ。苦々しい顔で言う真人だった。
「もう二度と会いたくないです。それに」
「それに?」
「僕は。あの男の評判のせいで」
そのせいでだというのだ。
「子供の頃から周りにいじめられて馬鹿にされてましたから」
「そうだったね。友井君も」
「ですがその僕に」
希望を見てだ。真人は言った。
「遠井君はずっと一緒にいてくれましたよね」
「僕が」
「はい、そうしてくれてますよね」
「僕もね」
「僕達は同じですから」
二人の境遇はだ。孤独という意味ではだった。
同じだとだ。こう言ったのである。
「ですから」
「そうだね。僕達は同じだから」
「互いの傷を癒す為もありましたけれど」
その理由と共にだった。
「御互いを理解できるから」
「だから一緒にいるんだね」
「僕は。遠井君が好きですよ」
「僕もだよ」
二人でだ。見合って話すのだった。
「友井君は僕がどれだけ馬鹿にされても一緒にいてくれたよね」
「僕と一緒にいてくれてますから」
「だからだね」
「はい、だからこそです」
それでだというのだ。そしてだ。
真人は希望にだ。こうも言ったのだった。
「ですから」
「そうですね。ただ」
「ただ?」
「僕は遠井君がいてくれて」
「そして僕もだね」
「僕がいるんですね」
「そうだよ。僕達はずっと一緒だよ」
希望も真人に言う。その話をしながらだ。
彼はだ。こうも話した。
「それに今の僕には」
「はい、今の遠井君は変わっていっています」
「あの娘のお蔭で」
「そうです。その遠井君を見ていると僕も」
「友井君もだね」
「そうです。嬉しいです」
こう言うのだった。そしてだった。
そのうえでだ。真人もだというのだった。
「僕ももっと変わろうと思います」
「友井君も」
「僕もこれまでは。変われなかったです」
「えっ、いやそれは」
「そうだったんですよ」
これが今の真人の言葉だった。
「実は。怖くて」
「変わることが」
「はい。そして確かに憎いですが」
「おじさんをだね」
「何時かこの憎さも忘れたいですね」
「その憎しみも」
「変わることが。憎しみを忘れることなら」
それならばだというのだ。
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