歪んだ世界の中で
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第四話 努力をしていきその十
「そうするよ。それにしても本当にこのお店は紅茶も」
「美味しいよな」
「そのことがわかったよ」
「じゃあこれからも?」
「飲むよ」
この店の紅茶、それをだというのだ。
「そしてね」
「希望のお家でも」
「正直さ。全然楽しくなかったよ」
言葉は既に過去形になっていた。しかしだった。
今彼はそのことに気付かずにだ。さらに言うのだった。
「何をしても。けれどね」
「紅茶を淹れることは?」
「楽しめそうだね」
微笑みだ。こう答える希望だった。
「それじゃあね」
「うん、それじゃあ」
「紅茶かあ。いいよね」
「お茶はね。人を楽しい気持ちにしてくれるのよ」
「それはどうしてかな」
「お茶はね。とても優しいのよ」
そのお茶のことをだ。聡美はにこりと笑ってここではこう話した。
「人に対しても私達に対しても」
「そうなんだ。優しいから」
「だから楽しい気持ちにさせてくえるの」
「成程ね。優しいものを飲むと」
「楽しい気持ちになれるよ」
「苦しいのより楽しい方がいいよ」
人間としての当然の感情でだ。話した希望だった。
「もう今みたいに辛いのはね」
「それは嫌よね」
「うん、沢山だよ」
もうそれはだというのだ。希望は高校に入ってからそうした目にばかり遭ってきた。これで真人がいなければ本当にだ。彼はどうなっていたかわからない。
それでだ。さらに話す彼だった。
「だから。少しでも多くね」
「楽しくなりたいのね」
「なりたいよ、本当にね」
心からだ。彼は言葉を出した。
「苦しかったよ。地獄だったよ」
「地獄だったの」
「暗くて冷たくて」
「熱いよりも辛かったの」
「冷たかったよ、何よりも」
千春の熱さよりもだった。希望はその中にいてだったのだ。
それでだ。彼は言うのだった。
「あんなのはもう絶対に嫌だから」
「だから紅茶もね」
「淹れるのね」
「そうするよ。楽しくなるよ」
「楽しくなるのならね」
希望が言うとだ。千春もだ。
笑顔になってだ。それで話したのだった。
「千春も一緒だよ」
「千春ちゃんも」
「そう、一緒だよ」
明るい笑顔になりだ。千春は希望に晴れやかに応えた。
「千春はずっと希望と一緒だからね」
「じゃあ一緒に楽しくね」
「楽しくやろう」
「二人でね」
希望は今日千春に会いプールに行く前よりもだ。明るい顔になってだ。そうしてだった。
笑顔で彼女と話して紅茶を飲み別れた。その後でだ。
彼は家に戻り夕食までにランニングをしてシャワーを浴びた。そうしてすっきりしてからだ。
夕食を食べてだ。それからだった。
家にあった紅茶のティーパックを使いだ。それでだ。
紅茶を淹れてだ。その紅茶を飲む。その彼を見てだ。
父がだ。眉を顰めさせて彼にこう言ってきた。
「何だ、それは」
「紅茶だけれど?」
「御前が淹れたのか?」
「うん、そうだよ」
今まさにそうしているとだ。答える希望だった。
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