歪んだ世界の中で
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第四話 努力をしていきその九
「幸せになれるよね」
「落ち着くよ」
また言う希望だった。しかしだ。
何故千春が緑について聞いたのかについては考えずにだ。今はだ。
あらためてだ。こう千春に言ったのだった。
「じゃあ注文は」
「紅茶にするのね」
「うん、このお店だとコーヒーだったけれど」
「今日はね」
「紅茶にするよ」
千春の誘いを受けてだ。そうするというのだった。
しかしその中でだ。千春はコーヒーについても言及した。
「ただ。千春コーヒーもね」
「それも好きなんだ」
「あれも千春のお友達だから」
「お友達?」
「そう、お友達なの」
コーヒーについてだ。千春は何故かこんなことを言った。この何故かは希望から見てだ。彼にとっては千春の今の言葉はどうにもわからないことだった。
だがそれでもだ。千春はさらに言うのだった。
「お茶と一緒でね」
「コーヒーもお茶もお友達っていうと」
希望はその言葉の意味がわからない。しかしだ。
考えてみた結果だ。こう述べたのだった。
「それだけ好きってことなんだ」
「うん、どっちも大好きだよ」
「コーヒーも好きだったんだ」
「大好きだよ。けれど今はね」
「紅茶を飲みたいんだ」
「そう、飲もう」
こう話してだ。二人でだった。
紅茶を頼みだ。そのうえでだった。
二人のところに来た長身ですらりとした。モデルの様なお店の人に紅茶を注文してだ。そしてだった。
来た紅茶を飲みだ。まずは希望が言った。
「このお店って紅茶も」
「美味しいよね」
「うん、凄くいいよ」
飲んでみての言葉だった。希望の彼が笑顔になっている。
「お砂糖入れてないのに甘いし」
「お茶の甘さだよ」
「そうだよね。お茶の甘さだよね」
「それがそのまま出ているなんて」
「それに香りもね」
「いいね。こうして飲んでると」
紅茶をだ。そうしているというのだ。
「家でも飲みたくなったよ」
「紅茶を?」
「うん、飲みたくなったよ」
こう話すのだった。
「僕も淹れてみるよ」
「紅茶淹れたことないの?」
「家で紅茶飲んだことはそういえば」
まただ。ここで気付いたのだった。最近家にいてもだ。
彼は楽しく感じていなかった。落ち着いたりすることもなかった。だからだ。
紅茶を淹れて飲むこともだ。それもだった。
そのことに気付いてだ。それで言うのだった。
「なかったよ、最近」
「最近?」
「高校に入ってからね」
「そうだったの」
「家にいても何も面白くなかったり」
「どうしてたの?お家で」
「自分の部屋にいただけだよ」
そこでゲームをしたりテレビを観たり。それか寝ているか。
真人がいないと彼は本当に一人だった。家でも孤立していたのだ。
だからだ。紅茶を淹れるということもだったのだ。
「そんなことはね」
「そうなの。けれど」
「うん、今はね」
「お茶淹れてみる?」
「そうしてみるよ」
こう言うのだった。
「これからはね」
「そうするといいよ。お家でもね」
「落ち着くべきかな」
「楽しんだらいいから」
それ故にだというのだ。
「だからね。お家でもお茶淹れてみて」
「そうするよ。ティーパックでもね」
それでも茶を淹れること、だからだというのだ。
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