戦国異伝供書
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第百十八話 水色から橙へその三
「励んでおります」
「そうであるな」
「ですがこれが中々」
「そうであるな、しかしな」
「しかしといいますと」
「わしはお主をそのままじゃ」
「島津家の主にとですか」
「考えておる、変えるつもりはない」
全くという返事だった。
「まさにな」
「だからですか」
「うむ、それでじゃ」
「それでといいますと」
「お主はそのまま学問と武芸に励むのじゃ」
そうせよというのだ。
「そして何よりどっしりと構えてじゃ」
「そうしてですか」
「おるのじゃ、お主は島津家の主となる」
だからだというのだ。
「どっしりと構えて治めよ」
「島津家を」
「そして領地をな」
「その両方をですか」
「治めていくのじゃ」
「そうすればいいですか」
「うむ、そうせよ」
こう義久に言うのだった。
「よいな」
「わかり申した、それでは」
「お主はそれでい、そして」
「そして?」
「お主は兄弟仲をじゃ」
それでというのだ。
「しかと守れ」
「それをですか」
「そして家中をじゃ」
「守るのですか」
「そうせよ」
まさにというのだ。
「よいな」
「それもそれがしの務めですか」
「そうじゃ」
まさにというのだ。
「全てな」
「それでは」
「そしてな」
「島津家を大きくしていくのですか」
「そうせよ、わかったな」
「さすれば」
「お主達は四人共英傑じゃ」
兄弟全員がというのだ。
「又四郎と又七郎は文、又六郎は智でな」
「そしてそれがしは、ですか」
「政じゃ、それで島津家を栄えさせよ」
「島津家の主として」
「よいな」
祖父は微笑んでさえいた、そしてだった。
元服して間もなかった義久はこの時から常に落ち着き気を確かに持ってそうして学問にも武芸にも励み。
弟達にも家臣達にも堂々と振舞った、すると家臣達はその義久を見て口々に話した。
「まるで別人じゃな」
「落ち着きを持たれる様になられた」
「実に立派になられた」
「今の又三郎様なら問題ない」
「うむ、先はよい主になられるな」
この島津家のとだ、彼等は言ってだった。
義久を島津家の先の主と思う様になった、そして弟達は最初から彼を長兄将来の自分達の主と思っていたが。
三人で義久の前に控えて言った。
「家臣達もようやくわかりましたな」
「兄上の真価が」
「そうなりましたな」
「そうやもな、しかしわしが思うことは」
義久はその三人に答えた。
「家をまとめて終わりではない」
「これからですな」
「大事なことは」
「そう言われますか」
「うむ」
そうだというのだ。
ページ上へ戻る