戦国異伝供書

「そうなりますな」
「はい、それでどちらの方が」
「我等は最後ということで」
　顕如は笑って述べた。
「僧の身で」
「それで、ですか」
「最後ということで」
「そう言われますか」
「ですから」
　それでというのだ。
「そういうことで」
「それでは」
「はい、宜しくお願いします」
　こう言って島津家に譲るのだった。
「この度は」
「それでは」
「では兄上」
　義弘が義久に話した。
「これより」
「うむ、当家の話をな」
「しましょうぞ」
「それではな」
「島津家といえばです」
　明智が言ってきた。
「やはり」
「はい、我等四兄弟ですな」
「そのご活躍ですな」
「いや、そのお強さときたら」
　高橋紹運が言ってきた。
「若しあと一歩です」
「我等が来ていないと」
「果たしてどうなったか」
　明智に対して真剣な笑顔で答えた。
「わかりませんでした」
「そして九州もですな」
「あと一歩で」
　まさにというのだ。
「そうなっていました」
「あの時はそれを阻まれ無念でしたが」
　義久がまた言ってきた。
「過ぎればです」
「そのこともですか」
「終わったことなので」
「よいですか」
「はい」　
　こう明智に答えた。
「そう思っています」
「左様ですか」
「そしてです」
「これからですか」
「我等のことをお話しましょう」
「それではお聞かせ下さい」
　こうしてだった、義久そして四兄弟が島津家のことを話しはじめた、その話はどういったものかというと。
　その時義久に対して彼の祖父忠良はこう言っていた。
「世ではお主を愚兄賢弟と言っておるな」
「はい、そのことを悪いことと思い」
　この時まだうだつの上がらない彼はこう祖父に返した。
「日々です」
「励んでおるな」
「学問にも武芸にも、ですが」
　それでもというのだ。
「戦の采配や武芸では又四郎、又七郎が秀でていて」
「そしてじゃな」
「知略では又六郎が」
　彼がというのだ。
「優れていてです」
「お主はじゃな」
「何もありませぬ、そう思い」
「日々書を読んでおるな」
「学問だけでなく武芸にもです」
　そうしたことにもというのだ。