英雄伝説~灰の騎士の成り上がり~
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第113話
~ルーレ市内~
「「コォォォォォ……ハアッ!!」」
「行くぜ……!――――――らぁぁぁぁぁっ!!」
「雷よ―――あたしに力を!!」
「まだまだこれからだよっ!!」
「機を逃すな――――一斉にかかれっ!!」
「戦場の戦士達に祝福を―――戦意の祝福!!」
「みんな―――受け取って!!」
戦闘開始時ラウラとアンゼリカ、アッシュとサラ、アネラスはそれぞれ自己強化技で自身を強化し、ユーシスとシェラザード、アリサはそれぞれクラフトや魔術で味方に様々な支援効果を付与した。
「神よ……我らに聖なる加護を―――聖戦士の領域!!」
一方ルシエルは物理、魔法能力の全てを強化する魔術で自分を含めた味方全員を強化し
「女神アイドスよ、星の輝きを今ここに―――スタークロス!!」
「降り注げ、凍てつく刃―――氷針雨!!」
ユリーシャとレジーニアはそれぞれアリサ達目掛けて魔術を放った。
「月の加護をここに――――――クレシェントシェル!!」
「くっ!?これはまさか……!」
「いたっ!?ふむ、魔法反射結界とはね。」
二人が魔術を放った直後にエマは味方に魔法反射の結界を付与して魔術によるダメージを術者である二人に跳ね返した。
「でやぁっ!!」
「もらったぜっ!」
「そこだっ!!」
そこにダメージを受けた二人に更なる追撃をする為にラウラ、アッシュ、ガイウスは跳躍して二人に追撃をしようとしたが
「第一前衛、わたくしと共に二人への追撃を妨害しなさい!崩れなさい――――――双葉崩し!!」
「はいっ!――――――させぬっ!!」
「聖なる刃を受けよっ!!」
「く……っ!」
「チィ……ッ!」
「ぐ……っ!?」
ルシエルの指示によってヘルテ種の天使達がルシエルと共にそれぞれ跳躍した3人に攻撃を放ってユリーシャとレジーニアへの攻撃を中断させて地面に着地させた。
「「「エニグマ駆動―――」」」
「……………………」
トワ、エリオット、エマはそれぞれアーツを放つ為にエニグマを駆動させ始め、シェラザードは魔術の詠唱を開始したが
「第一後衛、射てっ!!」
「はいっ!――――――そこですっ!」
「狙いは外しません!!」
「行きます……!」
ルシエルの指示でエンジェル種の天使達が一斉に魔力の矢による狙撃で駆動や詠唱の妨害を行ってアーツや魔術の発動を中断させた。
「第二、第三後衛詠唱及び駆動始め!ユリーシャ、レジーニア!貴女達もお願いします!エニグマ駆動―――」
「はいっ!!」
「わかりました!エニグマ駆動―――」
「了解。エニグマ駆動―――」
ルシエルはフォドラエル種の天使達とザフィエル種の天使達に指示をした後アーツを放つ為に自身のエニグマを駆動させ、ルシエルの指示を聞いたそれぞれの天使達は魔術やエニグマの駆動を開始した。
「チィッ!前衛の攻撃が届かない上空から魔術やアーツを放つとか反則だろ!?―――クイックバースト!!」
「対空攻撃で妨害するしかないわ!ヤァァァァァ……ッ!」
「貫け―――ミラージュアロー!!」
「そこだ――――貫け!!」
「排除する。」
「ぶっ放せ~!!」
一斉に詠唱や駆動を始めたルシエル達の様子を見たクロウは舌打ちをした後ルシエル達目掛けて双銃の連射攻撃を放ち、クロウに続くようにサラ、アリサ、マキアス、フィーはそれぞれが持つ射撃攻撃をルシエル達目掛けて放ち、ミリアムはオーバルギアに搭載されているグレネードをルシエル達に放ったが
「第二、第三前衛、盾で防ぎなさい!」
「ハッ!!」
アークエンジェル種とアプサエル種の天使達がルシエル達の前に出てそれぞれが装備している盾を構えてクロウ達の妨害攻撃を受け止めた。
「対空攻撃の手段がない人達は相手の一斉攻撃と一斉攻撃の後のわたし達の反撃に備えて支援アーツの準備をして!エニグマ駆動―――ラ・クレスト!!」
「承知!エニグマ駆動―――アースグロウ!!」
「へっ、仕方ねぇなぁ……!エニグマ駆動―――ラ・フォルテ!!」
「チッ、支援なんてガラじゃねぇが……!エニグマ駆動―――メルティライズ!!」
「エニグマ駆動―――シルフィード!!」
「エニグマ駆動―――フォルトゥナ!!」
「やれやれ、翼で大空を舞う仔猫ちゃん達には何とか地上に降りてもらわないと、まともに攻撃を叩きこむことすらできないね。エニグマ駆動―――」
サラ達の攻撃が防がれている様子を見たトワは指示を出した後支援アーツを発動させて自分達を強化し、トワの指示を聞いたラウラ、アガット、アッシュ、アネラス、ガイウスはトワに続くようにそれぞれ支援アーツを発動させて自分達を強化し、アンゼリカはルシエル達の一斉攻撃に備えて最高位の回復アーツを放つ為に長い駆動を始めた。
「アーツ適正の高い人達はアーツで反撃するわよ!エニグマ駆動―――」
「はい!エニグマ駆動―――」
「フン、全員纏めて撃ち落としてくれる!エニグマ駆動―――」
トワに続くように更なる指示を出したシェラザードはエニグマを駆動させ始めて攻撃アーツの準備を始め、シェラザードの指示を聞いたエリオットとユーシスも攻撃アーツの準備を開始し
「私はもう一度結界を貼ります!月の加護を――――」
エマは再びクラフトで味方に魔法反射の結界を付与しようとした。
「第一後衛、第二目標に集中射撃!」
「はいっ!――――――させませんっ!!」
「これは見切れますか!?」
「裁きの矢を!!」
「あぁっ!?」
しかしエマの言葉を聞いたルシエルの指示を受けたエンジェル種の天使達の集中射撃を受けてクラフトの発動寸前に動作を中断されたエマはクラフトの発動を失敗した。
「輝け、裁きの金耀――――――ゴールドハイロゥ!!」
「舞え、炎の蝶達よ―――フレアバタフライ!!」
「漆黒の魔剣よ、裁きを――――――シャドーアポクリフ!!」
「出でよ、銀の塔――――――ガリオンタワー!!」
「浄化の光よ、今ここに―――贖罪の光霞!!」
「出でよ、凍てつく刃―――ダイヤモンドダスト!!」
「爆ぜよ、浄化の光―――爆裂光弾!!」
そして詠唱や駆動を終えたルシエル達は一斉に高火力のアーツや魔術を放ってアリサ達に大ダメージを与えたが
「救いの光よ、私達に―――セレスティアル!!」
ルシエル達の攻撃に備えて駆動を終えたアンゼリカの最高位の回復アーツによってアリサ達が受けたダメージは全回復した。
「第一後衛、範囲射撃で敵の足止めを行いなさい!」
「はいっ!――――――降り注げ!!」
「逃しません!!」
「浄化の光の矢よ!!」
ルシエル達の一斉攻撃が終わるとルシエルの指示によってエンジェル種の天使達がアリサ達に無数の矢の雨を降り注がせてアリサ達を怯ませ
「――――――今です!第二前衛は第一目標、第三前衛は第二目標に集中攻撃しなさい!第一前衛は二手に分かれてそれぞれの目標の攻撃を!」
「はいっ!」
アリサ達が矢の雨に怯んでいるとルシエルの更なる指示によってアークエンジェル種の天使達はトワに、アプサエル種の天使達はエマ目掛けて一斉に襲い掛かり、ヘルテ種の二人の天使も二手に分かれてそれぞれトワとエマに襲い掛かった。
「え?え?え……ッ!?」
「……ッ!」
「トワ達はやらせないよ……!」
「―――受け止めるぞ!!」
天使達に一斉に襲い掛かられたトワは一瞬困惑した後驚きの表情を浮かべ、エマは身をすくめ、アンゼリカとクロウはトワ達の前に出てそれぞれ迎撃の構えをし、アンゼリカ達に続くように前衛担当の仲間達もそれぞれトワ達の周りを固めて天使達の攻撃を受け止めた。
「ハッ、ようやく空から降りてきたな!――――――逝きやがれっ!!」
「せーの……!ヤァァァァァ……ッ!止め!!」
「跪け――――セイヤアッ!!」
「二の型――――――疾風!!」
「竜巻よ―――薙ぎ払え!!」
「貫け―――アクアスパイラル!!」
仲間達が天使達の攻撃を受け止めている間に反撃を開始したアッシュ、フィー、ユーシス、アネラス、ガイウス、マキアスはそれぞれ側面から天使達に攻撃を叩き込んでダメージを与えると共に怯ませ
「「「エニグマ駆動―――」」」
仲間達が天使達を攻撃している間にアリサ、エリオット、シェラザードは攻撃アーツを放つ為にエニグマを駆動させ始めた。
「駆動を中断させなさい、第一後衛!!」
「はいっ!――――――そこですっ!」
「狙いは外しません!!」
「行きます……!」
「キャアッ!?」
「うわっ!?」
「……っ!?」
しかし駆動を始めたアリサ達の様子を見逃さなかったルシエルの指示によって再びエンジェル種の天使達による妨害狙撃が行われ、駆動は中断された。
「逃しはせぬ―――――セェェイッ!!」
「そこだぁっ!!」
「いくよ、オーちゃん!とっしー―――――ん!!」
「せいっ!キ―――――ック!!」
「切り刻め―――――ヤァァァァッ!!」
「ハァァァァァ……食らいやがれ!!」
「いっくよ~!――――――シュート!!」
「踊れ―――――アステルフレア!!」
天使達が怯むと天使達の攻撃を受け止めていたラウラ、アガット、ミリアム、アンゼリカ、サラ、仲間達に守られていたトワ、エマがそれぞれクラフトで追撃して更なるダメージを与えた。
「全前衛、一旦空に離脱しなさい!第二後衛並びにユリーシャとレジーニアは詠唱もしくは駆動時間が短いかつなるべく広範囲の魔法で味方の離脱時間を稼いでください!第一後衛は牽制射撃を!第三後衛は前衛達の回復を!」
「了解しました!裁きを――――――光焔!!」
「エニグマ駆動―――エアリアル!!」
「光よ―――光霞!!」
「エニグマ駆動―――シルバーソーン!!」
「そこですっ!!」
「これは見切れますか!?」
「裁きの矢を!!」
アリサ達の攻撃によって傷つき始めた前衛の天使達の様子を見たルシエルは新たなる指示を出し、ルシエルの指示によってユリーシャとレジーニア、フォドラエル種達が詠唱や駆動時間が短い魔術やアーツで離脱しようとする天使達に追撃をしようとするアリサ達を攻撃してアリサ達の攻撃を中断させ、エンジェル種の天使達は弓矢による牽制射撃を行い、ルシエルとザフィエル種の天使達は魔術やオーブメントの駆動を開始し
「今回復を――――――癒しの風!!」
「聖なる風よ――――――ホーリーブレス!!」
「回復します―――癒しの風!!」
詠唱や駆動を終えたルシエル達は回復魔法を前衛の天使達に放ってアリサ達から受けたダメージを回復させた。
「か、回復魔法まで扱えるなんて……」
「まあ、師匠から聞いた話だと天使族は基本神聖魔術もそうだけど治癒魔術を扱えるらしいから、向こうも回復魔法を習得していることは予想できていたけどね……」
「チッ……連中が空に戻った上回復までされたから、状況は振り出しに戻っちまったようなものじゃねぇか……!」
ルシエル達による回復魔法によって自分達が与えたダメージを回復される様子を見たアネラスは不安そうな表情で呟き、シェラザードは疲れた表情で溜息を吐き、アガットは舌打ちをして厳しい表情を浮かべた。
その後アリサ達はルシエル達との戦闘を続けたが、ログナー侯爵家へ向かう隙もなく、またルシエルの巧みな指示による天使達の連携攻撃に苦戦していた。
「チィ……ッ!パイセンの実家に行くどころか、この場から移動する隙もねぇじゃねぇか……!」
「飛行型魔獣との戦闘の経験で上空に退避されたらこっちの攻撃が届かないから厄介なのは最初からわかってはいたけど……」
「連中はそれを組織だった動きに加えて連携までしてきやがるから、ある意味俺達と同じ地上でやり合う”執行者”達よりも厄介な連中だぜ……!」
苦戦している状況にアッシュは舌打ちをして厳しい表情を浮かべ、シェラザードは真剣な表情でルシエル達を見つめ、アガットは厳しい表情でルシエル達を睨んだ。
「今までのユリーシャさん達の動きから判断するにルシエルさんがユリーシャさん達の”指令塔”のようだから、ルシエルさんを無力化できれば相手が動揺して隙はできるとは思うけど……」
「こっちの攻撃が届きにくい上空で指示を出しているのが厄介。」
「上空に向けた攻撃はクラフトもそうだが弾丸も矢も重力の関係で威力が落ちる上、向こうは攻撃をされた時の防御手段まであるからな……」
トワは不安そうな表情でルシエルを見つめながら分析し、トワの分析を聞いたフィーは厳しい表情で、マキアスは複雑そうな表情でそれぞれ答えた。
「――――――だったら、こっちが同じ上空で仕掛けるだけよ!」
一方サラはルシエルを睨んだ後素早い動きで周囲の建物の壁を蹴ってルシエル達と同じ高さの屋根へと昇り
「ノーザン――――――イクシード!!」
全身に紫電を纏ってルシエル目掛けて襲い掛かった!
「甘い!」
しかしルシエルは双剣でサラの強襲攻撃を受け流し
「チ……ッ!」
「ハァァァァァ……ッ!」
攻撃を受け流されたサラは舌打ちをした後地上へと落下しながらルシエル目掛けて雷の銃弾を連射したがルシエルは双剣を振るって襲い掛かる弾丸を全て無効化した。
「翼無き者がわたくし達天使相手に空で仕掛ける事はあまりにも愚かである事をその身に刻んでさしあげましょう。ハァァァァァァ…………!奥義―――遥翔天凰斬!!」
「あぐ……っ!?カハ……ッ!?」
そしてルシエルは落下していくサラ目掛けて縦横無尽に飛び回りながらサラに連撃を加えてダメージを与え続けた後止めに強烈な一撃をサラに叩き込み、ルシエルの止めの一撃を強化ブレードで受け止めたサラはルシエルの強烈な一撃による衝撃によって地面に叩きつけられた!
「だ、大丈夫ですか、サラ教官!?」
「くっ……あまり前に出ずに後ろで頻繁に指示ばかり出していたから、本人の実力は大した事はないと思っていたけど、指令塔であるあの天使自身も相当な使い手ね……!」
「リィンが新たに契約したあの天使――――――レジーニアが言っていたように、”戦闘型天使”としての戦闘能力も伊達ではないようね。」
地面に叩きつけられたサラを見たエリオットは心配そうな表情で声をかけ、サラは呻き声を上げながら立ち上がり、セリーヌは目を細めてルシエルを見つめた。
「それよりもさっきから気になっていたが……彼女達はトワとエマ君を意図的に狙っていないかい?」
「言われてみれば……」
「会長の事を”第一目標”、エマの事を”第二目標”って言っていたから、どうやらあの天使達は会長とエマを真っ先に無力化したいみたいだね~。」
「で、でも……どうしてトワ会長とエマを……」
真剣な表情で呟いたアンゼリカの話を聞いたラウラとミリアムは真剣な表情でルシエル達を見つめ、アリサは戸惑いの表情を浮かべた。
「それは勿論、主達から君達の事を聞きだしたルシエルがその二人が”要注意人物”だと判断したからだよ。」
「彼女がリィン達からオレ達の事を……?」
「貴様らはリィン達から俺達の何を聞きだしたのだ?」
レジーニアの説明を聞いたガイウスが戸惑っている中、ユーシスは真剣な表情でルシエル達に問いかけた。
「”全て”です。得物や戦闘能力は勿論の事、性格や人間関係等も。――――――それらを吟味した上で、内戦では作戦立案等”紅き翼”の”頭脳兼指令塔”であったトワ・ハーシェル並びに転位魔術の使い手であるエマ・ミルスティン。貴女達を最優先に無力化する対象と判断しました。」
「……っ!」
「ま、まさか私とトワ会長を執拗に狙ってきた理由は……」
「トワは俺達の今の戦況を改善する作戦を思いかせない為とエマは転位魔術でお前達を無視して一気にゼリカの実家に到着させない為って所か。ったく、俺達の事について知っている事全部教えるとか、俺より容赦してねぇんじゃねぇのか、リィン達は……!」
「チッ、転位魔術には普通の魔術よりも詠唱や集中する時間が必要な事もわかっていたから、エマに転位魔術の詠唱させる暇を与えない為にも執拗に狙ってきたのね。」
ルシエルの答えを聞いたトワは息を飲み、エマは複雑そうな表情で呟き、厳しい表情で推測を口にしたクロウは疲れた表情で声を上げ、セリーヌは舌打ちをして厳しい表情でルシエル達を見つめた。
「……なるほどね。ちなみにⅦ組(わたし達)の中で一番実力があるサラを危険視していなかったのはなんで?」
「サラ・バレスタイン。リィン少将達から聞いた情報を整理して判断するに、彼女は戦闘能力しか取り柄がなく、ミュゼやレン皇女も彼女の事を”脳筋”と評価していましたし、レン皇女からは”紅き翼”の中で唯一警戒すべきはトワ・ハーシェルの”上に立つ者としての判断、才能、指揮能力”と助言を受けています。以上の事からサラ・バレスタインは”神格者”でもなく、”英雄”クラスでもない”少々”実力がある力押し一択の人間である事は明白でしたし、そのような者はこの”知”があるわたくしからすれば一番扱いやすい相手の為、そちらの二人と比べれば大した障害ではなかったからです。」
「誰が戦闘能力しか取り柄のない上扱いやすい”脳筋”ですって!?殲滅天使やあの公女といい、アンタといい、腹黒い事を考えるのが得意な連中は揃いも揃ってよくもそこまで人の事をバカにできるわね……!」
フィーの質問に答えたルシエルの答えを聞いたアリサ達が冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中サラは顔に青筋を立ててルシエルを睨み
「チッ、トワの頭脳を警戒するのもわからなくはないが”騎神”の”起動者”である俺の事も”格下”と見ているようだな、殲滅天使やお前達は……!」
クロウは舌打ちをしてルシエル達を睨んだ。
「別に”騎神”の戦闘能力を侮ってはいません。リィン少将達の”騎神”達を扱った模擬戦等を見ている為、騎神や機甲兵の戦闘能力は遥か昔から魔族達と戦い続けたわたくし達”天使”にとっても決して無視できないものだと理解していますが……この状況で貴方達は”騎神や機甲兵による戦闘ができるのですか?”」
「ハッ、上等じゃねぇか!そんなにお望みなら、今すぐ見せてやるぜ!パイセン、さっさと俺達の機甲兵をここに呼んで――――――」
「――――――ダメ!こんな所でオルディーネ達を呼んで戦闘したら周りの人達もそうだけど建物にも大きな被害を与えるよ!」
クロウの言葉に対して答えた後挑発するかのように不敵な笑みを浮かべたルシエルの指摘に対して鼻を鳴らしたアッシュはクロウに視線を向けてオルディーネ達を呼ぶように促しかけたがトワがすぐに制止の声を上げた。
「た、確かにこんな建物がすぐ近くにある場所で騎神や機甲兵みたいな大型の人形兵器を呼び寄せるどころか、それらを扱って戦闘すれば確実に周りの建物にも被害が出ちゃうよ……!」
「被害が建物だけならまだマシなくらいだ。市街戦に巻き込まれないように屋内に避難した市民達を巻き込む最悪の事態も十分にありえるぜ。」
「そ、そんなことになれば連合どころかルーレの市民達から僕達もそうだが、殿下達が批難された挙句責任を追及されることになるんじゃないか……!?」
「――――――!まさか……最初からそれが狙いで、この場であたし達に仕掛けたのかしら?」
トワの制止の言葉を聞いたエリオットは不安そうな表情で周囲の建物を見回し、アガットは厳しい表情で推測し、アガットの推測を聞いたマキアスは不安そうな表情で声を上げ、ある事に気づいたシェラザードは真剣な表情でルシエル達に問いかけた。
「ええ。幾ら今まで行わなかった事―――例えば相手の立場を陥れる等と言った人から恨みを買う事を実行した貴方達でも、”焦土作戦”を行ったエレボニア帝国政府のように民達の家を破壊するもしくは民自身を傷つける等と言った”外道の行い”まではできないでしょう?――ましてや『民間人の安全と地域の平和を守る』存在である”遊撃士”の協力を受けている状況で、その”遊撃士”の行動理念に反する行為を遊撃士達の目の前で貴方達が実行できるかどうかもそうですが、貴方達の戦闘によって被害を受けた市民達に対して責任を取る事ができるのですか?」
「ああ、なるほど。君が主達に言った彼らが”切り札”として使ってくる”騎神”や”機甲兵”の”対策”とはこの事だったのか。」
「”騎神や機甲兵を使えない状況に陥らせる”事で、彼らの”切り札自体を封じる”……という訳ですか。」
シェラザードの問いかけに肯定したルシエルは不敵な笑みを浮かべてアリサ達に問いかけ、その様子を見守っていたレジーニアは納得した様子で呟き、ユリーシャは静かな表情で呟いた。
「ま、まさか遊撃士の存在と協力もそうだけど、”市街戦という状況”を利用してⅦ組のみんながこの場で”騎神”達を利用した戦闘できないようにするなんて……」
「まああたし達がいなくても、元からそんなとんでもない事をする度胸はその子達にはないし、そもそもオリビエ達もそうだけどサラも許さないわよ。」
「チィ……ッ!あのクソガキ―――いや、それ以上に性質の悪い事を考えやがる天使だな……!」
「こ、この冷酷外道天使……!民間人や民間人の家財を盾にするなんて、それが自ら”正義”を名乗る天使のやり方だって言うの!?」
「そーだ、そーだ!”正義”を名乗るんだったら、降りてきて正々堂々と勝負しろ~、卑怯者~!」
「”冷酷外道”や”卑怯者”とは心外ですね。”勝利”の為に”戦場”となる”地形”を利用し、”全員飛行可能”というわたくし達の”特性”を最大限に生かす事は”戦術の基本”ですし、わたくし達は直接市民達を人質に取って盾にするような事は行っていません。”戦場”となっているこの場の周囲の状況を貴方達に教えただけです。」
ルシエルの問いかけを聞いたアネラスは不安そうな表情で呟き、シェラザードは疲れた表情で呟き、アガットは舌打ちをして厳しい表情で、サラは悔しそうな表情でそれぞれルシエルを睨み、サラの言葉に続くようにミリアムは不満げな表情でルシエル達を見つめて指摘し、サラとミリアムの言葉に対してルシエルは呆れた表情で答えた。するとその時大きな音がルーレ市内に響き渡った。
「今の音は一体……?」
「!ま、まさかリィン達……!?」
音の正体が気になったガイウスは眉を顰め、すぐにある事に気づいたアリサは血相を変えてログナー侯爵家の屋敷がある方向に視線を向けた。
~ログナー侯爵家~
「ぐあああ………っ!?」
「申し訳……ございません……お館……様……!」
「無念……」
一方その頃、ログナー侯爵家の屋敷の前で陣取っていたログナー侯爵家の屋敷の防衛の為の機甲兵達がヴァリマール達との戦闘によって敗北していた。
「――――――道は切り開いた。総員、突入!!」
「オオォォォォォォォ――――――ッ!!」
リィンがヴァリマールを操縦して太刀をログナー侯爵家の屋敷に向けて号令をかけるとメンフィル軍は力強い雄たけびをあげながらログナー侯爵家の屋敷への突入を始めた。
~ルーレ市内~
「幾ら相手が機甲兵とはいえ、門番如きを相手に自らが先頭に立って退けるとはさすがは我が主です……!」
「フム、主達が敵将を討つのも時間の問題だな。――――――という訳だから君達も諦めてこの場から退いて今後の自分達の方針を考えた方が建設的だから、退いてくれないかい?あたしとしても、いつまでも面倒な雑事に無駄な時間を取られ続けたくないんだよ。」
空に滞空している為ヴァリマール達の様子を直接目にする事ができたユリーシャは感動し、レジーニアは静かな表情で推測を口にした後めんどくさそうな表情を浮かべてアリサ達を見下ろして指摘し
「フン、そのような軟弱な事に俺達が頷くと思ったら大間違いだ!」
「何としても押し通る……!」
レジーニアの指摘に対してユーシスとラウラはそれぞれ反論した。
「その若さでそれ程の気概と不屈の精神がある事は称賛に値します。――――――最も、貴方達の仲間の父親であるログナー侯爵はともかく、貴方達にとっては”敵”であった”小悪党”如きを助ける為にもそこまで必死になれる事は理解できませんが……」
「”わたし達にとっては敵だった小悪党”……?一体誰の事?」
「まさか………リィン君達は父上だけじゃなく、叔父上の命まで狙っているのかい!?」
アリサ達を見下ろして静かな表情でアリサ達を評価したルシエルは呆れた表情を浮かべて答え、ルシエルが口にしたある言葉が気になったフィーは真剣な表情で訊ねたその時、すぐに心当たりを思い出したアンゼリカは血相を変えてルシエル達に訊ねた。
「ええ。正確に言えばリィン少将達ではなく、クロスベル帝国が雇った暗殺者ですが。」
「何ですって!?」
「ど、どうしてクロスベル帝国がハイデル取締役を暗殺しようとしているの……!?」
ルシエルの答えを聞いた仲間達がそれぞれ血相を変えている中サラは厳しい表情で声を上げ、アリサは信じられない表情を浮かべてルシエル達に訊ねた。
「わたくしは人間―――ましてや異世界であるこの世界の経済の事情については詳しくありませんが、クロスベルにとっては強者に取り入る事を得意としていて広い人脈を持つそのハイデルという”小悪党”を生かしておけば、戦後メンフィルやクロスベルに取り入る事で自身が持つ広い人脈と共に様々な”見返りという名の甘い蜜”を吸おうとしている事は目に見えているとの事ですから、その出来事でクロスベルの政治・経済に支障が出てくる可能性が考えられる為、戦場となったこのルーレで戦場のどさくさに紛れて暗殺する事を決めたとエルミナ皇妃が仰っていました。」
「エルミナさんが……」
「”エルミナ”……確か例の”六銃士”の一人で、クロスベル帝国軍の”総参謀”を務めている人物だったわね。」
「はい……そして、リセルさんと並ぶヴァイスさんの”正妃”でもある人物ですね……」
「チィ……ッ!そんな理由の為だけに凶悪な犯罪を犯した訳でもない”小悪党”にわざわざ暗殺者を送り込むとか、あのクソガキや目の前の天使ともいい勝負をする冷酷女なんじゃねぇのか……!?」
ルシエルの答えを聞いたガイウスが複雑そうな表情をしている中、真剣な表情で呟いたシェラザードの言葉にアネラスは不安そうな表情で頷き、アガットは厳しい表情を浮かべた。
「わたくし達の貴女達への先入観を覆す事で、それぞれの戦場の戦闘を中断させた事は”見事”でした。――――――最も、だからと言ってそれだけでわたくし達を出し抜ける事が大間違いであり、そしてそれが”力無き正義”を掲げる貴方達の”限界”である事はわたくし達と刃を交えて理解できたでしょう。」
「クソ野郎が……ッ!」
「何か……何かないの……!?リィン達に追いつく為の”突破口”が……!」
自分達を見下ろして淡々と宣言するルシエルの宣言に対してアッシュは怒りの表情で声を上げ、アリサが焦りの表情で声を上げたその時!
「―――ならばその突破口、私達が切り開こうじゃないか―――アカシック―――スター!!」
「エニグマ駆動―――ロードインフェルノ!!」
「アークス駆動―――クラウ・ソラリオン!!」
「剣よ……踊りなさい!!」
「ヴァンダール流奥義―――破邪顕正!!」
「な……ッ!?く……っ!総員、防御態勢!!」
オリヴァルト皇子の声が聞こえた後ルシエル達の背後に現れたオリヴァルト皇子がSクラフトによる霊力エネルギーの雨を降り注がせ、セドリックとロジーヌはそれぞれ最高位の攻撃アーツを発動させ、クロチルダは魔術でルシエル達の周囲に数本の焔の魔剣を発生させて焔の魔剣を躍らせ、ミュラーはSクラフトを発動した後跳躍してルシエル達を中心に闘気の大爆発を起こさせてそれぞれルシエル達に奇襲し、予想外の奇襲に驚いたルシエルはユリーシャ達に指示を出した後結界を展開してダメージを最小限に防ごうとしていた。
「生徒達の道を切り開く為、貴女達にはこの戦場から離脱してもらいます―――」
するとその時オリヴァルト皇子達の傍で聖痕を顕現させたトマスがキューブ状の古代遺物を構えた。するとルシエル達はそれぞれ結界に包まれ
「これはまさか―――……それにその上位天使にも届く程のその神聖なる魔力の源は……くっ、という事は貴方が紅き翼に協力している”守護騎士”とやらですか……!総員、全身に魔力を纏い、相手による強制転位に少しでも抵抗してください!」
自分達に何が起ころうとしていることやトマスの聖痕を見てすぐに事情を察したルシエルは悔しそうな表情で唇を噛み締めた後すぐにユリーシャ達に指示を出して自らも全身に魔力を纏った後、トマスによる古代遺物を利用した転位術で天使達と共にその場から強制転位させられた―――――
後書き
という事でアリサ達はオリビエ達の援軍で何とかルシエル達を退けました。まあ、そもそもシェラザード達の加勢があるとはいえ、アリサ達が長年魔族勢力相手に高い戦果を挙げ続けたルシエル率いる天使の精鋭部隊相手に勝つなんて普通に考えたら無理なんですから、援軍は必須なんですよね(笑)
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