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恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS

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第九十二話 劉備、于吉を欺くのことその十一

 だがその二つの衝撃波は半透明になってしまっていた于吉の身体を空しく通り過ぎた。それで終わりだった。
「駄目か、最早」
「逃げられるのだ」
「また御会いしましょう」
 于吉の姿は完全に消えようとしていた。
「その時まで。ご機嫌よう」
「おのれ、ここでか」
「逃げられるとは最低なのだ!」
 関羽と張飛が怒りに満ちて言う。しかしその怒りも今は空しいものでしかなかった。 
 太平要術の書は封印され消え去った。それを見てだ。
 左慈がだ。同志達に言うのだった。
「こうなってはだ」
「撤退ね」
「ここから」
「そうだ。次だ」
 その次の場所に向かうというのだ。こうバイスとマチュアに話すのだ。
「次の戦いの場に移ろう」
「わかったわ。それじゃあね」
「今からね」
「さがるぞ。いいな」
「了解」
「では」
 左慈達も于吉と同じ様に消えていく。それはオロチや刹那達。そして白装束の者達も同じでだ。彼等は煙の様に消えていった。
 戦場に残ったのは連合軍だった。彼等は勝った。
 だが、だ劉備はその戦場に立ったままで言うのだった。
「勝ったし。書は封印したけれど」
「ああ、まだだ」
 華陀がその劉備に険しい顔で話す。
「まだ戦いは終わっちゃいない」
「そうよね。まだよね」
「月並みな台詞だがな」
 こう前置きしてからの言葉だった。
「俺達の戦いはこれからだ」
「あの、その言い方はです」
「止めておいた方がいいです」
 孔明と鳳統が華陀のその言葉を止めた。
「それを言ったら。その」
「終わっちゃいますから」
「そうなのか?言ったらいけない言葉だったのか」
「はい、ですから」
「止めておいた方がいいです」
「そうか、わかった」
 それがどうしてなのかはわからないが頷きはする華陀だった。
 そのうえでだ。彼はまた劉備達に話す。
「とにかくだ。奴等が逃げた場所だが」
「もうそこはわかってるんですか?」
「おそらく。定軍山だ」
 そこだというのだ。
「そこに向かった筈だ」
「定軍山、あの場所ですか」
「益州の」
 孔明と鳳統がすぐにその場所について言った。
「あの山に潜んで」
「そうして」
「また。あの場所で同じことをする」
 そうするとだ。華陀は言い切るのだった。
「そう考えている」
「そうよ。ダーリンの言う通りよ」
「あの山に行って同じことを企んでいるのよ」
 ここで怪物達が来た。そのうえで劉備達に話すのだった。
「だからね。今度はね」
「あの山での戦いになるわよ」
「そうか。わかった」
「次はその何とか山に行くのだ」
 関羽と張飛は強い顔で応えた。
「それではな」
「そうするのだ」
「はい、しかしまずはです」
「色々とやらないといけないことがあります」
 孔明と鳳統は焦っていない。冷静な言葉だった。
「兵隊さん達は疲れていますし」
「それに都を解放しないといけません」
「帝もお救いして」
「そうしたことをしていかないと」
「そうだな。定軍山に向かうのは後だ」
 華陀もそうするべきだというのだった。
「今は戦の後始末や山に向かう前にしないといけないことをしないとな」
「しないといけないことって?」
「はい、政です」
「それをしないといけないです」
 孔明と鳳統がきょとんとした顔になった張角に話した。
「あと張角さんもです」
「舞台を御願いしますね」
「そうそう。私達その為に呼ばれたんだし」
 政のことはわからないがそちらはよくわかっている張角だった。
 にこやかな笑顔になってだ。そうして話すのだった。
「じゃあ早速ね」
「舞台の用意もして」
「何かと忙しくなりますから」
「そうそう。最初の戦が終わっただけよ」
「まだまだこれからなんだから」
 妖怪達も華陀と同じことを言う。
「けれど今はね」
「あたし達も歌うわよ」
「何っ、御主達もか」
「歌えるのだ!?」
「そうよ。漢女の歌」
「あたし達の歌なのよ」
 二人は関羽と張飛の驚きの言葉にウィンクで応える。そのウィンクでだ。
 戦場だった場所がだ。派手に吹き飛んだ。ここでも爆発を起こす彼等だった。
「もう最高の歌だから」
「期待していてね」
「それは楽しみだな」
 華陀だけが微笑んで二人に応える。
「二人の歌がどうしたものか楽しみだ」
「ダーリンに言われるのなら余計にね」
「あたし達頑張れるわ」
 二人も華陀の言葉に乗り気になる。
「それじゃあね」
「皆楽しみにしておいてね」
「大変なことになったな」
「そうなのだ」
 爆発から何とか立ち上がった関羽と張飛が話す。爆発によりあちこち黒焦げになってしまい服も髪もぼろぼろになっている。
「あの二人も歌うのか」
「どうなるのだ」
「とにかくです。まずはです」
「戦いの後です」
 孔明と鳳統も何とか立ち上がりながら話す。
「それを進めていきましょう」
「暫くの間は」
 戦いは終わった。だがそれはだ。次の戦いの為の備えの為の時を与えられたに過ぎなかった。戦いはまだ続くのだった。


第九十二話   完


                   2011・6・20 
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