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恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS

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第九十二話 劉備、于吉を欺くのことその十

「さて、今度はどうされるのですか?」
「こうします!」
「これで決まりです!」
 孔明と鳳統は強い声で于吉の問いに答えた。するとだ。
 彼が左手に持っている書にだ。急にだった。
 何かが突き刺さった。それは。
「なっ、これは」
「やったわね」
 于吉の前に劉備がいた。彼女が両手に持っているその剣がだ。書を貫いていたのだ。
 だが于吉本人までは至っていない。書の力によりそこまで通していないようだ。
 だがそれでもだ。書を貫かれた于吉は驚愕の顔でその劉備に問うのだった。
「馬鹿な、何故貴女がここに」
「どうしてだと思う?」
「縮地法を使える筈がない」
 それはもう確信していることだった。
「妖術を」
「私妖術なんて使えないから」
「では何故だ」
 その驚愕の顔で劉備に問う。
「何故。ここに」
「二人いたから」
「二人?」
「そう、二人よ」
 劉備は書から剣を抜いてだ。後ろに下がり間合いを開けた。その隣にだ。
 緑の仮面の劉備が来た。先程まで彼と戦っていた劉備だ。
「劉備玄徳が二人だと」
「こういうことなの」
 仮面の、蝶の様な仮面を外した劉備を見る。そこにいたのは。
「何っ、あの三姉妹」
「そうだよ。天和ちゃんだよ」
 張角は劉備と並んで言う。
「だって私達そっくりだから」
「こうして二人になっていたのよ」
「どうしてここに」
「あれなのだ!」
 張飛は己の左斜め後ろにある籠を指差した。彼女が運んできたその籠だ。
 見ればだ。その籠は蓋が開いていた。于吉はそれも見て悟ったのだった。
「そうか、あの籠で」
「籠は蒲公英ちゃんが入るだけではありません」
「桃香さんも入るものです」
 孔明と鳳統がここでまた言う。
「貴方はこのことは御存知ありませんでしたね」
「そしてこうした策があることも」
「確かに。迂闊でした」
 于吉の余裕は消え去っていた。歯噛みしての言葉だった。
「こうなっては」
「止めだ!」
 華陀はその書に針を投げた。それは劉備が貫いたその太平要術の書に突き刺さった。そのうえで彼は高らかに叫ぶのだった。
「光になれーーーーーーーーーっ!!」
「くっ、これでは!」
 突き刺さった針から黄金の光が起こりだ。それが書全体を包み。
 矢となって起こり消え去った時には。
 書は消え去ってしまっていた。于吉の左手にはもう何もない。
 その空になった己の手を見つつ。彼は忌々しげに言った。
「失敗ですか」
「そうだ、貴様の野望は潰えた!」
「ここで完全になのだ!」
「確かに。今はです」
 歯噛みしつつだ。関羽と張飛の言葉に応える。
「こうなっては仕方がありませんね」
「後は貴様だけだ」
「覚悟するのだ」
「いえいえ、確かに書はなくなりました」
 それでもだとだ。于吉は務めて余裕を取り戻して言うのだった。
「ですがまだ諦めてはいません」
「ではどうするのだ」
「まさかとは思うが今もなのだ?」
「そうです。退散させてもらいます」 
 そうさせてもらうと言ってだ。姿をゆっくりと消していくのだった。
 足下から消えていきながらだ。彼は劉備達に言う。
「今回は私の負けです」
「だからだ。ここでだ!」
「鈴々達にやっつけられるのだ!」
「そうはいきません」
 余裕は取り戻している。そのうえでの言葉だった。
「今は退散させてもらいましょう」
「くっ!」
「逃がさないのだ!」
 関羽と張飛は最後の手段としてそれぞの得物を振るい衝撃波を飛ばしだ。消えようとする于吉を撃とうとした。
 
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