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恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS

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第九十一話 ゲーニッツ、暴れ回るのことその八

「全軍進撃!」
「いくわよ!」
 袁紹と曹操はそれぞれ剣と鎌を掲げて指示を出す。
「この戦いに全てがかかっていますわよ!」
「天下の平穏、取り戻すわよ!」
 こう言ってだ。早速だった。
 袁紹は馬を飛ばそうとする。しかしそれはだった。
 即座にだ。夏侯惇と夏侯淵に止められた。
「御待ち下さい」
「予想通りの行動はしないで下さい」
「むっ、今こそ私が前に出て」
「ですから。総大将ですから」
「本陣で全体の指揮を御願いします。
 夏侯惇もここまでは正論だった。しかしだ。
 彼女もだ。結局こう言い出すのであった。
「ここは私が先陣を務めます。ですからいざ」
「待て姉者」
 夏侯淵は今度は姉を止めることになった。
「姉者は本陣の護衛だぞ。それで何故先陣を言い出すのだ」
「私が先陣でなくてどうするのだ」
 まだ言う夏侯惇だった。
「やはりここはだ」
「だから留まってくれ。既に先陣は出ている」
「誰だ、それは」
「公孫賛殿だ」
 彼女がだというのだ。
「それはもう決まっているではないか」
「誰だ、それは」
 夏侯惇は真顔で妹に問い返した。
「聞いたこともない名前だな」
「本当に知らないのか?」
「知らぬ。先陣は夏瞬と冬瞬ではなかったのか」
「ああ、そういえばね」
「そうでしたわね」
 曹操と袁紹もだ。ここで顔を見合わせて話すのだった。
「あの赤い髪の娘をね」
「どなたか存じませんが先陣を名乗り出たので」
「それで決めたわね」
「今まで夏瞬さんと冬瞬さんと思っていましたわ」
「何故御二人も御存知ないのだ」
 夏侯淵もこのことには唖然だった。
「決まったというのに」
「だから誰よ、その公孫何とかって」
 荀彧もだ。顔を顰めさせて夏侯淵に問い返す。
「聞いたことないけれど」
「軍師の御主まで言うか」
「だから。誰の配下なのよ」
「劉備殿の客将だ。それで前の幽州の牧だった」
「劉備殿の配下なら皆知ってるけれど」
 ここまでは軍師として当然のことだった。しかしだった。
「そんな名前の将知らないわよ。あっちの世界の人でもいないわよ」
「こちらの世界の者だが」
「それで幽州の牧って」
 今度はこのことについて言う荀彧だった。
「ずっといなくて袁紹殿がなったんじゃない」
「そうですわ。わたくしが異民族討伐の功で任じられたのですわ」
 袁紹自身も眉を顰めさせながら言う。
「あの州にはそれまで牧はいませんでしたわ」
「そうよね。秋蘭もおかしなことを言うわね」
 当然ながら曹操も知らないのだった。
「そもそも公孫賛って何者なのよ」
「とにかくだ。そのよくわからないのが先陣なのか」
 まだ言う夏侯惇だった。
「我等は先陣にはなれないか」
「そのうち嫌でも戦うことになるわ」
 曹操は残念がる夏侯惇を宥める様にして述べた。
「安心しなさい」
「わかりました。それでは」
 夏侯惇もようやく大人しくなった。曹操はそれを見てから返す刀で袁紹に言うのだった。
「貴女もよ。嫌でも戦うことになるわ」
「わかりましたわ。それではですわね」
「ええ、今はどっしりと構えましょう」
 曹操は前を見据えながら袁紹達に言う。
 
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