遊戯王BV~摩天楼の四方山話~
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ターン36 家紋町の戦い(後)
前書き
前回のあらすじ:死屍累々の変則バトルロイヤルも、残るは2人。
「八卦ちゃん……!」
当然本人に聞こえるはずもないのだが、画面の前で倒れた少女の名を呼ぶ糸巻。2対2で始まった変則バトルロイヤルも、これで残るは正体不明の男と初心者の竹丸のみ。明らかに怯えの色を浮かべて後ずさる少女の足は、しかし八卦から興味をなくしたかのように最後の生き残りへと振り返った男の視線に射すくめられて止まる。それは決してポジティブな感情によるものではなく、足がすくんで動けなくなったのだ。
「八卦……ちゃ……」
親友の名を呼ぼうとするも、極度の緊張と恐怖に乾いた舌はうまく回らない。そんな情景を見せつけられ、しかし何もできない現実にただ顔を歪める糸巻には、巴もまたこの光景に喜ぶどころか、むしろ訝しげな表情を浮かべていることには気づかなかった。そして画面の中で、男がゆっくりと口を開く。
「デュエルを続けよう。それとも、サレンダーするかね?」
「え……?」
「サレンダー、降参だ。残念ながら見逃すことはできないが、少なくともこれ以上痛い思いをすることはない」
予想外の言葉に、呆然と立ち尽くす。
「サレンダー勧告?ずいぶんお優しい提案のできる奴を送り込んでくれたもんだ、その気配りに涙が出るぜ」
竹丸にとってこの勝負の行く末は暗い、それは糸巻のプロとしての視点でも認めざるを得なかった。並のプロ相手なら互角に渡り合える八卦をいともたやすく手玉に取ったこの男、見ない顔ではあるが実力は間違いない。ここまでの流れを見たところ凄まじい引き運や必殺のコンボがあるわけではないが、とにかく場を作る能力に長けて勝負の流れを自分の所に手繰り寄せる手腕がある。典型的な「なぜ勝っているのかわからないがいつのまにか勝っている」タイプだと彼女は見た。このタイプは得てしてとにかくまぐれ勝ちを拾い難く、隙を見せないことを前提に実力で叩き伏せる以外の対策がない。
元プロの糸巻ですら言うは易く行うは難いというのに、まして竹丸はまだ初心者に毛が生えた程度。そのうえ、心が既に折れかかっている。無理もないことだ。
だからこの勧告は、むしろ真っ当なものであるはずだ。それでも糸巻は、心に刺々したものが生じるのを感じていた。我ながら身勝手だと思う。理不尽だと思う。しかし勝負を捨てることを良しとしない戦士としての感覚が、目の前の光景に対する本能的な嫌悪感をどうしようもなく生じさせていた。
「いえ……妙だ」
「あー?」
しかし巴はどこか上の空、皮肉たっぷりの糸巻の言葉にもいつもの毒舌を返さない。
「そもそも彼は、私がスカウトした中でも切り札級の男。確かプロデュエリスト養成校からデビュー寸前のところまでいった期待の新星、という触れ込みでしたか」
「切り札?まあそこそこやるようだが、まだアンタの方が強いだろ?」
「貴女に面が割れていない、というのが重要だったんですよ。彼ならプロデュエリスト相手にもそこそこやれるだけの実力があり、しかもどこに出してもデュエルポリスから目を付けられる恐れがない。どこで使おうかと思うと、そして貴女がどれだけ被害を受けるのかを考えるだけで胸が高鳴るような珠玉の逸材。この計画に、それもあちらの部隊に使うつもりは間違ってもなかったのですが……どうも気に食わないことに、私とは異なる指示系統が存在するようですね」
予想外の事態がよほど苛立たせているのか、いつになく簡単に情報を明かす巴。その言葉に含まれた矛盾とも思える箇所に、糸巻が眉をひそませる。
「ん?ちょっと待て。そんな大した奴だから、人質を取りに行かせたんじゃないのか?」
「それは違います、むしろ真逆ですよ。いいですか、私は貴女が大嫌いです。今こうして同じ空間と時間を共有し同じ地球の空気を吸っているという事実を感じるだけで、頭痛と吐き気と腹痛がします」
「そーかいそーかい、これが終わったらアタシの公式グッズ、プロマイドの在庫全部留置所に送り付けてやるから覚悟しとけ」
「ですが、だからこそ貴女とのデュエルは他の要素が混じってはいけないんですよ。純然たる実力差によってあらゆる抵抗を叩き潰し、二度と立ち上がることすらできないほどに心の底から絶望と敗北を刻みつける。そうでなくてはいけないし、そうあるのが世界の正しい形です」
「気色悪っ。新興宗教の先生か何かか?」
片端から入る当の本人からの茶々入れは聞こえているのかいないのかまるで意に介さず、熱に浮かされたような目つきで吐き捨てられる声にも次第に力がこもっていく。
「なんというか、すんごいラブコールよね。むかーしあれぐらい歪んだ愛の形を撒き散らしてた人……人?と殺りあったことがあるけど、あれと匹敵しそう」
「……俺には巴さんと同レベルの人がほかにもいる方が怖い。世界って広いんだな」
「……うん、まあ、人というか男というか女というか。結局どっちだったんだろ」
いつの間にか復活していた清明が、画面に注意を払ったまま芋虫のように床を這いずって倒れたままの鳥居を束の間の話相手に選ぶ。ひそひそ声で距離をおく男2人の動向には気づきすらしないほど、巴は自らの演説に集中していた。
「そもそも人質を取ること自体、こと貴女とのデュエルに関しては私は反対だったんですよ。貴女はそれこそ『お優しい』ですからね、効くに決まってます。だが、そこに意味はない。美しい勝利とはなりえない。これを言い出したのは私の今のパトロン、『BV』目当てにすり寄ってきた薄汚いマフィアの頭です」
「フン、だから僕ちゃん悪くないんでしゅーってか?」
「これでも組織勤めは、色々と面倒事があるんですよ。表と裏、世界の違いこそあれど貴女もそうでしょう?だから最低限のメンツは立てて、なおかつその上で敗北してもらい人質作戦は失敗に終わる。その程度の弱者を適当に見繕っておいたのですが、今頑張っている彼はどこからどんな命を受けて入り込んだのか。ああまったく、不愉快極まりませんね」
デュエルをしている男自身ではなく、その後ろに存在だけが透けて見える第三者への激しい苛立ち。吐き捨てるような言葉の激しさは、巴は巴なりの価値観の元にデュエルモンスターズと、そして眼前の糸巻と真剣に向き合っていることの裏返しでもあった。
「私、は」
そしてはるか離れた海上プラントで、そんな会話が行われているとも露知らず。すっかり青い顔になってしまった文学少女が、眼鏡の奥の瞳に怯えの色を浮かべて小さく途切れ途切れに声を出す。
痛いのは怖い。怖いのは嫌だ。まして八卦ちゃんを倒した相手、私に勝てるわけがない。私はただ、皆で一緒にこのデュエルモンスターズというカードゲームをやりたかっただけなのに、どうしてこんなことに。色々な感情がぐちゃぐちゃに溢れ、視界が涙で滲みだす。
それでも最後の最後、サレンダーしようとする少女を躊躇わせていたのは、まさにその傷つき倒れた親友の姿だった。せめて、せめて彼女のためにも一矢報いたい。
だけど、自分にそれができるのか?自分の内側から発せられる冷徹な言葉が、重く心にのしかかる。膝が折れそうになる。その場に立っていられなくなる。
『いやいや、私としてはそこで踏ん張ろうって気になれるだけでもすっごく偉いと思いますよ?私も待機していた甲斐がありました、まずはこの場を一緒に乗り切りましょう!』
何の前触れもなく響いたのは底抜けに明るい、まるでこの場にそぐわない声。この場に誰が来てくれたのかと左右を見渡すが、誰も電気をつけていなかったため薄暗い店内には少女自身と男、そして気を失った2人しか存在しない。
それどころか目の前の男が、まるで今の大声に反応していない。まるで、最初から何も聞こえていないかのように。
「え……?」
幽霊。そんな言葉が脳裏をちらつき、ぐちゃぐちゃと頭の中で散らかっていた全ての感情が背筋も凍るような恐怖に一時的に上書きされる。
『ああ、申し遅れましたね。私です私、手札の右から2番目!グレイドル・スライムですよ、私!いえいっ!』
「え、ええっ!?」
右から2番目の手札に反射的に目をやると、そこには確かにグレイドル・スライムのカード。ただのイラストでしかないはずの巨大な黒目が、カードの中でぱちりとウインクしたように見えて思わず竹丸はその目をしばたかせた。
『いやー、宇宙のどこかで私の同胞が生まれる!……ような気がしたんですが、どうも空模様が悪くて結局まだ見ぬ同胞とは会うことができず。聞くも涙語るも涙な傷心の旅のさなか……と、今はそんな場合じゃないですね。話は後です、とにかく勝ちますよ!』
「え、ええと……?」
『サレンダーなんて、する必要はありません!というよりも、私は元々あなたに死相が見えたからマスターさん……あ、遊野清明さんのことですよ、あの人に無理言って一時的にこっちに身を寄せさせてもらったんですから。死亡フラグなんてポイですよポイ、きっぱり勝ちに行きましょう!』
「清明さんに……」
その名前を聞いて、ようやく気持ちが固まった。このグレイドル・スライムを自称する自分にしか聞こえないらしい声からは全く害意を感じなかったというのもあるが、それ以上に成り行きとはいえ自分を救ってくれた清明の名前を出されたことが大きかった。ころころと表情が変わったり突然あちこちを見まわしていた少女に奇行にやや警戒のそぶりを見せていた男に、改めて向き直る。
「サレンダーは、しません。お待たせしました、デュエルを続けてください!」
「警告はした。2度同じことは聞かないから、な」
ハッキリとした返答から気持ちの違いを感じ取ったのか、それ以上は何も聞かずにカードを引く男。八卦のライフが尽きたことで、次のターンプレイヤーに強制的に移り変わったからだ。
「お、竹丸ちゃん、折れなかったか」
1人の人間としては心配げな顔つきではあるが、それでもどこか嬉しそうなのは戦士としての、デュエリストとしてのどうしようもない性か。
「うまいことやってくれたみたいね、よかったよかった」
うんうんと訳知り顔に頷く清明を横目に、祈るような気持ちで画面へと目を戻す。再開したデュエルでは、ちょうど男の引いたカードがドン・サウザンドの契約の効果によって表になったところだった。
「俺のターン。ドローは魔法カード、強欲で金満な壺。メイン1の開始時にこれを発動し、エクストラデッキからランダムに6枚を除外することでカードを2枚引く。このドローはどちらもモンスターカード、マジェスペクター・クロウ及びマジェスペクター・キャット。まずはクロウを通常召喚する」
マジェスペクター・クロウ 攻1000
男が召喚したモンスターはデフォルメチックな姿で描かれた、赤いマントを靡かせる紫のカラス。単純なステータスではグレイドル・アリゲーターに劣る1枚に、竹丸はさらに後続のモンスターを何らかの手段によって展開するのかと警戒する……しかし、グレイドル・スライムの反応は露骨だった。
『うぎゃっ!?』
「ど、どうしたんですか!?」
なんとも形容しがたい悲鳴に肩を震わせ、手札を取り落としそうになる少女。しかし精霊の声が聞こえない男からすれば、おとなしそうな少女が追い詰められて以降突然に相次いで奇行を繰り返しているようにしか見えない。あからさまに引き気味の視線を送られたことに気づいてみるみる顔が赤くなるが、切迫した叫びの理由を知りたいという気持ちは恥ずかしさを上回った。
『マジェスペクター、マジェスペクター……どどどどうしましょう、もしかしたらちょっと駄目かもわかんないです』
「え、えええっ……!?」
先ほどまでの自信はどこへやら、一転して震えだす気配。嘘偽りのない震え声に、訳も分からないまま竹丸までつられて震えだしてしまう。
あの娘なんか既視感あると思ったらうちのスライムに変なとこ似てたんだね、と画面の向こうで呟かれていることなどお互い知る由もなく、わかっているスライムとわかっていない少女が同じようにデフォルメされたカラスを前にわたわたと混乱する。
そんな絵面を前にしても、男の攻め手は止まらなかった。そもそも、クロウの攻撃力では先ほどセットされたことが見えているグレイドル・アリゲーターの守備力である1500には届かないのだ。
「召喚成功時、マジェスペクター・クロウの効果を発動。デッキからマジェスペクター魔法1枚を手札に加える」
「サーチ効果……な、なら手札から、灰流うららの効果を発動しますっ!このカードを捨てて、その効果は無効です」
『……駄目です!』
停止の声は一歩届かず。場に出た瞬間にアドバンテージを稼ぐシンプルなサーチ効果に対し、室内に舞うは灰色の花吹雪。シンプルゆえに強力な無効効果が、サーチを止める。
だが。出がかりを潰されたはずの男はまるで堪えた風もなく、それどころかその口元に薄い笑みさえ浮かべていた。
「い、いったい……?」
『今のは、私も遅かったですね。相手はマジェスペクター、そして私たちの場には見えているアリゲーター、召喚されたのは攻撃力1000のクロウ……おそらく今のサーチ効果は、ただの誘い水。本命の次を通す前に灰流うららがあなたの手札にないかを探るためのブラフ、です』
「フィールド魔法、マジェスティックP。このカードが存在する限りマジェスペクターの好守は300アップするが、本題はもうひとつの効果だ。1ターンに1度風属性の魔法使い族をリリースすることで、デッキからレベル4以下のマジェスペクターを特殊召喚できる」
『やはり、すでに握っていましたか……』
諦観したようなつぶやきは、少女と画面の向こうの清明にしか届かない。花吹雪を吹き飛ばすかのような風の渦に包まれたクロウの姿が、その中でまったく別の動物へと入れ替わる。渦を突き抜けて飛び出したのは、金の毛並みを持つデフォルメされた狐の姿だった。
マジェスペクター・フォックス 攻1500→1800 守1000→1300
「マジェスペクター・フォックスは、クロウと対となる効果を持つ。デッキよりマジェスペクタートラップ1枚、マジェスペクター・テンペストを手札に。そしてバトルフェイズ、そのセットされたグレイドル・アリゲーターに攻撃する」
マジェスペクター・フォックス 攻1800→??? 守1500(破壊)
金の狐がひょいと飛び、両前足で伏せられたグレイドル・アリゲーターのカードを勢いよく踏みつぶす。守備表示なため当然ダメージは入らず、代わりに弾けたカードから勢いよく銀色の液体が飛散した。
「戦闘破壊されたグレイドル・アリゲーターの効果です!相手モンスター1体の装備カードとなり……」
「涙ぐましい努力だ。だが無駄だ、な」
弾けた銀の液体が空中で向きを変え、一斉にフォックスめがけて四方から襲い掛かる。しかし金の狐は落ち着いたもの、四肢を踏ん張って空高く一声鳴くと、たちまちその体が風の渦に包まれた。
「あっ!?」
驚きの声が響く。小さな狐を守る大きな風の流れは、液状と化して寄生にかかろうとしたグレイドルを完全に弾き飛ばしたのだ。さらに細かな水滴になるまでちぎられて吹き飛ばされたその破片が、床に壁に溶けるようにして消えていく。
『駄目なんですよ、マジェスペクターは。あのヒトたちは常に風の魔法で守られていて、こちらの効果の対象にできないうえにこちらの効果では破壊できないんです』
「効果の対象にも、効果破壊も、ですか……?そんな」
『なので当然、私たちグレイドルとの相性は最悪です。うう、力不足ですみません』
対象をとる寄生効果を軸に立ち回り、切り札のドラゴンはこれまた対象をとる破壊効果が持ち味のシンクロモンスター。およそグレイドルの全要素に対し喧嘩を売っているかのような耐性を知らされてたじろぐ少女に、男がダメ押しの伏せカードを仕込む。
「カードをセットする」
『あの伏せカード、十中八九先ほどサーチしたマジェスペクター・テンペストですよ。確か魔法使い族の風属性モンスターをリリースすることで、モンスター高架化特殊召喚のどちらかを無効にして破壊できるカードだったはずです。そして、先ほどのターンからずっと伏せてあるあの1枚は……』
「忘れるところだった、永続トラップ、量子猫を発動。このカードは守備力2200のモンスターとして特殊召喚されるが、その際に俺が種族と属性を自由に決めることができる。当然魔法使い族の風属性となるが、な」
量子猫 守2200
最初のターンにドン・サウザンドの契約によってドローされていた量子猫が、ここにきて呼び出される。しかしそれは、壁モンスターなどという消極的な召喚ではない。これ見よがしに見せつけられた、フォックスを維持したままテンペストを発動するための発動コストだった。
しかし、彼女の心に先ほどまでの不安や恐怖はない。
「私のターン、ドローカードは……魔法カード、ハーピィの羽根帚!メインフェイズ、これをすぐに発動します!」
「む……!」
『おおっ、これはまだわかりませんよ!マジェスティックP、ドン・サウザンドの契約、マジェスペクター・テンペスト、それに量子猫。これを1枚で一掃できるのは大きいですよ!』
その言葉通りに4枚のカードが一度に破壊され、男の場に残るのは下級モンスターにしては強力な耐性と貧弱なステータスを持つフォックスただ1枚のみとなる。
マジェスペクター・フォックス 攻1800→1500 守1300→1000
「これでもう、ドローカードが見られることもなくなりますね。続けて魔法カード、強欲なウツボを発動します。手札の水属性モンスター、グレイドル・スライムとグレイドル・イーグルの2枚を見せてデッキに戻し、カードを3枚ドローします!」
ドン・サウザンドの契約でドローカードが筒抜けになることを躊躇うあまり手札で腐っていた、強欲なウツボにより手に入れた3枚のカード。それと元からある2枚を見比べ、反撃が許されたこの貴重なターンに少しでも優位に立つための戦略を練る。
『これならば、今は少しでもダメージを稼ぐべき、ですね!』
「はい!永続魔法、王家の神殿を発動です。これにより私は1ターンに1度、伏せたターンでもトラップを発動することが可能になります。グレイドル・コブラを召喚してカードをセット、そして今伏せたグレイドル・スプリットを発動!このカードは、攻撃力を500上げる装備カードとなって私のモンスターに装備できますよ」
グレイドル・コブラ 攻1000→1500
「そして、グレイドル・スプリットの更なる効果を発動です。このカードを墓地に送り装備モンスターを破壊することで、デッキから2体までのグレイドルを特殊召喚しますね。私は先ほどデッキに戻したグレイドル・スライム、そしてグレイドル・イーグルを再び特殊召喚します!」
「せめてもの、だ。スプリットにチェーンして手札から増殖するGを捨て、効果発動。このターン相手の特殊召喚1回ごとにカードをドローする、まずはこのリクルートによって1枚だ」
『ふっふっふ。私、登場しちゃいましたよ!』
既存生物を模写しては溶け崩れ、分裂し、さらに2体に増えるグレイドル。2つに増えた銀の水たまりのうち片方からはグレイ型宇宙人の上半身が、そしてもう片方は黄色の鳥の形が浮かび上がる。
グレイドル・スライム 守2000
グレイドル・イーグル 守500
『私はチューナーモンスター、そしてイーグルとの合計レベルは8!』
「はい!レベル3のグレイドル・イーグルに、レベル5のグレイドル・スライムをチューニング。導く言葉は『変幻自在』。宇宙の果てにあるものは、あなたたちからのメッセージ!シンクロ召喚、グレイドル・ドラゴン!」
☆3+☆5=☆8
グレイドル・ドラゴン 攻3000
3体のグレイドルが寄せ集まった集合体、寄生能力に頼らずとも自らの力だけで並み居る敵の殲滅も狙えるほどの戦闘個体。その効果は依然としてマジェスペクターには届かないが、それでもドラゴンにはこの場に反撃の狼煙を上げられるだけの力があった。
「増殖するGの効果により、さらにドロー」
「いきます、グレイドル・ドラゴンで攻撃です!」
グレイドル・ドラゴン 攻3000→マジェスペクター・フォックス 攻1500(破壊)
男 LP3000→1500
杖の先についた髑髏の目が不気味に光り、赤い怪光線が放たれる。先ほどと同じく風の渦を呼び起こして耐えようとしたフォックスだったが、その壁をいともたやすく貫いた光線に射抜かれると同時にその風も四散して消えていった。
『やりましたね、先制攻撃です!』
「はい!メイン2にカードをセットし、ターンエンドです!」
「……よもや、こんな子供に最初の一撃を入れられるとは、な。俺も少々、相手を侮っていたらしい」
吹き飛ばされた男がデュエリスト特有の頑丈さでゆらりと立ち上がり、カードを引く。先ほどとは比べ物にならないほどの闘気に、喜びの気持ちが竹丸の中でみるみるしぼんでいった。
「だがそれも、今のターンで最後だ。俺のターン、ドロー……スケール2のマジェスペクター・キャットをライトPゾーンに、スケール5のマジェスペクター・フロッグをレフトPゾーンにセッティング」
『レベル3から4のペンデュラム召喚……仕方ありませんね、増殖するGを通しちゃいましたし』
「ペンデュラム召喚!エクストラデッキからは左側のエクストラモンスターゾーンにマジェスペクター・クロウ
を、そして手札からはマジェスペクター・ラクーン及び2体目のマジェスペクター・フォックスを一度に特殊召喚する」
圧巻の光景だった。場に1枚もカードが残っていない状況から、左右に立った光の柱とその中にそれぞれ浮かぶデフォルメされた猫とカエルに見守られ、一斉に動物たちが現れる。
マジェスペクター・クロウ 攻1000
マジェスペクター・ラクーン 攻1200
マジェスペクター・フォックス 攻1500
「そして特殊召喚に成功した3体の効果を、フォックス・クロウ・ラクーンの順に発動。それぞれデッキからマジェスペクター魔法、罠、そしてモンスターを手札に加える」
「3枚の……サーチ」
「マジェスペクター・フロッグ、マジェスペクター・トルネード、マジェスペクター・ストームの3枚を手札に。そして通常魔法、マジェスペクター・ストームを発動。魔法使い族かつ風属性のクロウをリリースし、相手モンスター1体をデッキに戻す」
『ううー、やはり破壊はしてくれませんよね……』
足元から巻き上がる魔力を乗せた風の渦に飲み込まれ、ドラゴンの姿が消えていく。だが、竹丸にそれを嘆く余裕はない。
「マジェスペクター・フロッグを通常召喚。このカードの効果により、デッキからマジェスペクター魔法か罠を1枚選びセットできる。俺が選ぶのはマジェスペクターの効果が無効化されなくなる永続トラップ、マジェスペクター・スーパーセル。もっとも、このターンはどうせ発動できないがな。だが、このフロッグにはクロウが抜けた穴を埋めるという意義がある」
マジェスペクター・フロッグ 攻1300
「バトルだ。マジェスペクター・ラクーンで……いや、グレイドル相手ならば。マジェスペクター・フォックスでダイレクトアタックだ」
『う、さすがに読まれてますね。ですが、もはやこのターンに使える妨害手段がないことも分かっていますよ!』
「永続トラップ、グレイドル・パラサイトを発動します!このカードの効果により、相手の直接攻撃宣言時にデッキからグレイドル1体を攻撃表示で特殊召喚できます。グレイドル・イーグルです!」
どろりと床に沸き上がった銀の水たまりが黄色い鳥の姿を模し、翼を広げて突撃してきたフォックスの前に立ちはだかる。しかしフォックスはひるむどころか風をまとった爪で真っ向からイーグルへと勝負を挑み、イーグルもまたそれに応えて翼を丸めてのインファイトの姿勢にかかる。金と黄色の弾丸2発のようにそれぞれ相手めがけて突っ込んでいった両者の衝突は、決着がつくことなく終わる。
マジェスペクター・フォックス 攻1500(破壊)→グレイドル・イーグル 攻1500(破壊)
「寄生可能な対象がいないため、イーグルの効果は発動しない。そしてグレイドル・パラサイトの効果はターンにつき1度きりだが、俺にはまだラクーンとフロッグが残っている」
「ひっ……」
『すみません、ここはどうにか耐えてください!』
スライムの悲鳴が聞こえると同時に、竹丸の視界が大きく揺れた。2つの強風が少女の体をたやすく巻き上げ、上下も左右もなく放り飛ばしたのだと脳が理解できた時には、すでに床へ叩きつけられていた。これが糸巻、清明といった場慣れしている相手であれば、空中で受け身をとったり姿勢を制御して物理ダメージを最小限に抑えることもできたろう。まだ実戦経験では両者に劣る八卦も、持ち前の運動神経で同じことができたはずだ。だが文学少女の悲しさ、いくら頭がよかろうとも反射神経と運動神経が足りていない。
マジェスペクター・ラクーン 攻1200→竹丸(直接攻撃)
竹丸 LP3000→1800
マジェスペクター・フロッグ 攻1300→竹丸(直接攻撃)
竹丸 LP1800→500
「う、うう……」
『すみません反応が遅れて、ついついいつもの癖で』
「いえ、ありがとうございます……」
それでも骨や内臓に異常が起きなかったのは、とっさに腕のデュエルディスクから実体化してこぼれ出た銀の液体が地面に落ちてグレイ型宇宙人の細い腕を伸ばし、最低限のクッションとなったからだった。それでも痛みから立ち上がれずにいる少女を見下ろした男が、また口を開く。
「カードを2枚、マジェスペクター・トルネードともう1枚をセットする。まだやる気か?いくら立ち上がろうとも、自分に合っていないデッキを使っているようでは勝てるはずがないというのに」
「え……?」
痛みのせいで集中しきれず、今かけられた言葉の意味がよく理解できない少女。子のデッキが、グレイドルが、自分に合っていない、とはどういう意味だろう。混乱する思考を頼みのスライムは助けてくれるどころか、むしろ深刻な声色でその意見に同調した。
『やはり、あの人も気づいていましたか』
「あ、あの」
『……ここしばらくあなたのことを陰ながら見守ってきましたが、あなたはすごく地頭がいいんですよ。私たちグレイドルは自分から盤面を積極的にコントロールすることももちろんできますが、その本質は受け身なものです。私たちとあなたの相性が悪い、とは言いません。初心者のうちから複雑なカードの応酬についていけ、多角的に盤面を検討できるあなたは、間違いなくコントロールデッキ向きです。ただあなたの美点を最大限に生かすことができるのは私たちのような受け身のコントロールではなく、より積極的に流れを作りに行く攻めのコントロール、だと思います』
ぽつりぽつりと語られる言葉の意味が、少し遅れて少女に染み渡っていく。しかし不思議なことに、それをひどいとは思わなかった。むしろ、足りないピースが埋まっていくような奇妙な充足感がその胸中から湧き上がってくる。自分に合ったカード、自分に合ったデッキ。これまで周りのデッキ分布が素直なビートダウンばかりに固まっていた竹丸にとって、コントロール色の極めて強いマジェスペクターとの邂逅は全く新しい未知の刺激だった。こんな状況でなければ、それをもっと喜ぶこともできただろう。
『あなたが私たちを最初のデッキに選んでくれたことは、私もうれしく思います。だから私も、あなたに感じた死相の原因を突き止めるまで一時的に清明さんのところを離脱してこちらに来ました。ですがあなたが最初に私たちを選んだのには、グレイドルへの興味だけでなく清明さんへの憧れが入り混じっています。あの人は学生のころからそこそこ程度にモテてましたからね……と、それは置いておいて。もう一度、考えてみるのもいいかもしれませんよ』
とはいえまずはこの状況をどうにかしないとですね、と言い添えるのも忘れず、スライムの気配が引いていく。話を聞くうちにようやく体が動くようになり、壁に手をついて店内のショーケースにもたれかかりながらも、どうにか立ち上がる。
「私のターン、です!私が攻めのコントロール向きだというのなら、今できる最大限のことは……グレイドル・イーグルを召喚して、墓地からグレイドル・スライムの効果を発動です!場のグレイドルカードであるイーグルとパラサイトを破壊して、このカードを蘇生召喚します。そして自身の効果によって特殊召喚されたスライムの効果で、墓地のアリゲーターを蘇生します!」
『はい!私、復活です!』
グレイドル・スライム 守2000
グレイドル・アリゲーター 守1500
「ここか。トラップ発動、マジェスペクター・トルネード。魔法使い族かつ風属性のラクーンをリリースすることで、グレイドル・スライムを除外する」
『シンクロ前に私を潰しに来ましたか……ですが!』
「はい!まだ私には、召喚権が残っています。場のアリゲーターをリリースして2体目のスライムをアドバンス召喚し、さらに通常魔法、浮上を発動です。今リリースされたアリゲーターを、再び墓地から蘇生します」
「ち……!」
グレイドル・スライム 攻0
グレイドル・アリゲーター 守1500
シンクロする前に素材を潰そうとした判断を裏目にさせるリカバリーで、再び2体のモンスターが場に残る。しかし、男もまた巴が認める実力者。さらにもう1枚、伏せられたカードが表を向く。
「だが、グレイドル・ドラゴンを出そうとも無意味。トラップ発動、和睦の使者!発動ターンに俺が受ける戦闘ダメージは0となり、俺のモンスターは戦闘破壊されない!」
『通常の構築ならばこれだけで詰んでいてもおかしくありませんでしたが……あなた、なかなか渋いシンクロモンスターを選びましたね。お目が高いです』
「このカード、ですか?」
『ええ。おあつらえ向きすぎて私もびっくりです。これもまた、カードが応えてくれているんですよ』
フィールドから振り返って竹丸と視線を合わせ、それに、と続けるスライム。
『あなたもこのカードを信じたからこそ、15枚しかないエクストラデッキを任せたんでしょう?なら、大丈夫です。私たちモンスターは、それに応えるためにどこまでも戦います』
「……わかりました。ふふっ、なんだか清明さんと同じようなこと言ってますね」
『そうでしょうそうでしょう、長い付き合いですからね』
和気あいあいとした雰囲気が、殺伐とした室内に1瞬だけ流れる。そして再び場の空気が戦場のそれに戻った時、スライムとイーグルが同時に飛び上がった。
「申し訳ありませんが、これで終わりです!レベル3のグレイドル・イーグルに、レベル5のグレイドル・スライムをチューニングです!導く言葉は『栄枯盛衰』。驕れるものよ、死の痛みはあなたのもとに訪れる!シンクロ召喚、ブラッド・メフィスト!」
☆3+☆5=☆8
ブラッド・メフィスト 攻2800
漆黒のマントに細い体を包み込み、シルクハットをかぶり杖を手にした悪魔。通常構築の【グレイドル】にはまず入らないこの1枚こそ、竹丸の個性であり声なき自己主張でもあった。
彼女は、スライムの言葉通りこの1枚のことを信じて選んだのだから。そしてその効果は、相手ターンのスタンバイフェイズごとに発生する、相手フィールドのカード枚数に応じたバーン能力。
「レベル8のシンクロモンスターに、あえてそのカードを選んだと……?」
「はい。グレイドルの能力が効かない相手がこちらの展開力の低さをついてたくさんのカードを出したところに、このカードの効果を生かす。このまま攻撃はせずに、カードを1枚伏せます」
「だが、まだだ。次のターン、ドローフェイズにモンスター除去の速攻魔法、マジェスペクター・サイクロンを引けさえすれば……」
男の言葉通り、決してまだ終わったわけではない。ドローフェイズに即使える速攻魔法の除去カード、あるいは禁じられた聖杯のような効果無効のカード。引きさえすれば敗北を回避するばかりか逆転勝利もゆうに狙える選択肢は、確かにまだ存在する。
しかしその可能性を、少女は許さない。
「させませんよ。お忘れですか、私のフィールドにはまだ、王家の神殿が残っていることを!今伏せた永続トラップをそのまま発動、魔封じの芳香!」
「魔封じの、芳香……!」
あらゆる魔法カードが、1度場に伏せたうえで次のターンを待たねば発動することができなくなる永続トラップ。環境が変わるたび幾度もメタカードとして注目されてきた古参兵が、ここでもその効力をいかんなく発揮する。
「く……ドロー!」
ドローカードを見る男。そこにあったのはつい先ほどまで彼自身が切望していた1枚、今となっては何の役にも立たない紙切れでしかない1枚。
「マジェスペクター・ストーム……!」
「これが私の、私なりの、攻めのコントロールです。スタンバイフェイズ、ブラッド・メフィストの効果を発動。相手フィールドのカード1枚につき、300のダメージを与えます!」
今の男の場に存在するのはペンデュラムゾーンの2枚にモンスターゾーンの2体、そしてセットされたままのマジェスペクター・スーパーセル。スーパーセルは今からでも発動できるが、永続トラップであるためフィールドのカード枚数を減らす役には立たない。
悪魔が哄笑してその杖を一振りすると、先端についた髑髏の瞳から視界を染める赤い怪光線が放たれた。
男 LP1500→0
「や、やった……!」
『おめでとうございます!あらら、大丈夫ですか?』
自分の勝利がまだ信じられないのか、それとも緊張の糸が切れて力が抜けてしまったのか。呆然とした顔でその場にへたり込み気を失う少女に、スライムが祝福の言葉をかける。当人たちは知る由もないが、祝福ムードは遠く離れた海上プラントでも同じだった。
「よくやった、竹丸ちゃん!」
「おめでとう竹丸ちゃん、スライムもお疲れ様!」
笑顔を交わす糸巻と清明の横で、不測の事態こそあったものの最終的にはどうにか計画通りに事が進んだことにほっと息を吐く巴。清掃ロボの中継カメラを切り、広間の電気を復旧させる。
「さて、これで人質は取れなくなりました。後始末も、少しばかり心当たりを呼んでいます。ああ、『こうなれば仕方がない』。私が実力だけで貴女を倒して見せましょう」
「よく言うぜ、そんなに嬉しそうな顔しやがってよ?だがまあアタシも異論はねえさ、アンタとはどっかで必ず、ガチで殺りあいたかったんだ。そしてアタシが勝つ!」
ついに、因縁の対決に終止符が打たれる時が来た。
だが、本当にこれで本土側での戦いは終わりなのだろうか?予定調和に人質作戦をはねのけてめでたしめでたし、あとは糸巻と巴の最後の一騎打ち……いや、断じてそうはなりえない。この時に巴が犯したのは、普段の彼らしくもないミス。この一連の流れに不測の事態が発生し、第三者の意思が介入している。それが明らかになった時点で、何を差し置いてもまず異分子の正体を突き止めようとしていれば……いや、それでも何も変わらなかったろう。
カードショップ『七宝』では、床に倒れたままの男が途切れ途切れの意識で、なおも通信機に手を伸ばそうとしていた。
「く……まだ、まだだ……!この近くには、まだ『BV』所持者が腐るほどいる、そいつらを呼び寄せれば……」
「そうか。だが、それは無理な相談だな」
「ひどい有様じゃのう。これ鼓よ、こちらは終わらせたぞよ」
「き、貴様らは……!?」
応答はひとつもなく、雑音のみを返す通信機。そして突然の乱入者とその正体に、男の顔が驚愕に歪む。
「デュエルポリスフランス支部長、『錬金武者』の鼓千輪。この近くにいるチンピラどもがこの店を狙っていると匿名の通報があってな。信用するに値しないとデュエルポリス本部は動いてくれなかったから、仕方なくボランティアでフランスから日本にとんぼ返りだ。まったく、巴のやつも随分としゃれた嫌がらせをしてくれるものだ」
「『十六夜の決闘龍会』、笹竜胆千利。わらわはデュエルポリスとは何の関係もないのじゃが、貴女手が空いているでしょうととある狐の奴めに呼びつけられてのう。ま、そちらで倒れておるおなごにはデュエルフェスティバルの借りもあったことじゃしの」
「そういうわけで、この町のチンピラどもは一斉摘発させてもらった。糸巻がさぼり倒してきたツケをなぜか私が払った、ともいえるな。まだやりあうというなら止めはしないが、当然私もこのストレスは対戦相手のお前に全力で叩き付けさせてもらう。それが嫌ならば、お前も観念することだ」
「そん……な……」
今度こそ気力が限界にきたらしく、その場にどうと崩れ落ちる男。荒れ狂う暴風で文字通り嵐の後のようになった店内を見渡して、鼓がやれやれと息をつく。
「まったく、まだ時差ボケも治りきっていないというのに。巴も人使いが荒い」
「妖怪生意気乳女といい勝負じゃな。まさかこの町から一番近くに住んでいるというだけで、現役を退いて久しいわらわまで駆り出されるとはのう。それでのこのこ出向くあたり、あの狐めのいいように使われておる気もするが」
「私も人のことは言えないな。何のかんの言いつつ、どうせ来ると思ったからこそ奴も私たちに白羽の矢を立てたのだろう」
「とりあえず、この子供らを布団にでも寝かせて、後始末はわらわたちで……おや」
そこで手にしていた扇をぱちりと閉じ、すいと流し目を薄暗い店内の一角に送る笹竜胆。それと同時に鼓も、剣呑な目で同じ方向を凝視していた。
「まだ残党がおったようじゃの。手間がかかるのう」
「なら、私1人で終わらせてもいいんだぞ?」
「嫌じゃ。この前のデュエルフェスティバルでの一戦で、消えかけていたわらわの焔が再び勢いを増してきての。やはり、デュエルはよきものじゃ。おぬしに独り占めはさせぬぞえ」
「そうか」
目だけは真剣なままに緊張感のない会話の後、デュエルディスクを構える2人の女戦士。その後の戦いの行方は、グレイドル・スライムだけが知っている。ほんのわずかな時間ののち、銀色の液体となって音もたてずに扉の隙間から外に抜け、何が起きているのかを伝えるため、そして元の持ち主である清明へと助けを求めるために全速力で海へと這っていったスライムだけが。
後書き
ちゃんと描写してもよかったけど、正直また寄り道ばかりしていると本気で終わりそうにないので割愛。
新規メタルフォーゼとか書きたかっただけに悩ましいけど、もうテンポ優先します。
そして次回からは仕事スタイルが変化する関係上、投稿がいつできるか正直全く読めません。前作同様ペースがいくら乱れても最終的にはエタらせずちゃんと締めますので、予めご了承ください。
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