ドリトル先生と牛女
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第十一幕その六
「完治しました」
「それは何よりです」
「では今後は」
「二度とですね」
「虫歯にならない様にしてくれたら」
「歯をしっかりと磨いてそうして」
「歯に悪いものを食べ過ぎないことです」
このことも大事だというのです。
「ライムジュース等を」
「私はそれで虫歯になりましたし」
「そうです、そうしてくれますと」
それでというのです。
「もうこれからはです」
「虫歯にならないで済みますね」
「そうなりますので」
「これからはですね」
「気をつけて下さいね」
「わかりました、ではお礼ですが」
牛女さんはにこりと笑ってです。
手をぽん、と叩きました。するとお供の人達がです。
あるものを出してきました、それは何かといいますと。
「これはまた」
「完治させてくれたお礼です」
牛女さんは笑顔で言いました。
「お受け取り下さい」
「そうですか」
「歯を治して頂いたので」
「前もこれ以上はと」
「いえ、これは報酬ではなくです」
「違うのですか」
「お礼です」
そちらだというのです。
「ですから」
「だからですか」
「お受け取り下さい」
「報酬ではなくお礼ですか」
「そうです、受け取って下さい」
是非にというのです。
「そうされて下さい」
「若し受け取って下さらないと」
従者の人も言ってきます。
「私達も困りますので」
「ですからどうかお受け取り下さい」
「そうして下さい」
「どうかです」
「お受け取り下さい」
「わかりました、しかしまさかです」
先生は従者の人達が差し出したそれを見ながら言いました、それは箱の中にありますが。
小判が何段ももなかみたいに重ねられてその束が十はあります、先生はその小判達を見て言うのでした。
「小判を頂けるとは」
「思いませんでした」
「はい」
牛女さんに答えました。
「そうでした」
「そうですか、ですが私達妖怪はです」
「今も小判を使われていますか」
「鋳造して」
そのうえでというのです。
「実は日本政府に内密に認められていますし」
「だからですか」
「はい、お礼としてです」
「受け取っていいのですね」
「そうして下さい」
「そこまで言われるなら」
先生も頷いてでした。
そうしてその小判が入った箱を受け取りました、そうしてです。
今度は牛女さんにお呼ばれして六甲のお屋敷で宴を開いてもらいました、動物の皆にトミーそして王子も一緒ですが。
山海の珍味がある卓上を見て王子は唸りました。
「凄いね、兵庫県の幸が全部ね」
「あるね」
「そうだよね」
「流石に牛肉はないけれど」
牛女さんのお屋敷だけにです、先生は王子に応えました。
「それでもね」
「その他のものがね」
「全部あるね」
「そうだね、鱧も蛸もあればね」
「猪も山芋もあって」
「本当に凄いよ」
「まさに山海の珍味がね」
兵庫県のそれがというのです。
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