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ドリトル先生と牛女

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第十一幕その五

「僕はね」
「先生の病院はお客さん来なかったけれどね」
「イギリスのあの病院は」
「それでもだね」
「そう思うのね」
「人として」
「うん」
 実際にというのです。
「それでもね」
「そうだよね」
「それでもそんなことを思わないのが先生ね」
「そうした風に考えるのが」
「本当にね」
「僕は誰の不幸も願わないよ」
 動物の皆は先生に言いました。
「決してよね」
「そこも先生のいいところだよ」
「人の不幸を願わないことも」
「そうしたことをしないことも」
「それは間違っているからね」
 先生のお考えではです。
「だからだよ」
「そうだよね」
「本当に人の不幸を願うとかね」
「絶対によくないよ」
「というか人を呪わば穴二つ」
「そうも言うしね」
「そう、人の不幸を願うと」
 それこそというのです。
「そうした人にこそね」
「不幸が起こるね」
「人の不幸を願えば」
「そうすれば自分にね」
「かえって不幸が訪れるよ」
「そうなるよ」
 先生は言いました、そしてです。
 どうかというお顔になってこうも言いました。
「淀殿走ってるね」
「ああ、大坂の陣のね」
「豊臣秀頼さんのお母さんね」
「そうだったね」
「あの人は徳川家康さんが憎くてね」
 それでというのです。
「丑の刻参りをしていたそうだよ」
「ああ、あの日本の呪いね」
「呪いの藁人形を使う」
「真夜中にやるっていう」
「あれをしていたの」
「そうみたいだよ、あれは呪いをかけている姿を見られると自分に呪いがかかるっていうし」
 それにというのです。
「実際淀殿の方がね」
「滅んだね、大坂の陣で」
「そうなったね」
「大坂城の中で自害して」
「それで炎の中に消えたね」
「このお話を見ても思うよ」
 本当にというのです。
「人を呪えばね」
「まさに穴二つ」
「むしろ自分の方が呪われる」
「そして祟られる」
「そうなるね」
「だから人の不幸を願うと」
 そうすればというのです。
「かえってね」
「自分が不幸になる」
「まさにね」
「そうなるから」
「よくないね」
「そうだね」
「そんなことをしたらいけないよ」
 心から言う先生でした、そしてです。
 そうしたお話しながらまた論文を書きました、そのうえで牛女さんの最後の治療の日になりましたが。
 治療は無事に終わって先生は牛女さんに言いました。
「これで、です」
「全てですね」
「終わりました」
 にこりとしての言葉でした。 
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