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恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS

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第八十八話 張譲、切り捨てられるのことその九

「生憎だが僕はこのまま姿を消す。それともそれでもだというのか」
「はい、それでもです」
 にこやかな笑みだがその目は全く笑っていない。
「私は慎重な男ですから」
「では先程の酒は」
「安心して下さい、毒はありませんから」
 それはないというのだ。
「毒味もしましたね」
「ではあの酒には何が入っていた」
「鼠です」 
 それだというのである。
「鼠なのですよ」
「鼠!?」
「はい、あの酒には鼠になる妙薬を入れておきました」
「鼠に!?しかし御前は」
「飲む前にそれを打ち消す薬を飲んでいましたので」
「全て読んでいたというのか」
「はい」
 その通りだとだ。微笑んで答える于吉だった。
「貴方がそう言ってくることは読んでいましたから」
「くっ、何ということを」
「貴方に相応しいではありませんか」
 涼しげだがよく見れば悪意に満ちた笑みでだ。張譲に言うのである。
「違いますか?後宮に救う黒い鼠である貴方には」
「だから僕を鼠に」
「では。ご機嫌よう」
 この瞬間にであった。張譲は。
 その姿を鼠に変えていく。そうして己が今まで来ていた服の中に埋もれてだ。
 そこから出て来た鼠にだ。于吉は言うのであった。
「命は奪いませんから」
「チュッ!?」
「御元気で」
 こう告げてだ。何処かに消え去ろうとする鼠にこんなことを言った。
「そうそう、大将軍ですか」
「チュッ!?」
「あの方は猫になっていますね」
 他ならぬだ。張譲が変えさせたのだ。
「あの方が今の貴方を御覧になられればどう思われるでしょう」
「チュッ!」
 猫と鼠だ。どうなるかは言うまでもなかった。
 そのことを意地の悪い笑みで告げてだった。于吉はあらためて彼に告げた。
「身を隠されることをお勧めします」
「チューーーーーッ!」
 張譲である鼠は慌てて姿を消すのだった。こうして後宮での話は終わった。
 その何進はだ。連合軍の中でだ。
 孫権にだ。こんなことを話していた。
「そもそもわらわはじゃ」
「はい。どうしたのでしょうか」
 冷静な声でだ。孫権は彼女の話を聞いている。彼女達は天幕の中で茶を飲んでいる。それと菓子を食べながら話をしているのである。
「あの時は少年じゃったのじゃ」
「御心がですか」
「うむ。最初はそこからじゃった」
 腕を組んで誇らしげにだ。孫権に話すのだ。
「そこから鬼にもなったし西方の金持ちにもなった」
「お金持ちにもですか」
「そうじゃ。四十人程男達を引き連れたな」
 そうした金持ちになったというのだ。
「他には首を切ることが好きないかれた女にもなった」
「何か色々なのですが」
「そうじゃな。まことに色々とあった」
 腕を組みながらさらに話すのだった。
「してこちらの世界においてはじゃ」
「こちらの世界では、ですか」
「あの関羽や趙雲、鳳統とは同じ事務所におるのう」
「事務所ですか」
「そう。事務所じゃ」
 こんなことも話すのだった。
 
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