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恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS

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第八十八話 張譲、切り捨てられるのことその六

「見事だ」
「いい味だった」
「いやいや、そう言って頂いて何よりです」
 親父も二人の礼の言葉に笑顔で返す。こうしてであった。
 勘定を済ませてから一行は店を出た。そうして華陀が言うのだった。
「それじゃあ行くか」
「連合軍のところにね」
「皆で行きましょう」
 貂蝉と卑弥呼も仲間達に話す。
「都からは一先お別れしてね」
「そうしてね」
「とは言っても」
 天草がその都の方を振り向いて述べる。
「戻るのはすぐであろうな」
「ああ、最初の戦いは間違いなくここになる」
 華陀は強い声で述べた。
「それならな」
「最初の戦か」
「つまりこれで終わりではないのですね」
「それは見て回った通りだ」
 そうだとだ。華陀は刀馬と命に話した。
「本当にこれからだからな」
「わかった。それではだ」
「その。最初の戦いに向かいましょう」
 こうした話をしてであった。彼等はまずは都から離れた。そのうえで今向かうべき場所に向かうのだった。
 その都、後宮の奥深くではだ。
 張譲が苛立ちを隠せない顔でだ。周りの者に問うていた。
「では誰もがか」
「はい、皆様既にです」
「都を去られています」
 そうなったとだ。身分の低い宦官達が彼に話すのだった。後宮のその部屋は暗い。張譲はその中で酒を手にして彼等の話を聞いているのだ。
 そのうえでだ。彼は怒りに満ちた顔でだ。こう言うのだった。
「この状況でか」
「おそらくは。最早連合軍は間近に迫っていますし」
「人質もまた」
「何故人質の場所がわかったのだ」
 張譲はそのことについても怒りを露わにさせている。
「わかる筈がないのだ」
「賊軍にはあちらの世界の者が多いです」
「その力を使ったのではないでしょうか」
「そういえば忍とかいう者達もいるそうだな」
 張譲は杯を乱暴に置いた。それで嫌な音がする。
 だがその音に構わずにだ。こう言うのだった。
「忍び込むことを得意として奇妙な術を使うという。その術を使ったか」
「忍術というそうですね」
「影に潜みそこから動くと聞いていますが」
「忌々しい。何だというのだ」
 また言う張譲だった。
「折角の切り札がなくなってしまった」
「それで賊軍は都に迫ってきております」
「虎牢関も敵の手に落ちました」
 つまりだ。最後の護りもなくなったというのだ。
「このままではです」
「我等も」
「だからだな」
 また忌々しげに言う張譲だった。
「十常侍の他の者達は姿を消したのか」
「では。張譲様も」
「御早いうちに」
「わかっている」
 今度は腹立たしげな声だった。
「今すぐにここを後にする」
「はい、それでは」
「御元気で」
 こうしてだった。宦官達もすぐに彼の前から姿を消したのだった。
 そして張譲もだ。すぐにだった。
 部屋を後にしようとする。だがその彼の前にだ。
 于吉が出て来てだ。こう声をかけるのだった。
「今からですか」
「そうだ。都から去る」
 そうするとだ。張譲は不機嫌そのものの顔で于吉に話した。
「こうなっては仕方がない」
「手駒は全てなくなってしまいましたね」
「忌々しい。まさかあの娘を奪われるとはな」
「あの娘のことは残念でしたね」
「お蔭で兵を使えなくなった」
 擁州の兵達だ。それが彼の切り札だったのだ。
 
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