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ドリトル先生と牛女

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第四幕その四

「歯が痛い人を見たら大喜びでね」
「歯を治していたんだ」
「それはいいかな」
「いいことだね」
「虫歯を治してあげていたら」
「怪力で歯をペンチで引っこ抜いていたんだ」
 それがピョートル大帝の歯医者さんでした。
「身長二メートルでいつも斧やハンマーを使っていた怪力でね」
「うわ、痛そう」
「そんな人に歯を抜かれたら」
「虫歯より痛そう」
「思い切り歯を抜かれるなんて」
「物凄い力で一気に抜くから」
 虫歯になった歯をです。
「後で腫れ上がった人もいるそうだよ」
「うん、そうだね」
「何といっても」
「それはね」
「そっちの方が怖いんじゃない?」
「虫歯よりも」
「だから皇帝さんの前では皆歯が痛そうな素振りは見せなかったんだ」
 そうだったというのです。
「本当に歯を抜かれていたからね」
「皇帝さんらしくない行いだけれど」
「そんな虫歯の治し方もあったんだ」
「虫歯は抜く」
「そうしたものが」
「そしてこれが普通だったんだ」
 歯科のというのです。
「かつてはね」
「虫歯は抜く」
「それで終わりだったんだ」
「そうだったのね」
「だから昔は歯が何本かなくなっている人も多くて」
 それでというのです。
「今みたいに口に歯が沢山ある人もね」
「少なかったのね」
「昔は」
「そうだったのね」
「うん、虫歯になったら抜いていて」
 その歯をというのです。
「歯磨き粉や歯ブラシも今よりレベルが低かったし」
「ああ、そういえばね」
「歯磨き粉とか歯ブラシっていつもCMで言ってるね」
「最新技術を使ったとか」
「お口の中を清潔にするとか」
「そうね」
「こちらも日進月歩だから」
 技術的にというのです。
「凄い技術になっていてね」
「逆に言うと昔はそちらの技術も拙くて」
「それでなんだ」
「その分虫歯の人もいたんだ」
「今より多かったんだ」
「歯を磨くことの大事さも今より普及していなくて」
 それでというのです。
「そしてね」
「そのこともだね」
「虫歯も多かったのね」
「そうなんだね」
「歯のない人も」
「そうだよ、だから今日露戦争のお話もしたけれど」
 先生のお話はこちらに戻りました。
「乃木希典大将は歯がかなりなくなっていたんだ」
「児玉さんは虫歯で」
「乃木さんはそうだったんだ」
「皆歯で苦労していたんだね」
「昔は」
「うん、僕は今のところ虫歯になったことはないけれど」
 それでもというのです。
「虫歯になったらね」
「大変だね」
「虫歯はまずならないこと」
「そのことが大事だね」
「何といっても」
「そうだよ、だから毎日磨いていくよ」
 歯はというのです。
「そうしていくよ」
「それが第一だね」
「歯のことは」
「本当に」
「酷いお話もあってね」
 先生はウイスキーをさらに飲みました、ボトルのそれを自分で入れてロックで楽しみ続けています。 
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