ドリトル先生と牛女
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第四幕その三
「お口の中も常に健康に」
「身体だけじゃなくてお口の中もだね」
トートーの口調はしみじみとしたものでした。
「いつも奇麗に」
「さもないと虫歯になったり」
「歯槽膿漏にもなって」
オシツオサレツはお互いの口の中の歯を見ながらお話しています。
「健康も害する」
「本当に怖いね」
「だから先生も歯を磨いてね」
最後にガブガブが言いました。
「僕達もそうしているね」
「うん、本当にね」
まさにとです、先生は皆に言いました。
「歯磨きは大事だよ」
「全くだね」
「毎日ちゃんと歯を磨かないとね」
「健康の為にも」
「虫歯になって痛みで苦しまない為にもね」
「実は日露戦争で活躍した児玉源太郎さんも虫歯だったんだ」
先生はこの人のお話もしました。
「それで苦しんだらしいよ」
「そうだったんだ」
「あの人虫歯だったんだ」
「それで苦しんだんだ」
「うん、あとね」
さらに言う先生でした。
「歯は迂闊に抜いたら駄目だよ」
「そうだよね」
「だから先生牛女さんの歯は抜かなかったんだね」
「手術で済むとわかったから」
「尚更だったのね」
「そうなんだ、歯が一本ないだけで」
それだけでというのです。
「随分とね」
「違うんだね」
「歯が一本あるかないかで」
「それだけで」
「そうなんだ、だから歯は出来るだけ治療して」
そしてというのです。
「抜くことはね」
「しないのね」
「出来るだけ」
「それで手術を選んだ」
「そうなのね」
「そうなんだ、昔の歯医者さんは抜くだけの人が多くて」
それでというのです。
「よくなかったんだ」
「確かピョートル大帝?」
「ロシアの皇帝さんだったね」
「ロシアの近代化を推し進めた」
「あの人だったわね」
「あの人は興味があるものは何でも身に着けたがる人でね」
そうした人でというのです。
「歯科のこともね」
「興味を持ったから」
「身に着けたんだ」
「そうだったんだ」
「船や大砲を造る技術も身に着けたから」
そうもしたというのです。
「あの人はね」
「何か凄いね」
「皇帝って畏まってると思っていたら」
「あの人は違ったんだね」
「そうだったのね」
「悪く言うと随分ガラッパチな皇帝さんでね」
先生はこうした日本語も使いました。
「それでね」
「そうした技術を身に着けていたんだ」
「ご自身で」
「そんな人だったんだ」
「礼儀作法とには無頓着で」
それでというのです。
「天衣無縫、我が道を行くで」
「うわ、遠くで見ているといいけれど」
「近くだと困る人?」
「そんな人かな」
「ひょっとして」
「うん、動く台風みたいな人で」
実際にというのです。
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