仮想空間の歌う少年
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13ー私の気持ちで
前書き
途中から完全オリジナル展開。
それでもあなたは飛び込むの?
「ふう…。」
バトルが終わり、私はため息がもれる。そして体制が崩れているキリトに向かって労いの言葉をかけつつ手を差し出す。
「お疲れ様。」
「ああ…助かったよ。シノン。」
「この礼は…そうね。」
私はニコリと笑って。
「私と佳に銀座のケーキ屋でどう?佳も喜ぶし。」
「牛丼屋のクーポンで勘弁してくれよ…。」
「嫌よ。それ、佳しか喜ばないわよ。」
私がはあ、とため息をつく。
まあ、佳が喜びそうだし。と言おうとした時。不意にキリトの表情が変わる。
「待ってくれ!」
いきなりキリトはそう叫ぶと、階段の方へと駆け出していった。私は一瞬、呆然とするがすぐさまキリトの後をついていく。
階段を駆け下りるとキリトは何かを逃したかのようでに近くの自動販売機に拳を叩きつけていた。
「クソ!」
「キリト…。」
「……何か飲むか?」
「いえ…。」
なんて言葉をかけて良いか分からなかった。正直、佳の記憶に関してはキリトが頼みだ。
……こんな時。佳ならなんて声をかけるんだろう…。
そんな事を考えてるとキリトは不意に自動販売機を見て何かを思い出したようで。
「ユイ!ここ数日でみたフードの子が指先した方向を覚えてるか?」
「はい。それが何か?」
「それを東京の地図上にプロットしてみてくれ。」
「わかりました!」
すると目の前にまるでミニチュアモデルのような東京の街が出現する。そうしてキリトがフードの子を見つけて指さした方角が矢印で表示される。その矢印が示した先には…。
「世田谷区大岡山?」
「ユイちゃん、ここには何が?」
私が質問するとユイちゃんは的確に答える。
「これは…東都工業大学の位置をさしています!
更に東都工業大学とエイジというプレイヤーを関連づけてサーチします!」
そうすると今度はミニチュアモデルのような東京の街の上に様々な写真が出現する。
「いた。」
キリトが何かを見つけたみたいで、写真をじっと見つめている。
「この写真一緒に写っているのは…。」
「オーグマーの設計をした重村徹大教授です。」
「オーグマーの?」
きな臭い話になってきたように感じた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
そのままキリトにバイクで夜中なので送ってもらい、次の日。私がいたのは…。
「そうか。佳がか…。」
雪宮病院の院長である佳のお父さんに会っていた。私もキリトについて行って大学へ行こうと思っていたが佳自身があんな状態なのに何故か佳のお父さんに会うことを躊躇っていた。きっと自分のヘマを、認めたくないからだろう。そして私が来た理由はもちろん佳のSAOの記憶についてだ。
「確かにそのような症例は確認されてるな。調べたら結構確認されている…。」
そう言って佳のお父さんは真面目な顔で資料を見ていると。
「それで。佳はなんて言ってるんだ?」
「佳は…。」
そう言って今の状況を説明する。SAOの記憶を失っている事、そして佳が私の事をどんどん好きという気持ちが無くなってしまってること。話すだけ話した。すると佳のお父さんはなるほど。と一言言うと。
「あいつそんな状況なのか…。『詩乃の事嫌い。』とか言ってるわけだ。」
「そこまでは言ってませんけど…どうにかならないんですか?」
佳の声に似てる佳のお父さんの声で「詩乃の事嫌い」と言われると少しゾッとしつつ。そう私が言うと佳のお父さんはふっと笑って。
「大丈夫だよ。たぶん佳は口ではそんな事言ってるけど…。詩乃ちゃんの事を嫌いになることは絶対にない。」
「え?」
なぜそう言いきれるのか分からないので思わず声が出た。佳のお父さんはははっと笑って。
「だって詩乃ちゃんのために自分の別の人格も作り上げて記憶を無くしてたくらいだぞ?
もう一度言う。大丈夫だ。記憶が無くなっても心が覚えてるから。」
「心が…。」
「まあ、医師である自分が言えた立場ではないけど心という物はあると思ってるんだ。その心というのは医学では解明出来ない力を起こす。」
すると佳のお父さんは遠くの方を見てあの子の話を始めた。
「恐らく詩乃ちゃんも知ってると思うけど紺野さん…ユウキちゃんも凄かった。佳に会う前も明るかったけど佳と再開してからもっと元気だった。『ユキに会えてとても嬉しい』って。外にも出れるかな?と思うくらい元気だったんだ。」
「…ユウキさんが?」
「だから心配することなんて何も無い。」
そう言って私を見てニコリとする。さすが親子。笑顔もよく似ていた。いつもの佳の笑顔に似て安心する。
「大丈夫。あいつの心を信じてあげてくれ。きっと心は詩乃ちゃんを求めてるから。
…求めてるはちょっと変か。」
そう言ってくる佳のお父さんの言葉を信じようと思ってその言葉にはい。と頷く。佳と同じで何故か言葉には説得力があった。
「んじゃ佳の事は頼んだぜ?詩乃ちゃん。」
私はもう一度頷くと恐らくマンションにいるであろう佳に会うために診察室を後にした。
残された雪宮真はふっと笑って。
「きっと…大丈夫さ。」
そう呟いていた。
後書き
という訳でシノン視点は次回で終わりで再びスノー視点になっていきます。
きっとスノー君ならこの逆境を乗り越えられると信じています。
書くの俺だけど。
感想と評価ボタンよろしくお願いします。
では次回もよろしくお願いします。
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