仮想空間の歌う少年
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9ーrhapsody (後編)
旋律が変わると僕の背筋にゾクッと寒気が走る。
…この曲調…嫌な予感がする。
そう思っているとどうやらヤドカリ戦は中盤戦になったみたいで転んで動けなくなっていた。周りにプレイヤーが集まり、タコ殴りにしている。
「あ、ピナ!」
するとヤドカリから遠くにいたシリカがドローンから召喚されたピナらしきもの小竜に向かっていた。
僕は嫌な予感のまま様子を見ていると…。
「きゃああああ!」
そのピナはシリカに対して1回威嚇するといきなり大きくなり黒い巨龍へと変化した。
…やばい。
見るとヤドカリも転んだ状態から起き上がっていた。
何度も言うこれはやばい。僕はもう一度精神を集中させる。
「…むこ…!?」
なりふり構っていられない。もう一度無考状態に入ろうとし、目を瞑る。そして目を開けた所で。
目の前に先程の青年。エイジがいた。
「な!?」
するとエイジは僕に向けていきなりボディにフックを放つ。無考の弱点。入ろうとするところが無防備になるところを完璧に突かれた。
いきなりフックがまともに入り、息が出来なくなりその場に蹲る。
「ぐ…!何?君!?」
「ユナが歌っている中で…。『音の死神』には歌唱はやめてもらいたい…。黙ってて貰いましょうか!」
すると今度はダメ押しにハイキックをまともにくらい、逃げ惑うシリカの方へと吹っ飛ばされる。
「く……。」
そしてエイジはさらにシリカの方へと向かうと…。
「あ、すみません…きゃあ!」
シリカを突き飛ばす。僕はボロボロの身体を引き摺りながら巨龍に狙われているシリカの前に立とうとするが動けない。
「シリカ!」
「シリカちゃん!」
アスナが僕達に気付いて慌てて駆け寄る。しかし巨龍が僕達に向けて鉤爪で切りかかる。
「く!?」
シリカを守る為にアスナが庇う中、僕は不利な体勢から大鎌を鉤爪へと向けて振り下ろす。しかし相手は巨体。僕の大鎌は木っ端微塵に砕け散り…。
「いやああああああああああああああああああああああああああああ!」
「うわああああああああああああああああああああああああああああ!」
鉤爪が僕とアスナを貫いた。
俺が恵比寿に着くとアスナとスノーが巨龍…ドルゼル・ザ・カオスドレイクの鉤爪を喰らって倒れていた。ユイが心配そうにアスナに近寄り、シリカはその場に座り込んでいる。
「キリトさん!アスナさんとスノーさんが!」
「ママ!」
「大丈夫か!?」
俺はアスナとスノーに駆け寄る中。シリカを突き飛ばし、スノーを蹴り飛ばした青年は満足そうに笑っていた。
「お前…!アスナとスノーを…!」
俺が詰めよろうとした瞬間、いつの間にかにその青年に剣を突きつけられていた。それはまるでVR空間のアスナや無考状態のスノーに匹敵する速さだった。
…速い!
「ふん、他愛ないな。VRでは最強の剣士と死神もARだとこんなものか…。団長ヒースクリフ…茅場晶彦を倒した伝説の名が泣くぞ?
『黒の剣士』『音の死神』…。」
「なんだと!」
俺はもう一度青年に詰めよろうとするが後ろに飛びのく。まるで体操選手のようだ。掴もうとした俺の腕は空を掻く。
「な!」
するとリズと他のプレイヤー達が騒ぎを見て駆けつけてきていた。
「こらー!プレイヤーマナーを守れ!」
しかし巨龍の火炎弾によってリズ達は爆風でちかよれない。
爆風が舞い、巨龍が再び俺達を襲おうとしたところで。
「残念!時間切れ〜。」
突如、ユナがそう言うとヤドカリが地面へと潜り…巨龍もどこかへと飛び立って行った。先程の青年もいつの間にか居なくなっていた。
「…。」
先程の青年がいた場所をぐっと睨むとアスナ達の方へと駆け出した。
エン…ロー…どの…で?ヒー…ク…フ!!………………………………………………………。
消えて行く。
僕の大切な旋律が。
詩乃の事を想ったあの歌が…。
やめて!それだけは…。
それだけは奪わないで!
「スノー!おい!スノー!」
はっ!と目を覚ますと座り込んでいるアスナ、シリカとリズ。そして何故かキリトとユイがいた。いつの間にかに戦闘は終わっていたらしく。周りには僕達以外誰もいなかった。
「悪い。キリト。ヘマやった…。イテテテテ…。」
立ち上がろうとするが力が入らない。するとリズが心配そうに僕を見て。
「アンタ、あのナンバー2のやつにボコられてたでしょ?大丈夫?
何なのあいつ。」
「大丈夫じゃないよ…。ボディに2発喰らった。」
僕はフラフラして立ち上がった。少し吐き気がするが平気だろう…。ああ…詩乃に迷惑かけちゃうな…。
し…の…?
「スノー?」
キリトとアスナが心配そうに僕を見るが慌てて笑って。
「ううん。大丈夫。なんでもない。」
僕はそう言って大きく深呼吸して。すっと前を見る。
おかしい…。
まるで自分の中が欠けていく感覚。砂時計が下に落ちるような感覚。塵が風に舞って消えていく感覚…。
「スノー?本当に大丈夫か?」
キリトがまた心配そうにみてくる。今度は笑顔が作れなかった。真顔で返事を返す。
「…大丈夫。先に帰るね。僕。」
そう僕は言うとバイクを停めている駐車場に足を向けた。
後書き
スノー君弱い。
スノー「さ〜く〜しゃ〜!」
何?
スノー「なんだこの展開は?」
ちょっとやりたい展開があるんだよ…。
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次回もよろしくお願いします!
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