仮想空間の歌う少年
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10ーsonata
前書き
圧倒的妄想の世界です。オリジナル展開です。
それでもあなたは飛び込むの?
私はバイトから帰ると部屋の前に佳がいた。ドアに寄りかかってまるで心ここに在らずという感じだ。
「佳、どうしたの?」
「詩乃…。」
すると佳はいつものニコニコ笑顔が無く、無表情で私を見つめる。
「詩乃…僕…。」
そう言うとその場に蹲り、泣き崩れ始めた。慌てて私は佳の元へと駆け寄る。
「ちょっと!?佳?」
「う…う……。
ごめん、詩乃。僕は……。」
佳は私に、まるで糸の切れたあやつり人形のようにもたれかかってくる。
「どうしたの?佳。」
不安そうな顔で私を見つめる佳。その口から放たれた言葉はとてもいつもの飄々とした佳ではなかった。
「ねえ。詩乃…。僕達…なんで…。」
「え?」
「…分からない。頭がごちゃごちゃして何が何だか分からない。」
佳はそう呟くと今度は悲しそうな顔で私を見つめる。
「ねえ、詩乃は僕の事、どう見える?雪宮佳がちゃんとここに居る?」
「何言ってるのよ…?佳は佳でしょ。」
「…。
うん…そうだよね。本当にごめんね。」
するといきなりぴょんとその場に飛んで立つと明らかに無理した笑顔で私に笑いかける。
「ごめんね!なーに考えてるんだろ?僕、あはは…。
大丈夫。詩乃に会ったら元気出た!それじゃあ明日ね!」
そう言って佳は自分の部屋へと帰っていく。私はそれを見てポカーンとして立ち尽くす。
「…佳?」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
頑張って笑顔を作って玄関のドアを閉めるとドアにもたれかかってそのまま座り込む。
分からない。なんで…。詩乃が大好きなのに…。その気持ちが砂時計の砂の様にどんどんと消えていく。
…怖い。オーディナル・スケールでゲームオーバーになってバイクで帰ってからよく分からないけどあの日…。郵便局のあの日を、鮮明にまじまじと思い出す。ハサミで突き付けたあの感覚…。
「クソ!違う!僕は!」
壁に拳を叩き付けて気を紛らわそうとするけど頭に鮮明にこびりついてくる。よりによってなんで…。1番嫌なのは…。
「なんで!?
なんで!?詩乃の事が想えないの!?」
分からない…だってSAO時代に僕は…。SAO?アインクラッド?SAOってなんだ?
分からない…まるで記憶にモヤがかかって…。
頭を抱えて蹲る。
「くっ………………。」
砂時計だ。どんどんと消えていく…。
「『今』という現実を歩いて行かなくちゃ♪
出来た!」
アインクラッド39層、アーブルの自室でギターを弾きながらようやく自曲が出来た。詩乃の事を想った曲。いやはやそれにしても…。
「僕ってばやっぱり音楽に関しては天才だね♪」
そんな事を考えて安楽椅子から立ち上がると目の前に詩乃がいた。
「あ!詩乃!曲が出来たよ!ちょっと恥ずかしいけど♪ってね。」
「…。」
すると詩乃がこちらを振り向くと、いつものクールな表情で。
「ねえ、佳。なんで私が好きなの?」
「え?そりゃあ…。」
答えようとした所で場所が転換する。目の前の詩乃が消え去り、今度は僕達の運命が変わったあの日…。あの郵便局に僕はいた。血だらけで銃を突きつけられている詩乃。
「…詩乃!」
僕はハサミを持って駆け出そうとした所で目の前には…。
「もう、何もかも終わりなんだよ…スノードロップ。」
先程のエイジがいた。そうしてそのエイジに片手剣を突きつけられて……。
またも意識が暗転した。
「は!」
目が覚めると玄関のドアにもたれかかって寝ていたみたいだった。夢の内容は…。思い出せない…。僕はバキバキの身体を何とか立ち上がらせる。…すると携帯にメールが来ていることに気付いた。
「キリトからだ…。えっと。」
今からALOに来られるか?の内容だった。気分が悪くて断ろうと思ったが最後の1文に引っかかりをおぼえた。
『SAOのこと…覚えているか?』
その1文を見て僕はすぐさまアミュスフィアに手をかけていた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「キリト。メール。どういうこと?」
22層のキリト達のホームに行くとアスナとキリト、そしてシノンがいた。僕は笑顔ではなくキリトを睨みつけて話す。
「実は…アスナがSAOの記憶を思い出せないって言ってて。そしたらシノンもスノーの様子がおかしいって連絡が来たから…。」
「アスナも?」
僕はキリトを睨むことをやめてアスナを見ると俯いて今にも泣きそうな状態だった。泣きたいのはこっちも同じだが僕はぐっと我慢する。するとアスナもボソッっと。
「SAOの記憶が全く思い出せなくて…。」
「スノーも。さっき会った時からおかしいと思ってキリトに連絡したの。そしてアスナも様子がおかしいって…。」
シノンがそう説明する中、僕はシノンの方を見れなかった。いつもあんなに傍にいたいと思うのにこれっぽっちも思わなかった。するとキリトが僕を見てぽつり。
「スノー。お前も…。まさか。」
「…うん。SAOの記憶が思い出せない。そればかりか郵便局のあの事件がフラッシュバックしまくる。
それに…。」
「それに…?」
僕はシノンの方を見ずにキリトとアスナの方を見て。
…たぶん1番悲しい顔をしているだろう。
「詩乃の事が…………分からない。いつものように大好きって気持ちが湧いてこない……。」
「スノー…。」
キリトが俺に心配そうに何か声をかけようとするがその前に。
「分からない!!なんで!?詩乃の事、大好きなのに!!まるで砂時計の砂の様に『好き』って気持ちが零れ落ちていくんだ!なんで!?」
「スノー!」
「…!」
僕は泣きながら駄々っ子のようにすると僕を抱きしめる人影がいた。
シノンだ。
「佳。落ち着いて。」
「詩乃……僕…僕は……。」
僕が泣き止むまで詩乃は僕をずっと抱きしめてくれていた。
そんな中。キリトは俯くアスナと僕を見て険しい顔で何かを考えていた。
後書き
後書きスノー君は当分お休みです。
シノン「なんで私が…?」
お願いします。シノンさん。
シノン「そうね…スノーの代わりに私が頑張らなきゃね。」
という訳で。
次回もよろしくお願いします。
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