仮想空間の歌う少年
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前書き
後半甘いです。
それでも問題ないぜ!という方はどうぞ!
「こんにちは。」
追加で頼んだケーキを食べて、紅茶をゆっくり飲んでいると50代くらいの女性の方が僕の席にやってきた。
僕は席を立ち頭を下げ挨拶をする。
「こんにちは。雪宮佳と申します。」
「ご丁寧にどうも。
結城京子です。…いつも明日奈がお世話になってます。」
「いやいや。僕の方がお世話になっている事が多くて…。
どうぞ。お掛けください。」
僕はさっと明日奈のお母さんに席に進めて自分も後から座る。そして僕はにこやかに問いかける。
「今日はどの様な事で?」
すると明日奈のお母さんはため息混じりに。
「実は明日奈を転校させようと思っていて…
そしたら雪宮君がもう転校していたと聞いて。なんで転校したのか聞きたくなってね。」
「そうですか…。」
僕は紅茶を一口飲んでその話を黙って聞く。明日奈のお母さんは近くの店員さんを呼び「コーヒーをください。」と注文していた。
「それで実際どうなのかしら?なんで転校したの?やっぱり雪宮家の跡継ぎとしてそうしたのかしら?」
「違います。」
僕は笑って首を振りながら否定すると、明日奈のお母さんは不思議そうに僕を見てきた。
「そう?なら何故かしら?やっぱりいい大学に行くためとか…?」
「それも違いますね。」
僕はそのまま苦笑しながら明日奈のお母さんに笑いかける。
「じゃあなんで…?」
「僕の大切な人がその高校にいるから…。たったそれだけです。」
すると明日奈のお母さんは余計不思議そうに僕を見てきた。
「それだけ?本当にそれだけの理由で?」
「ええ。」
僕はニッコリと微笑みながら紅茶を一口飲む。
窓際のこの席にちょうど太陽の光が差し込み飲もうとする紅茶が輝く。
「…でも雪宮君は考えないの?やっぱり病院の跡継ぎとしてキャリアとか…。」
僕はその言葉を聞いて顎に手を当てて少し考えて答える。
「そうですね…。僕はもう目標が決まっているので。」
「目標?」
「はい。『医者になる。』それが僕の目標ですからね。」
僕はそう言うと明日奈のお母さんさんはまだ質問をしてきた。
「って事はやっぱり勉強のために転校したっていうのもやっぱりあるのかしら?」
僕はその質問を聞いてやっぱり笑顔でかえす。
「いえいえ!まさか!さっき言った通りですよ?」
「それって大切な人のため?」
「はい。僕の…大切な人です。」
僕は真面目な顔になりそのまま明日奈のお母さんに言いたい事を言い放つ。
「正直…僕はキャリアとか関係ないと思うんですよ。…大切なのは自分のやりたい事。夢。道。それらを見つけること。それが重要だと思うんです。
…たとえ良い高校、大学に行ってもそれらを見つけられなかったら絶対に失敗する。僕はそう考えています。」
「…。」
それを聞いて明日奈のお母さんは黙り込んでしまった。そこへコーヒーが届く。
僕はそのコーヒーが届いてからまた話を進める。
「明日奈さんも言っていました。『自分のやりたい事を見つけたい』って。
…それを出来るのは今の学校が一番だと思いますよ。」
僕はそう言ってもう一口紅茶を飲む。
「…僕の言うことは子供の戯言として流してもらって結構です。
…ただ。明日奈の話は聞いてあげて下さい。お願いします。」
僕はそう言って頭を下げ、自分の伝票を持って席を立つ。
テーブルから離れる途中。明日奈のお母さんはボソッと一言呟いた。
「…すごいわね。雪宮君は。」
僕はその言葉を聞くと。くるっと回って明日奈のお母さんに笑いかける。
「僕は…凄くありません。僕は夢を決めてしまいましたから。
…だけど明日奈さんは決めてない。道はたくさんありますから。」
そう僕は明日奈のお母さんに話すと。今度こそ伝票を持ってテーブルを後にした。
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僕はそのまま家に帰り、部屋着に着替えるとアミュスフィアを被る。
…僕の大切な人と会う約束を仮想空間でしているからだ。
「…リンクスタート。」
ALOにログインすると僕はいつもの大きな樹のところに行き、枝に腰掛ける。
「スノー。」
「シノン。」
すると今日きたのはシノンだった。シノンはその容姿のネコの如く素早く樹を登り、僕の隣に腰掛ける。
「ふふっ。」
「何笑ってるの?」
するとシノンは僕の顔をみてニコッと笑ってきた。…なんでだ?
「なんか。良いことあったの?」
「…良い事はないけど。ただ僕は考えさせられただけ。」
僕はストレージからシャボン玉を取り出し、それをフー。と吹く。シャボン玉は綺麗に樹の上の方に行き、綺麗に樹を彩る。
「ねえ?シノンは…詩乃は僕が転校してきて嬉しかった?」
「…?なんでそんな事を聞くの?」
「何と無く。」
僕はシャボン玉をさらに吹いて木の周りがどんどんシャボン玉だらけになる。ちなみにこのシャボン玉は僕の意思で割るのを止めることができる優れものである。
するとシノンは両手を樹の枝に掴んでシャボン玉を遠い目で見ながら話す。
「私は…もちろん嬉しかったわよ。純粋に好きな人が同じ学校は嬉しいし。それに…。」
「それに?」
僕はシャボン玉を吹くのをやめてシノンを見る。シノンはシャボン玉を遠い目で見るのをやめて僕の目を見て。
「私はね。もう一度。佳と学校生活を送れる事が出来て嬉しいの。
…あの事件から止まっていた私の学校生活の時計の針がようやく動き出した…。そんな感じがするの…。」
「…。」
僕はその言葉を聞いてシノンにさらに近く。するとシノンは僕の肩にチョコンと寄りかかってくる。
「ここに佳がいる。…それだけで安心するから。」
「詩乃…。」
僕は寄りかかっているシノンにそっと顔を近づける。
…そうして唇と唇が静かに触れる。
「なんか…疲れた。」
僕はそう言ってシノンの膝に頭を乗せて眠る。
…要は膝枕です。
「お疲れ様。
…おやすみ。スノー。」
「うん…。」
2人の周りにはシャボン玉が乱反射して明るく輝く中。
シノンとスノーは幸せな時を楽しんでいた。
後書き
圧倒的にケンケンさん次の章に行く気まんまんです。
具体的にはTwitterでも流した参考資料の話です。
構想はねってあるのでお楽しみに。
ちなみにマザーズロザリオ編。Lovers rockーelegiaco編は執筆は終わっているので小出ししていきますのでよろしくお願いします。
では次回もよろしくお願いします。
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