仮想空間の歌う少年
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前書き
あ、あとがきで御報告があります。
「それでさっきの話なんだけど。」
僕達は最寄り駅から降りてゆっくりと雪宮病院に向かい歩いていく。
はあ、と息を吐くと白い息がふわっと舞う。
「うん…。」
「単刀直入に言うよ。
…僕はユウキにあの時恋をしたんだ。」
「…。」
僕は嘘偽り無く本心のまま隣にいる大切な人に話をする。メガネをかけた少女はただ僕の話を聞いてくれていた。
「…それが僕の罪。」
「え…?」
僕は手をヒラヒラさせ、不思議そうな顔をしている詩乃に笑いかける。
「僕はね。あの事件の前から…僕は君が好きだったんだ。
…今言うのは恥ずかしいけどね。」
「佳…。」
僕はあの事件の前から君が…朝田詩乃が好きだったんだよ。
…詩乃。
僕は少し照れを隠してそれを言ったあと真面目な話を繰り出す。
「だけど。記憶を無くして。僕は違う人に恋をしたことが僕は許せなかった。
…そしてその考えはコンコンへの裏切りなんだ。」
僕は笑って詩乃を見ると詩乃は悲しそうな顔をしていた。きっと僕も悲しそうな顔をしているのだろう。詩乃の瞳に映る僕が悲しげに微笑んでいた。
「ねえ?詩乃。僕は裏切ったんだよ。他の誰でもない詩乃を。そしてコンコンを。」
これが僕の罪。
好きな人を2人も作ってしまった罪。
いつもおちゃらけて他の女の子と話したりするけど本心は詩乃にあった。だけど僕のあの時の記憶が僕を蝕んでいた。
…苦しくて。
「僕は…」
「謝らないで。」
詩乃は僕が謝ろうとする言葉を遮った。そして人差し指を立てて僕の口元に当てる。
「私はそんな佳が好きだから。」
「…え?」
僕は驚いて詩乃を見る。すると詩乃はマフラー越しでも分かるほど得意そうに微笑んでいた。
「佳のその優しさが私は好きだから。
…普通は考えないよ。そんな事。」
「でも…。」
すると詩乃は僕の少し前を歩く。そうして詩乃は不意に歌を歌い始めた。
「…ここに居るすぐ傍に♪それだけが僕の全て♪」
「…。」
「私はそんな考えだから。」
僕は少しその歌を聴き少し驚きそ僕も歩くスピードを早め詩乃の隣に行く。
「ねえ詩乃それって…」
「私はね。佳がそばに居てくれたらそれでいいの。」
詩乃はすこしだけ顔を赤くして話をする。僕はただ話を聞きながら詩乃の歩くペースに合わせる。
「私は束縛はしないから…」
「なんかその言葉聞いた気がする。」
「自分で言ったんじゃない。」
詩乃がぺしんと笑顔でデコピンをしてきた。その顔がとても眩しく見えた。
「うん…そうだね。」
もう、病院はすぐ近くにあった。
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僕達はコンコンの病室に行く。コンコンの部屋は7階の特別病棟だ。エレベーターに乗りながら詩乃に話しかける。
「…まあ、子供の僕がやってる事はただ患者さんに話を聞いたりしてるだけなんだよね。」
「そうなんだ?」
「うん。流石に医療行為をやっちゃうと法律違反だからね。」
そうやって話をしていると。ピンポーン。という音とともにエレベーターのドアが、開き7階に着く。僕達は…と言っても僕は担当の倉橋先生を呼ぶ。
「すみません…雪宮です。」
「ああ、佳君か。話は院長から聞いているよ。
もう話せるよ。」
「ありがとうございます。」
僕達は倉橋先生に一礼すると。コンコンに話をするため放送室にあるような機械からコンコンを呼ぶ。
「ヤッホー。コンコン遊びに来たよ♪
…詩乃付きで。」
『ユキ!』
スピーカーから出てくるコンコンの声がとても嬉しそうだった。すると画面の中のコンコンは詩乃をみて。
『あ、あなたが詩乃さん!こんにちは!
…ありゃ?』
「こんにちは。」
「うーん5時だから合ってるよこんにちはで。」
『そうなの?』
「そうなの。」
僕はニコッと笑ってモニター越しのコンコンに話をする。
「っとまあ、それよりコンコン。
僕の来た理由は分かるよね?」
『…アスナの事?』
「ご名答。」
僕は笑いを崩さずに画面の中のコンコンに話しかける。そうしていきなり単刀直入に話を繰り出す。
「会ってあげて…アスナに。」
するとコンコンは困ったような笑みを浮かべて僕を見ている。僕はその顔を見ても笑顔は崩さない。
『それってこの部屋に来るって事?』
「そういう事。」
コンコンは腕を組んで考えるポーズをとる。すると僕の隣にいた詩乃が。
「ねえ、ユウキ。私からもお願い。会ってあげて。」
『詩乃さん…』
するとコンコンは少し考えた後。じっと詩乃を見て。
『なら、詩乃さん一つだけ質問に答えて!』
するとコンコンはいつもの軽いにこやかな口調で話を始めた。
『ーーー?』
「もちろん。」
すると詩乃はその質問に即答で答える。僕は少し驚きがあった。
「ねえ。その質問ってアスナ関係ないよね…。」
『いいじゃん!別に!僕が聞きたかった事なんだ!
…それを聞けて良かったよ。いいよ!会っても!』
「ありがとう。」
『ただし!』
するとコンコンは人差し指を上に向けて。
『アスナ一人で来させてね!』
「分かってるよ。
…僕も最初からその考えだから。」
僕はニコッと笑って返した。
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次の日。僕は放課後、明日奈と病院近くの喫茶店で待ち合わせをしていた。窓際の席で本を読んでいると…。
「こんにちは佳君。」
「こんにちは…。はいこれ。」
僕は病院の住所のメモと僕の名前の入った許可証を渡す。
「これを出せば7階の特別病棟に入れるから。
…コンコンに会ってきな。僕は何も言わないよ。」
「そう…。」
僕はカモミールの紅茶を一口飲んで緊張している明日菜を見ると僕はニコッと笑って。
「…そんな顔でコンコンに会うの?笑顔で会ってきな?」
「ねえ。佳君。
ユウキと君の関係って…」
「それはコンコンから聞きな。」
僕は黙り込むと明日奈は決意の表情で喫茶店を飛び出して行った。
「…さて。ここから正念場だ。」
僕はスマホを取り出し予定表を見る。
そこには『結城京子さんと面会』と書いてある。
「…よし!」
僕はカモミールの紅茶をグイッと飲むと僕はおかわりの紅茶とケーキを頼むため店員さんを呼び出した。
後書き
という訳でマザーズロザリオ編が終わってもアリシゼーション編には入りません。
その代わり今、ネタを練ってる例のお話を書いていきます。
ぜひぜひ皆さんよんでください。
では次回もよろしくお願いします。
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