天才少女と元プロのおじさん
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入部編
2話 ビックリしたよー······
ゴールデンウィークが終わり、正美の学校生活は通常運転を再開した。およそ1週間弱振りの授業は中々に堪えたが、ようやく迎えたお昼休みに表情を緩め、鞄からお弁当を取り出す。
「あなたが三輪さんだね!」
「へ?」
正美が振り向くと、そこには金髪の娘が2人に茶髪の娘が1人、黒髪ショートの娘が1人と、クラスメイトの大村さんと川崎さんが居た。
「ふっふっふー」
茶髪の女の子が怪しげな手の動きをしながら正美に近付く。
正美は、ある一つの可能性に辿り着き、その顔を青ざめた。
「······確かに大村さんってお嬢って感じだし、もしかして何か粗相を······」
「え?あの、三輪さん」
あらぬ誤解をしている様子の正美を見かねて、白菊は誤解を解こうとするが、その前に正美は頭を低くし、手掌を上に向けた。
「お、お控えなすってっ······お控えなすってっ······」
「私の親は堅気の人間ですっ」
暴走気味の正美に対し、白菊は声を上げると、正美は上目遣いで白菊を見つめる。
「······本当に?風俗送りにしない?」
「しませんっ」
白菊がキッパリ言うと、ようやく誤解が解け、正美は脱力して机に突っ伏した。
「ビックリしたよー······」
正美と白菊以外の面子は全員苦笑いをする。
「で、皆さんお揃いでどうしイィッ!?」
突っ伏しながら、ここに集まった理由を聞こうと思ったのだが、急にふくらはぎを誰かに触られた為、変な声を出してしまった。足元に目をやると、金髪の娘の一人がしゃがみこんで、正美のふくらはぎを触ってた。
「凄~い。しっかりしてるのに、こんな柔らかい筋肉初めてだよ~。あ~······」
目をキラキラさせながらふくらはぎを掴んでいる少女を、もう一人の金髪が羽交い締めにして引き上げる。良く見ると、2人は同じ顔をしていた。
「何なのよー!もー!」
正美はまえのめりになって怒ってますアピールをする。
セクハラ少女を引き上げた娘が気まずそうに口を開いた。
「ごめんごめん。私は川口 息吹。で、こっちが」
「川口 芳乃。野球部のマネージャーだよ」
伊吹に続いてセクハラ少女の芳乃も自己紹介をする。悪びれる様子のない芳乃に正美は頬を膨らませた。
「私は武田 詠深。で、こっちがタマちゃん」
「山崎 珠姫です」
茶髪少女の詠深と黒髪の珠姫を最後に、正美と面識のないメンバーが自己紹介をしたところで、芳乃が正美に詰め寄る。
「三輪さんも野球部に入ろうよ」
「いきなり人の足を触る人と野球をするつもりはないっ」
正美はプイッとそっぽを向き、芳乃の誘いを断った。
「そんな~」
「今のは芳乃が悪い」
項垂れる芳野を珠姫が嗜める。
「三輪さん、ごめんね······」
芳乃は正美の手をとり、捨てられた仔犬の様な表情で見つめ謝った。
「うぅ······」
正美もあざといところがあるが、今の芳乃には敵わない。
「はぁ。分かった。でも、本当に野球部に入るつもりはないの」
「えー、どうして?」
正美が再度、断りの言葉を口にすると、詠深は未練がましく言う。
「そんなに真剣に野球をするつもりは無いの。気楽に
草野球をしたいんだ」
正美は過去にも使ったことのある断り文句を使った。
「こんなにしっかり体のケアしてるのに?」
実際に正美の筋肉を触った芳乃は疑問を口にする。彼女には、正美の筋肉がそう簡単に作れるものでは無いことが分かっていた。
「それは······ただの習慣だよ」
上手い言葉が見付からなかった正美は言葉を濁す。
腑に落ちなさ気な二人を珠姫は宥めた。
「まあまあ、二人とも。三輪さんも見るだけでも来てみてよ」
「はぁ。まあ、それじゃあ見るだけね」
「やったー。タマちゃんナイス!」
詠深は喜びのあまり、珠姫に抱き着く。
「見るだけっ。見るだけだからね!」
はしゃぐ詠深に正美は念を押す。
「分かってますって。それじゃあ、また放課後ねー」
白菊と稜を残し、野球部の面々は正美の白菊の教室を後にした。
「あの······ごめんね」
「ほんとだよー。何か凄く疲れたー」
白菊がお詫びの言葉を口にすると、正美は再びぐったりと突っ伏す。
「いやいや、あの反応は予想外だって」
稜が真顔で突っ込みを入れた。
正美はジーッと白菊のことを見つめる。
「あの······どうしました?」
「大村さん、本当にヤクザの娘じゃないよね?」
「違いますっ!!」
後書き
次回はちゃんと野球をします。
※当方の野球経験は学童野球2年間のみで、野球に関する知識は乏しいです。
あまり期待せずに読んでいただけると幸いです。
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