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恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS

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第八十五話 命、忍達を救うのことその十

 そしてだ。彼女達も言うのであった。
「宜しい、では張譲の首を討つのはわたくしですわよ」
「いえ、ここは私よ」
 二張の予想通りだった。やはり二人もこう言う。
「あの宦官の首は是非共」
「ちょっと、待ちなさいよ麗羽」
「華琳、貴女がというのでして?」
「そうよ。あの女には借りが散々あるのよ」
「それはわたくしもですわ」
「だから絶対にというのね」
「そうでしてよ」
 こう言ってだ。袁紹も引かない。
「敵の黒幕を成敗するのは総大将の務めですわよ」
「何言ってるのよ。総大将は本陣でどっかりと座ってればいいのよ」
「軍師が自ら鎌を持つのはどうかと思いますわよ」
「儀式を取り仕切るのも軍師よ」
 お互いに言い合う。そんな二人を見てだ。
 夏侯淵は首を捻ってだ。こう言うのであった。
「全く。お二人は相変わらずだな」
「それがいいのではないのか?」
「悪いとは思わないが困ったことではある」
 こう言うのである。
「麗羽様も華琳様も昔からだからな」
「だが張譲はだ」
「成敗して当然だというのだな」
「そうだ。ではどちらかが討たれるべきではないのか」
「そうかも知れないがそれで喧嘩をされるのはだ」
 それが困ったことだというのだ。夏侯淵に言うことは正論ではあった。
「幾つになっても。そうしたところは変わられないのだな」
「そういう御主もだな」
「私もか」
「そうだ。子供の頃から心配性だな」
 こう妹に言う。
「特に華琳様に対しては」
「そうかもな。それが私の役目なのだろうな」
「心配して世話を焼くことがか」
「私に対してもだな」
「姉者もだ。だが結局私がそれがいいのだろう」
 自分でこう話すのだった。
「だからこうして今もここにいるのだ」
「そうだな。私も秋蘭がいないとだ」
「そう言ってくれるのだな」
「何をするにも張り合いがない」  
 夏侯惇もだ。妹に話す。
「いつも迷惑をかけているが」
「気にすることはない」
 それはいいというのであった。姉に対して。
「姉者はいつも自分が真っ先に前に出るな」
「出ずにはいられないのだ」
「それが姉者のいいところだ」
 微笑んで姉に話す妹だった。
「むしろ消極的な姉者なぞだ」
「考えられないのか?」
「袁紹殿のところで考えるとだ」
 丁度だ。二人のすぐ隣にだ。袁紹のところの二人も馬に乗っていた。
「顔良が私だろうな」
「では私は文醜になるのか」
「そうなるだろうか」
「はい、私もそう思います」
 その顔良も夏侯淵の話に加わってきた。
「結構文ちゃんには困ってますけれど」
「それでも悪い気はしないな」
「しません。むしろ前に出ない文ちゃんって」
「文醜ではないな」
「といか想像できません」
 そこまで至るというのだ。
「麗羽様も暴走されない方が想像できません」
「麗羽殿は暴走できなかったのだ」
 ここでこんなことを言う夏侯淵だった。
 
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