恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS
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第八十五話 命、忍達を救うのことその十一
「幼い頃はな」
「そうらしいですね。あの頃の麗羽様は」
「そうだったのだ。いつもお一人だった」
こう話してだ。夏侯淵はもう一人の名前を出した。
「華琳様もそうだった」
「御二人は幼い頃は寂しかったんですね」
「華琳様は宦官の家の娘だった」
そのだ。国政を壟断する宦官の家のだというのだ。
「そして麗羽殿の母君は側室だった」
「そうですよね。だからこそ」
「御二人に声をかける者はいなかった」
それが幼い頃の曹操と袁紹だったのだ。
「馬鹿にされ爪弾きにされていたのだ」
「御二人共だったんですね、本当に」
「だからこそお互いに知り合いだ」
似た境遇同士でだ。知り合ったというのだ。
「そして我等も華琳様達のお傍に来てだ」
「それで変わられたんですか」
「そうだ。幼い頃の御二人はいつも抑圧されていたのだ」
それでは暴走なぞだ。とてもだというのだ。
「だから今はああしておられる方がいいのだろうな」
「何かと先陣に出られたがってもですが」
「そうなのだろう。確かに困りはするが」
袁紹のそのでしゃばりなところはだというのだ。
「しかしそれでもそうした麗羽殿は想像できないしな」
「曹操さんもですね」
「華琳様も実は寂しがり屋なのだ」
夏侯淵は声だけを微笑まさせて話す。
「いつも誰かと共にいたい方なのだ」
「ですね。麗羽様もそうですし」
「そして私はだ」
「私もですね」
「そうした華琳様に姉者を後ろから支えるのが仕事だ」
「私は麗羽様と文ちゃんを」
「んっ?あたい?」
ここでようやく二人の話に気付いた文醜だった。そのうえで夏侯惇に尋ねた。
「この二人一体何話してるんだ?」
「我等のことだ」
「何だよ、あたい達のことかよ」
「そうだ。要するにだ」
夏侯惇はここでいささかとんでもない解釈をしてみせた。
「我等がいてこそ。二人共は元気になるそうだ」
「だよな。斗詩ってあたいがいないとどうしようもないからな」
「何故そうなる」
「あのね、文ちゃんね」
夏侯淵と顔良が困った顔で二人に言い返す。
「私達はむしろ困っているのだが」
「全く。お気楽なんだから」
「困っているのか?」
「あたい達何かしたか?」
自覚のない二人だった。
「私の何処に困っているのだ」
「変なことはしてないつもりだけれどな」
「全く。いつもこうなんだから」
「そうだな。しかしこうしたところがな」
夏侯淵は今は微笑んで顔良に話す。
「姉者達のいいところだ」
「そうですね。そうした意味ですと」
「二人の言っていることも正しいか」
「そうなりますね」
こんな話をしてだ。二人は夏侯惇と文醜を見るのだった。そうした話をしながら虎牢関の前まで来た。洛陽を守る最後の関に。
第八十五話 完
2011・5・21
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