ロックマンZXO~破壊神のロックマン~
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第七十四話 終幕
アルバートが動かないことを確認してから、四人は倒れているプロメテとパンドラの元に歩み寄る。
「っ…アルバートは…」
「死ぬ寸前だ。お前達のおかげで倒せたよ、一応礼は言っとく。ありがとな」
「そう…」
プロメテの問いにヴァンが答えると、パンドラは安心したように呟いた。
「あ、あんた達…崩落に巻き込まれたんじゃないの…?」
「助けられたんだよ…このお節介にな」
忌々しそうにヴァンを睨むプロメテだが、意に介さず事情を説明する。
「本当なら助けるつもりはなかったんだけどな、パンドラにプロメテだけでも助けて欲しいって頼まれてな。流石に頼まれちゃ放っておけないから仕方なく助けてやったんだよ。脱出する最後の瞬間までプロメテはごねたけどな、ガキめ」
「ハッ…偉そうに…抜かすな…俺の方がお前よりずっと…」
「生まれた時期はお前が早くてもあの時のお前は誰がどう見てもガキだったよ。死に際なのによくそこまで憎まれ口が叩けるな」
「「「え?」」」
三人が良く見ると、プロメテとパンドラの体は全く修復されない。
今まで驚異的な回復力を誇っていた二人がだ。
「…アルバート…モデルVに…ほとんどの力を吸い取られたから…もう私達には自己修復能力は…ないの…」
「そんな…何とかならないのか!?」
「…ならないでしょうね、プロメテとパンドラはアルバートが作ったロックマンなんでしょう?だから、アルバートが倒れた今じゃ…」
命の灯火が消えていくプロメテとパンドラにグレイは何とか助けられないのかとエールに尋ねるが、エールは首を横に振る。
「余計な…ことを…するな…俺達はこの結果に満足している…ようやく、あの…忌々しい屑の間抜け面を拝めた…!」
「ありがとう…」
満足そうな表情のプロメテとパンドラにエールは鋭く睨む。
「アタシはあなた達を許さないけどね、あなた達は自分の復讐を果たすために母さん達が死ぬ原因を作った。」
「「エール…」」
鋭い表情を浮かべるエールに複雑そうな表情を浮かべるアッシュとグレイ。
「でも、これから死ぬ相手をいちいち怒ってもね。話を聞いた限りあなた達は充分な仕打ちを受けて、アタシ達を一応助けてくれたし、チャラにしてあげるわ」
「エールって大人なんだな」
「アッシュも見習えよ」
「うっさいわね」
エールの対応にグレイが尊敬の眼差しを送り、モデルAの失言にアッシュが怒る。
「…とまあ、とにかくお前らも眠れ。老体にはキツかったろ、さっさと寝ろ爺さん婆さん」
「…チィ…誰が…爺さ…ん…だ………」
「お婆…さん…なんかじゃ…な…い……」
二人はどこか穏やかな表情を浮かべながら目を閉じ、そのまま機能停止した。
「「「「………」」」」
世界各地で大暴れしていた死神と魔女と恐れられていたロックマンの最期とは思えないくらいに穏やかであった。
「…ぬうう…まさか…プロメテ達に…やられるとは…」
アルバートの声に全員が振り返った。
「自分が作った最初のロックマンのプロメテとパンドラの反抗を喰らって負ける…お前に相応しい最期だったな」
「今までやりたい放題してきたツケが回ってきたのよ。たくさんの人達を実験材料にしてきたこともね」
「その様で何がロックマンの王よ、何が神様よ。世界が滅ぶだの、物語を終わらせるだの。勝手に決め付けないでくれる?これはアタシの人生アタシの物語なんだから」
「お前の言う通り、僕は失敗作だ。グレイって名前のただの人だ。お前はそんな僕一人の運命を変える事さえ出来なかったのさ、これは僕が決めた運命だ。僕は…この世界で、みんなと共に生きていく!」
四人のロックマンに見下ろされ、アッシュとグレイの言葉にアルバートは笑みを浮かべた。
「それが…私の影と子孫である君達二人の出した答え…か……君達もまた、私が作ったロックマンには変わりない…君達は…私をも超えた…私の研究は…間違って…なかったのだ…。さらばだ…究極のロックマン達…!自らが選んだ…平和の中で…朽ちてゆくがいい…!」
その言葉と共にアルバートは爆散し、ウロボロスが崩壊を始めた。
「やばいぜ!アルバートがやられて、この要塞が落下し始めてる!」
「…最後の始末まで…手が込んでるわね…早くみんなのところへ…あ、あれ?……体が…言う事…聞かない……おかしい…な」
「はあっ…はあっ…これで終わったんだ…何だか疲れたよ…早く…みんなのところに…帰…ろう…」
力を使い果たし、同時に倒れるアッシュとグレイにモデルAは慌てる。
「お…おい…!アッシュ!?グレイ!?しっかりしろ!お前ら!」
「やれやれ、世話の焼ける奴らだ」
「昔のジルウェの気持ちが分かるわね」
ヴァンとエールはそれぞれアッシュとグレイを抱え、プロメテとパンドラの遺体も回収してウロボロスを脱出した。
数時間後にアッシュとグレイはガーディアンベースの医務室で目を覚ました。
「「ここは…」」
「目が覚めたのね」
声がした方に振り返ると、ガーディアン司令官であるプレリーが微笑んでいた。
「あっ!ヴァンの恋人!」
アッシュが思い出したように言うとプレリーは顔を真っ赤にして俯いた。
「こ、恋人…」
「(あ、免疫ないんだわ…今時珍しいウブな娘ね)」
「あ、あの…ここは…」
取り敢えず状況把握のためにプレリーに話を聞くことにした。
「コホン…ここはガーディアンベースの医務室よ。ヴァンとエールがあなた達を運んでくれたの、後で礼を言った方が良いわよ」
咳払いをしてそれだけ言うと、プレリーは医務室を退室し、代わりにモデルAとヴァンとエールが入ってきた。
「アッシューッ!グレイーッ!やっと目が覚めたか!良かった!良かったー!オイラもう心配で心配でさあ!」
「「…………」」
モデルAの勢いに二人は呆然となってしまい、そんな二人を見たモデルAは心配そうに二人を見つめる。
「ど…どうした?まだどこか痛むか?」
「フフッ…アハハハハッ!何よ、今のはしゃぎっぷりは!」
「…モデルAが人の心配してる…」
初めて会った時のモデルAのことを思い出してか、アッシュはおかしそうに笑い、グレイは意外そうに見つめた。
「…な、何だよ!…わ、悪いかよ!良いじゃないかよ!オイラは 眺めてるしか出来ないんだし…心配ぐらいさせろよ!お前はオイラの仲間なんだぞ!嬉しかったんだからあれくらい当たり前だろ!?」
「アハハハハ!…心配してくれたんだねモデルA、ありがとう」
「ハハッ…モデルA…ありがとう」
二人は笑顔を浮かべてモデルAに礼を言うと、ヴァンとエールが話し掛けてきた。
「その様子だと大丈夫そうだな。君とパンドラを担いで脱出するのは大変だったんだぞ」
「ちょっとヴァン、それは女の子に対して言う台詞じゃないわよ」
「事実だろ、両腕が塞がった状態でウロボロスを脱出するのは大変だったんだからな。そういうお前もそうだろ?プロメテとグレイを抱えてたんだからな」
「ま、まあ、そうだけど…」
ヴァンの女の子に対してのデリカシーのない発言にエールが眉間に皺を寄せるが、ヴァンの言い分も理解出来るため、何も言えなくなってしまう。
「「迷惑かけてごめん」」
頭を下げる後輩ロックマン達に二人は頭を軽く撫でてやる。
「まあ、お前達のおかげで戦いは終わったんだ。」
「ウロボロスは跡形もなく崩れ落ちたわ。モデルVの反応も出てこない。ただのがれきになって、そのまま海に沈んでいったわ…君達のおかげよ」
「そんな事ないよ、僕達の力だけじゃない。みんなが守った…ここはみんなの世界なんだ。」
「ところで、ヴァンとエールはこの後どうするの?」
アッシュの問いにヴァンとエールは口を開いた。
「モデルVも無くなって、アルバートを倒してもイレギュラーは存在するからな。ガーディアンベースで世界を回りながらあいつの傍にいるつもりさ、今まで待たせてたからな」
「やーっとプレリーも心休まる時が来るのね、本当に見ていて可哀想だったもの。あんな健気な女の子泣かしたらただじゃおかないわよ。アタシはヴァンと一緒にイレギュラーを倒しながらモデルH達を探すわ、君達は?」
「アタシ?そうね…神様を名乗ってた奴もやっつけちゃったし…すんごいお宝見つけて、レギオンズからこの世界を買い取っちゃおうかしら?…何てね、アタシは今まで通りハンターを続けるよ。もっと色んな物を見たいし、色んな物を知りたいし、色んな人にアタシを知って欲しいから。グレイは?」
「あ、そうか…考えたことなかった…これは僕の運命なんだ。僕が決めるんだよね…旅に出ようと思う。どこまで行けるのか、何が出来るのか…僕は自分の事を何も知らない。だから、旅に出たいんだ。自分を知るために…アッシュ、僕もアッシュについていっていいかな?」
グレイの問いにアッシュは満面の笑顔を浮かべた。
「当然、あんたはアタシの相棒なんだから!」
「え?え?じゃあオイラは!?オイラはどうしたらいいんだ!?」
「自分のやりたいことは自分で決めろ」
ヴァンの言葉にモデルAはハッとなって二人の前に浮かぶ。
「そ、そうか!えーと、それじゃあ…オイラもアッシュ達と行くよ!一緒に連れてってくれ!」
「誰が置いてくなんて言った?あんたはアタシのお宝でアタシの仲間なんだからね!」
「うん、一緒に行こうモデルA!」
「話は纏まったようね、ハンターキャンプに着いたら祝勝会をするそうだから、体力は万全にした方が良いわよ」
「祝勝会!?ご馳走出るかしら?アタシ、お腹ペコペコ~」
「食い過ぎて腹壊すなよ」
「子供扱いしないでよ!!」
ヴァンの言葉に怒鳴り返すアッシュにこの場にいる全員の笑い声が響き渡った。
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